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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 タテクリカエシ
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新人研修一日目1

「……ん? 白……羅護君、他の二人は?」


「さぁ? 私が来た時には姿を見てませんが?」


 他の二人? まだ増えるのか?

 珍しいな。三人も一気に新人が来るなんて。

 まぁ、隊長の穴を埋めるのはそれくらい多い方がいいのだろうけど。


 少し待っていると、ようやく到着したらしい。

 他の二人というのがやってきた。

 10代前半の男の子と、高校生くらいの女の人である。


「ごめんなさい、遅れましたっ」


「姉ちゃんが何着て行くか迷いに迷って遅れました」


 どうやら姉弟らしい。

 弟さんは正直者だ。姉の方が顔を真っ赤にしていた。


「え、えっとその、は、初めまして皆さん。徳田とくだ 佳夕奈かゆな。大学1年です」


「姉ちゃんは【鈴鹿御前】で、俺、徳田とくだ 魁人かいとは【悪路王】の妖使いなんだ。よろしく」


 鈴鹿御前と悪路王か。なんかこの業界入ってから調べた資料にあったな。

 確か、鈴鹿山に居た天女とか悪魔の子とかただの山賊頭だと言われる鬼女だったはずだ。

 手に持たなくても自由に動く三本の刀を持っていたんだとか。

 記述によれば坂上田村麻呂と恋仲になったらしく、悪路王を田村麻呂が退治したという関係性があったりする。

 悪路王は岩手の平泉あたりに住んでいた悪鬼らしい。

 こっちの記述では田村麻呂が鈴鹿御前、あるいは悪玉と呼ばれる鬼女の助けを借りて悪路王を倒したとされている。


 悪路王がどんな能力持ってるかは知らないけど、鈴鹿御前の方は自由に動く三本の刀というのが能力の一つなのだろう。

 ……あれ? そういえば羅護の妖は聞いて無いな。


「そういえば、羅護の妖能力は?」


「……私、ですか?」


 ふと、私は口を開く。

 聞かれるとは思っていなかったのだろう。

 徳田姉弟に意識を向けていた羅護が慌てたようにこちらに向き直る。


「私は【夜行さん】です」


 ……そうか。茶袋とか、釣瓶火じゃないのか。

 でも、夜行さんか。

 確か夜に徘徊する首なし馬に乗った妖怪だっけ。

 もしも夜に出会えば投げられて蹴殺されるんだとか。


 一応、草履を頭の上に乗せて平伏しとけば大丈夫らしい。

 羅護が言うにはスニーカーやハイヒール。つまり靴なら何でもいいらしい。

 どうも翼と同様発動した後は自動操縦になるらしく、敵味方関係なく蹴り殺すのだそうだ。

 彼女と組む時はいつでも靴を脱げるようにしとかないと同士討ちの危険があるね。

 まぁ……別にそれで殺されても問題無いけどね。


 あ、まだ稲穂がビクビクしてる。

 さっきから何をしてるんだ稲穂は?

 ……ん? さっきから徳田姉弟は何故こちらに視線を向ける?


「あの、何か?」


「い。いえいえいえ、お、お盛んですね」


「姉ちゃんっ」


 顔を真っ赤にする佳夕奈。

 ポニーテールにしてアクティブさを前面に押し出した女性で、スポーツが得意そうだ。

 テニス辺りとかしてそうな気がする。

 元気溌剌な感じが初見の感想だった。


 それを窘める魁人。こちらは黒髪のボサボサ頭。

 ショタ属性な上に顔はかなりイケメンになりそうな将来有望株だ。

 翼よりも主人公属性が強く彼氏候補にしとくのはいいかもしれない。


 ライバルは多そうだ。

 ただし、できることなら、もっと早めに遭いたかった。

 終わってしまった私の世界では、彼を見ても全くときめかない。

 本当、残念だ。真奈香さえ、生きてくれていたのなら……


「さて、新人も揃ったようだしそろそろ新人研修に付いて説明しようと思う」


 そうか。そういえば新人研修なんてのがあったね。


「一応、三日間、新人の三人は僕らと共に行動して貰って先輩たちの動きを見て貰うんだけど、今回の班分けは僕と翼君、真由と前田君、高梨君と斑目君だ。三日に分けて行動して貰う」


「小林さん、いいんですか? 私も入れて?」


 私はつい聞いていた。

 小林さんは少し困った顔をしながらも、メガネを直して告げる。


「いいんだ。反面教師でもいい。君の経験した貴重な話を、彼らに教えてあげてほしい」


「そう。わかった」


 三日……か。多分私に対する判断が下されるのもそのくらいだろう。


「では、最初の一日目は僕らと白……羅護君。真由たちとは佳夕奈君、高梨さんたちとは魁人君が同行して事に当って貰おうと思う。でだ、今回の処理係対応になった妖使いが彼だ」


 と、三枚綴りの用紙が送られて来た。

 それを見てみると、名前は琴村ことむら 騨雄だおす。どう見てもキラキラネームである。

 柄の悪そうな男の顔があった。

 多分、名前が気に入らなくてグレましたといったところか。

 でも、顔は昭和の不良といった様子だ。硬派気取ってますって顔をしている。鉄下駄とか履いてそうだ。いや、むしろやれやれだぜ。とか言ってそうだ。


 妖能力は……タテクリカエシ? なんだこれは?

 こんな妖は聞いたことが無い。

 真奈香と何度か妖に付いて調べたりしたけど、こんな妖もいたのか。


「では、このタテクリカエシに付いて、誰か知っている者はいるかい?」


 小林さんが私の疑問を皆に問う。どうやら誰も知らないようだ。

 名前:  徳田とくだ 魁人かいと

  抹消部隊にやってきた新人。

  佳夕奈の弟。

  イケメン候補だがよく有伽に遊ばれている。

 特性:  熱血漢で元気なヒーロー特性

 妖名:  悪路王あくろおう

 【欲】: 悪事を働く事

 能力:  【悪逆非道】

       悪事をすればするほど悪に染まっていく。

      【身体強化】

       鬼としての力を発揮できるよう身体が強化されている。

       人の腕くらいなら千切り取れる。

      【肉体言語】

       熟練者どうしで殴り合う場合、

       言葉にせずとも分かり合う事が出来る。

      【同族感知】

       妖使い同士を認識する感覚器。

       個人によって範囲は異なる。

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