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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 タテクリカエシ
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定例報告と新人

「では、定例報告を始めよう」


 小林さんの言葉で私達は顔をあげて小林さんを注視する。

 いつものブリーフィングルームだ。

 ただ、人数が減っただけ。


 小林さんは今回の件で係長になった。

 副係長は黛さんだ。

 昔と立場が逆転したわねと軽口を言う黛さんだが、反応してくれたのは小林さんだけだ。

 この二人のラブラブ具合の御蔭で多少なりとも場の雰囲気が暗くなっていない。


 なのでコの字型の机の中央に小林さん。その隣に黛さんが座っているのは小林さんに隣に居てほしいと言われたからだ。

 ちょっと赤くなった黛さんが新鮮で同じ女性ながら可愛いと思ったほどである。

 小林さんから左側の窓際には翼と前田さんが座っている。

 相変わらず仏頂面の翼。そんな彼の隣で震える前田さんが哀れに見える。

 まるで翼がブスッとしているのに怯えているようだ。


 私と稲穂は小林さんの左側の机に位置する座席だ。

 この二人だけは無駄に距離が近い。

 というか、稲穂が私の上に座っている。

 自重しろよこの百合娘。


 でも、まぁ抱き枕みたいな感じで抱きつくのはちょっといいかもしれない。

 今はまだ、真奈香たちを失った心がぬくもりを求めている。

 だから、私も嫌がることなく稲穂を抱きしめていた。


 なもので、稲穂の顔が真っ赤になっているのだけど、気にしない。

 今は私の抱き枕になっていて貰う。

 さて、定例報告か……報告する事なんてないけどね。どうすんだろ。


「今回の報告会だが、皆からの報告は無しだ。僕から一方的に告げさせて貰う」


 一呼吸置いて、手元の資料に目を落とす小林さん。


「まず、元隊長、白滝柳宮の指名手配が解けた。そして彼は、三嘉凪元支部長たちの元へ潜入調査を行っていたとされ、その過程で反撃に遭い死亡。よって二階級特進とする」


 死んでから特進しても意味ないんじゃない?


「それとこれに伴い現場判断により高梨君が過去改変を行ったことは不問となる」


 そう。その件は不問にするんだね。


「また。過去改変時に発覚した【蛭子神】の生存についてだが……草壁さんや家仏さんの働きもあってこのまま高梨君に寄生したままでいて貰う事になった」


 因幡阿南は言わなくても良い事まで事細かに上に告げていたそうだ。

 そのせいで坂出さんが私に殺されたこと、ヒルコが生きていること、私が過去を改変して発動前ののっぺっぽうを殺したことが告げられた。

 結果、私の起こした結果は叛逆の材料と相殺される結果となったらしい。

 しかもヒルコも生存公認だそうだ。珍しい。


 何かと理由を付けて私を反逆罪にするんじゃないかと思っていたのに、おかしいな?

 まぁいい。もう少し私を飼い殺しにしたいのだろう。

 今の私ならいつでも反逆罪にできるし殺せるとでも思っているのかもしれない。

 利用できるだけ利用していらなくなってから殺すのか、それとも油断させて隙を付く気なのか、とりあえずはしばらく様子見だろうな。


「それから。僕と真由の昇進に伴い新しい新人が来ることになった。……皆、心してくれ」


 心しろ? どういうことだろう?

 神妙な顔をする小林さんがドアに視線を向ける。


「入って来てくれ」


 小林さんの言葉に反応するようにドアが開いた。

 一人の少女が現れる。

 ……あれ? あの娘、見覚えがある。

 いや、見覚えなんてものじゃない。ついさっき、隊長と真奈香の合同葬儀にいた少女だ。

 始まってからずっと、ずっと隊長の遺影だけを見上げていた少女。


白滝しらたき 羅護らごです。これからよろしくお願いします」


 目を見開く。

 誰もが何も言えなくなった。

 ただただ羅護を見続ける。


 隊長を思わせる黒い髪。

 真奈香を思わせる白い肌。

 長い黒髪に隠れた顔は暗い。


「白滝羅護、10歳。元隊長白滝柳宮の姪に当るそうだ」


 隊長の姪……なぜここに?


「もともと田舎に住んでいたそうなのだが、本人たっての希望でここの配属になった。皆、よろしく頼むよ」


 小林さんの言葉に面々は頷く。

 しかし、その表情は硬い。

 どう接していいか分からないからだ。


 しかも、羅護はあろうことか私の横に座って来る。

 隊長を殺すことになってしまった私としては何とも言い難い状況だ。

 思わず稲穂を強く抱きしめてしまったのは仕方ないと思う。


「ひゃっ。『あ』ダメ。そんな強く抱かれたら私……」


 なぜか稲穂がびくんびくんと痙攣を始めていたが、どうでもいいことだったので放置しておいた。

 翼がこっち見て顔を赤くしてたけどどうでもいい。

 真奈香……やっぱり私、隊長も真奈香も居ない世界なんて……生きていけそうにないよ。


 羅護の冷めた視線がこちらに向けられる。

 それがなぜか鋭く突き刺さる。

 まるで、なぜ隊長を殺してしまったんだと、責められている様な気がした。

 若干私に抱きしめられる稲穂に視線が向って顔を赤くしてたけど、稲穂に惚れでもしたか?

 あげるよ? こんなのでよければ。

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