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居場所を捨てた妖少女・プロローグ
女は決意した。
もう、沈んではいられないと。
女は決意した。
やるべき時は今なのだと。
女は苦悩した。
己のせいで親しき者が死んだ、
自ら犯した過ちを悔やむ。
あの時、私が撃たなければ、
私が足枷になったばかりに……
だから、静かに決意する。
自分に力はないけれど、
闘う能力なんて皆無だけれど、
彼女だけは救うのだ。
彼の為にも、彼女の為にも、
せめて誰かへの罪滅ぼしに、
女はやらねばならぬのだ。
やらなければ、彼女も失ってしまうから……
女を縛るものは既に亡い。
帰る者は帰らぬと知れた。
居場所を守る意味など失せた。
ならば、その居場所に意味はない。
ならば、その存在に意味はない。
ならば、その命を――彼女の為に。




