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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 麻桶の毛
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釣瓶火の叛逆・エピローグ

 少女の慟哭を、私は遠くのビルから見つめていた。

 彼女こそが【黴】をその身に宿した人物で、この騒動の中心にいるものだ。


「これから、彼女はどうなるの?」


 隣にいる男に、私は問うた。


「どうなると思う?」


 しかし、男は質問で返してくる。


「静香さんは助けるって言ってるけど?」


「もちろん。俺はそのために君を助けたんだ。彼女を救うために力を貸してほしい」


 男は私を見て微笑む。美形の特権という奴だろう。ムカつくくらいに爽やかだ。


「止音君。私の答えなんて分かってるでしょ」


「そうかな?」


「死ぬはずだった私を助けたんだからさ。手伝うに決まってんじゃん」


 私も止音君を見つめて微笑む。

 本来なら、私は死ぬはずだったのだ。

 白滝柳宮にあの写真を届けたから、命を狙われた。


 でも、助かった。

 止音君が助けてくれた。

 私に居場所を与えてくれた。


「それで、私の初仕事はなんですかい?」


「君たち二人に頼みたいんだ。彼女が決意した時、殺されてしまわないように。それできっと君たちの生存もばれてしまうだろうけれど、その辺に抜かりはない。気にせず動いてくれ」


「簡単に言ってくれるわね。ったく」


 私は踵を返し屋上のドアに向かって歩き出す。

 そこには、私を待つ一人の少女。


「聞いてた? さっさと行くよ、優奈」


「りょーかいだよ、智佳斗ちゃん」


 私たちが動き出す。

 殿とゆかいな仲間たちとか訳の分かんないチーム名だけど、そんなことはどうでもいいのだ。

 ようやく見つかった私の居場所。

 そこからすら追い出されないために……

 助けてみせましょう、高梨有伽をっ。


 -------------------------------------


 わたくしはそんな声が聞こえている下の階で、天井から上半身を出して有伽さんを見ていた。

 正直、こんな結末になるとは予想していなかった。

 きっとわたくしの記憶は無くなっていて、彼女を暗殺対象として追うだけの存在だと思っていたのだから。


 これも不幸之手紙を破ったせいなのかしら?

 電車内での記憶があるせいで殺し辛くなったではありませんか。

 それに……今の彼女は、あまりに、報われない。

 そんな彼女を、わたくしは……本当に殺せるのでしょうか?


「【天井下】さん、ついに連絡着たよ? 参加……するんだよね?」


「【尾獲枝】。何故ここに来ましたの?」


「別件でぇ~す。上の方の人たちを探りに来ました」


「殿と愉快な仲間たち……か。今日初めて知りましたけど、まさか鮎川智佳斗たちが生きていたとはね。驚きですわ」


「上からソレについても殺してしまっていいって連絡は来てる。でも、強制じゃないみたい。きっともう上にとっての脅威とは捉えられていないんだね」


「……まぁ。どっちでもいいわ。敵対して来るのなら諸共に撃ち抜くのみ。お覚悟を有伽さん」


 わたくしはもう一度高梨有伽に視線を送る。

 絶望に泣き崩れる少女はまだ気付いていない。

 この世界は、既に過去を改変された世界であることに、そして、彼女が犯してしまった罪を、彼女はまだ知らない。


 そしてもう変えることなど出来ない。

 上司殺し(・・・・)をしたグレネーダーにはもう、彼女の居場所はないのだ。

 さぁ、逃走劇の始まりですわ高梨有伽。あなたは逃亡の果てに、何処へ辿りつけるのかしらね?


「次に会う時は……敵ですわね」


 出会い方さえ間違えなければ、きっと、いい友人になれていただろう少女に、わたくしは一度だけ、黙祷した。

次回章は居場所を捨てた妖少女です。

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