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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第四節 麻桶の毛
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約束の場所

「ってか本気でついてくるの?」


「お邪魔かしら? 別にわたくしは気にしませんわ」


 いや、こっちが気にするよ。あんた妖研究所の暗殺班とかいう奴でしょうが。

 カラコロと笑う土筆に思わずげんなりする。

 何しに来たのか全くわからない。


「わたくし、あなたが最後になるやもしれませんの」


「最後?」


「最近失敗づくしでして、次の指令であるあなたをわたくしが殺せなければ、わたくしが抹消されるのだと言われましたわ。今まで貢献していたというのにあっさりしたモノですわよね」


「ちょ、そんなことボクに話していいの!?」


「あら? ならばあなたはわたくしに同情して殺されていただけますの?」


「いやいや、殺される気はないですけどっ」


「これも殺しのテクニックですわ。敢えて姿を晒し相手と仲良くなり情に訴え殺しにかかる。普通に刺客として来るよりも、辛いでしょう?」


 ぐっ。言われてしまうと確かに普通に話せる人と殺し合えとか言われても戸惑うのは確かだ。


「ですが。わたくしはこうやってあなたと親しく話しても、巻き戻った過去でわたくしとあなたは他人同士。あなたはわたくしに負い目を感じますが、わたくしは微塵も感じませんのよ」


 鬼ですかあなたはっ!? あ、暗殺者か。


「ま、それは一応あなたに会いに来た理由の一つでそうなったらいいな。程度のものですわ。本題はこっち」


 と、いいつつ、私の横に席を移動してくる。

 何をする気だと警戒する私の手を両手で包み、真剣な表情をする。

 ……え? ちょ、この状況、もしかして、いえ、あなたも百合属性ですか!?


「のっぺぽうとの戦い。見せていただきましたの。こんな化け物がいるのかと戦慄しましたのよ。だから……もしもわたくしが敗北したのなら……わたくしを救ってはいただけませんこと?」


「……はい?」


「すでに、わたくしは詰んでますの。あなたを倒したところでたぶん、いえ、確実に次からの任務も失敗しますわ。不幸之手紙の置き手紙が、わたくしを不幸に突き落としますもの。だから、命乞いをすることにしましたの」


「いやいやいや。過去のあんたってボクを殺しに来るんだよね!?」


「ええ。当然ですわ。死に物狂いで来ますわよ」


 それを半殺しにした上に命を救えとおっしゃりますかこの人は!?

 いや、無理でしょ? いろんな意味で無理でしょ!?


「方法はお任せしますの。あ、でも、死ぬのならわたくし以外の方に殺されないでくださいます? それでもわたくし殺されますから」


 本当に自己中だなオイ!?


「そ、そうですわね。わたくしを救うために身体を御所望だというのならす、少しだけなら構いませんわよ。初めてが女同士というのはわたくしとしては無いのですけど」


「私も無いよっ!? どこで間違ったその情報!!」


 思わず自分のこと私というくらいに衝撃的な報酬だったよ!?

 誰だ妖研究所の暗殺班にまで私の百合疑惑を流した重罪人は!?




 と、いう感じのノリで電車は国原市へと辿り着いた。

 なんか、この数時間で無駄に仲良くなってしまった。

 敵なのに、本当に殺しづらくなったじゃん土筆の事。


 国原市の駅のホームに二人で降り立ち周囲を見る。

 この辺りには居ない。やっぱり駅前に行かなきゃダメか。

 隣を見る。

 土筆連れて来ちゃっていいのかな。

 いや連れてくしかないみたいだけどさ。


 改札をでる。

 改札を通ると同時に隣へとやってきた土筆は私を見て言った。

 「で、どこ行きますの?」と。つまり、彼女は私の目的地がここだということを知らなかったようだ。


 彼女の質問には答えず、私は周囲を探る。

 無数に行き交う人の波。

 そんな一角に一人だけ、まるで時が止まったように立ちつくしている男がいた。

 黒い髪に黒い服。黒いコートのポケットに両手を突っ込み、黒いパンツいや、まぁズボンでもいいんだけどさ、ついでに黒い靴。と全身を黒コーデで整えた男が立っていた。


 その男は真っ直ぐにこちらを見つめている。

 まるで私が来るのを待っていたかのように、静かに、ずっと見つめて来ていた。

 私が探し求めていた人物だ。


 思わず走り寄ろうとして、すぐ近くの危険人物を思い出す。

 いきなり走り出して警戒した隊長に逃げられてもショックだし、ここは落ちついて行こう。

 ゆっくりと、隊長との距離を詰めていく。


 言いたいことが山ほどあった。

 なぜ、突然こんな事をしたのか。なぜ、事前に連絡してくれなかったのか。なぜ、たった一人で事を起こしたのか。龍華との約束は、私を守るって約束は嘘だったのか。

 問いただしたい事、伝えたい事、教えてほしい事。

 数限りなく頭の中を回っている。

 でも、隊長の目の前へと辿り着いた時、無数の言葉はただの羅列に変わっていた。


「来たか、有伽」


「……来ました、隊長」


 たったそれだけで、何かが伝わった。そんな気がした。

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