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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第三節 貧乏神
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ストーカーをストーキング

「単刀直入に言うわ。隊長の居場所を教えて」


「残念だけど、今の彼の居場所は知らない」


 私の言葉に、止音君は適確に冷静に切り返す。


「静香ならわかるでしょ。どこに居るかくらいは」


「ああ。確かに静香ならわかるね。でもだめだ。彼女は今監視中なのでね。他の些事に構ってる余裕はない」


 確かに、静香は私が来た一瞬こちらを向いて会釈したものの、既にビルの屋上からスナイパーライフルを構えてどこかに視線を向けている。


「真奈香を生き返す。それには隊長に会わないといけないの!」


「そうだね。でも急ぎじゃない。探していればそのうち会えるさ」


「確証がないじゃない。隊長にもしものことがあれば真奈香を生き返す術が無くなるっ」


「既に過ぎた過去だ。過去は変えるべきじゃない。温故知新ともいうように古き過去は思い返し新しい自分への糧にすべきものだ。彼女も、君に生きてほしいから身代わりに死んだ。その意味を考えてほしいな」


「考えてるよッ! でも真奈香がいない世界なんて私にはもう、意味がないのッ」


「本当に、困ったな。今回俺達が手伝うのは本当にマズいんだよ。絶対に手伝えない。こればかりは譲れないよ。例え有伽さんでもね」


「譲れないとかどうでもいい。無理にでも聞かせて貰う。今の私に、出来ないと思う?」


 私はヒルコに合図を送る。ここに来る前に決めた合図だ。

 ヒルコが身体を移動し右手に七支刀の柄をいつでも出せるようにしてくれる。

 今の私の能力はただの赤嘗じゃない。【黴】、【蛭子神】、自動迎撃の草薙ぎ、紫色の稲穂のナイフ。これだけ揃っているんだ。並みの妖に負けるつもりはない。


「実力行使かい」


 恐い恐いと肩を竦める止音君。

 そんな止音君の横で紙袋を被った女の一人が静香に近寄る。

 爆乳を持った背が小さい方だ。


 彼女は手でカメラのフレームを作る様にして静香を覗く。

 そして次の瞬間、彼女の姿が変化した。

 紙袋を取った先にあった姿は、目の前にいる静香そのもの。

 姿を変える妖使い!?


 思わずのっぺらぼうを連想するそいつに驚いているうちに、偽静香と止音君はハイタッチ。

 そのまま二人揃って屋上の縁へ向う。

 なにを!?


「有伽さんには敵いそうにないしね。全員撤退」


 と、大空向って跳んだ。

 ここはビルの屋上だ。

 当然下に落下すれば死亡する。


 私と黛さんが慌てて走り寄る頃には、殿と愉快な仲間たち全員がビルから飛び降りていた。

 静香は弁慶様により担がれ、止音君と空中を走っている。

 もう一人の静香は紙袋の少女と和樹を引き連れ逆方向に走っている。


 よくよく見れば糸がある。

 空中に綺麗な糸の迷路が張られているのだ。

 彼らはその糸を伝って走っている。


 かなり訓練されているのだろう。走り方に余念がない。

 ふらつくこともないというのが驚きである。

 というか、マズい。どっちの静香が正解だ!?

 弁慶が担いでるのであってるのか!?


「高梨さん、どうするの?」


 どうするったって、この糸伝ってってのは無理だよね?


「仕方ない。私はビルから降りて地上を追うわ。どっちに行く?」


「じゃ、じゃあ小笠原の方行きます」


 静香は何かしらを見ていたはずだ。

 となると逃亡は自力でできないはず。

 となれば弁慶様が運んでいたのが静香のはずだ。


「ヒルコ、追える?」


『この糸使って? たぶん行ける。急ごう』


「よし、黛さん。弁慶を追います」


「了解。……ところで、いえ、なんでもないわ」


 ふと、何かを聞きかけた黛さんだったが、思い返して聞くのをやめた。

 ヒルコとか普通に聞こえる声でいっちゃったからな。バレたかな?

 まぁ黛さんならいいか。


 私はビルから身を投げ出し糸という名の細い道に落下する。

 なるほど、所々足が置けるように複雑に編まれている。

 場所さえ把握しておけば走れなくもない。


「足元は任せる。万一はお願い」


『了解』


 私は糸を走り出す。

 しばらく行くと、眼下にようやくビルから出た黛さんが見えた。

 相変わらずポップコーンらしきものを食べながら走っている。


 やはり走ると言っても蜘蛛の巣みたいな糸の足場は悪いのだろう。

 止音君たちの動きは遅い。

 逆の方も多分遅いはず。黛さんならきっと追い付いてくれると信じよう。


 ……あ。

 もうすぐ追い付く。

 そう思った瞬間、私の身体ががくんと落ちた。

 慌ててヒルコが糸に絡みついて振り子の要領で私を糸の上に戻そうとするが、残念。糸がみつに張られた場所に遮られ私が上に向えない。


『ど、どうしよう、腕力が……』


 それ腕の力なのか?

 というツッコミは後回しだ。

 なんとか連続で振り子になって貰うことで蜘蛛の巣の下を移動出来てはいるけど、上に戻れない。


「ビル……そうだ。ヒルコ、あのビルに飛ばして!」


『ダメ、ここからだと壁に突っ込む』


「それでいいからやって! あと前面から撤退!」


 私の言葉にどうにでもなれ! とばかりにヒルコが私を壁に叩きつける。

 私は壁に着いた瞬間、自身の【赤嘗】としての特性を発動させる。

 同一存在が私になった時に見せた、壁に張り付く特性を。

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