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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第二節 のっぺっぽう
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商店街

 私達は坂出さんに連れられて街へと繰り出していた。

 繁華街のある場所だ。それなりに賑わっている。

 ただ、ここに近づくほどに真奈香の顔が険しくなっているのだけど、何故だ?


「有伽ちゃん。嫌な予感がどんどん強くなる。この辺り、凄く危険だよ。できるなら、逃げない?」


 真奈香が逃げようなんて珍しい事もあるものだ。

 そんなこと言われると不安になるんだけど、さすがに係長同行中なのにじゃ、私ら危険な気がするんで帰ります。とか言ったら懲戒免職モノでしょうよ?


 商店街はまばらではあるけど人通りが多い。

 天窓というのだろうか、モール街の天井部分がガラス戸になっていて光が差し込むように設計されている場所で、歩行者天国みたいなものなんだけど、所々に左右に伸びる道路、いうなれば十字路が存在し、その所だけ車が通るようになっている。

 短いけど横断歩道と信号があったりするのだ。

 車が止まると反応して赤になる横断歩道が。あんまし守られては無いけど。

 今も赤ら顔のおじさんが車の後ろを普通に歩く。信号は赤だ。オイ!?


 商店街を歩くのはおばちゃんが多い。次に多いのは家族連れだろうか?

 お婆さんとお爺さんのペアも数人見かけるが、おばさま連中が圧倒的に多い。

 それというのも、とても安い八百屋が存在するからだ。

 採算度外視? いえいえ、自家製栽培なので原価ゼロでございます。

 半ば金持ちが趣味でやってる店であり、父親が農家、母親が八百屋を切り盛りしていて、息子が両方に駆り出されているらしい。


 まぁ、簡単に言ってしまえば、勝也ちゃんの家だね。

 金持ちボンボンのお坊ちゃまなのにオッパイ星人で腐ったミカン君なのが手痛い。それさえなければモテモテだろうに、残念な人だ。


 今日もやる気なさそうな顔で大根安いよとかほざいていなさった。

 私はソレを見付けて寄って行こうかと思ったが、さすがに任務中はマズいと無視する事にしてあげた。

 クラスメイトの痴態を見て見ぬふりできる良い子ちゃんですから、私は。


 鮮魚店に精肉店。ブティックもあればたこ焼き屋クレープ屋ケバブ露店なども存在する。

 商店街の中にはシャッターが閉まっている場所も幾つかあるが入れ替わりが激しいので新装開店の店も結構ある。

 ただ、奥まった場所に行くほどにシャッターが下りた場所が多くなり、そういう場所だと怪しげなスプレーアートが存在している裏商店街と呼ばれる場所になる。


 坂出さんが迷いなく歩いて行く方向もそっちだ。

 正直その辺りは余程の警官ですら寄りつかない程に荒んでいると言われてるのだけど、係長さん、本当に大丈夫?


 光が消えた。

 昼過ぎなのに真夜中の様に暗い。それが裏商店街。

 まるで場末のスラム街のようだ。

 一歩表に出れば喧騒に包まれているというのに、この裏商店街は嫌に静寂が支配していた。


 まさに異物の侵入を拒んでいるようだ。

 見えない場所に無数の息遣いを感じつつ、戦々恐々私は歩くのだが、隣の真奈香は不安感でピリピリしていて、坂出係長はあまり知らないので話しかけづらい。

 残った翼は何も考えていなさそうな能天気さで一番後ろを付いて来ている。


 こういうところは本来来るべきところじゃないんだよ。

 絶対絡まれる。

 いや、別に絡まれても恐くは無いんだけどね、それで暴走しかねない真奈香さんによる血の制裁が怖いとですよ。


「つか坂出係長、ほんとにこんな場所にいるんすか?」


「居る。すでに追い詰めてある。後は覚醒を待つだけだ。それより、着いたら自己紹介をしておいてくれ。護送係と総務係が既に来ているからな。お前達にとっては先輩が多いはずだ。粗相の無い様に」


 自己紹介ねぇ……まぁやりますけど。

 というか、そういえば追跡係の人は合同しなかったんだなぁ。なんでだろ?

 普通相手を追跡する追跡係が一番先に名前が上がって手もおかしくないんだけど、追跡する必要が無かったんだろうか?


「着いたぞ」


 坂出係長に言われてそこを見ると、広場として使えそうな袋小路に突き当った。

 結構な人がいる。

 そして、その中央に報告書にあった写真と同じ人物がいた。


 塚地つかじ陽大ようだい君その人だ。

 自分がなぜグレネーダーに囲まれているのか全く理解できておらず、仲間だろう二人の少年と身を寄せ合って震えている。


「全員揃っているか?」


「え? あー、処理班の人ですか? 初めましてぇ」


 少し天然入っていそうな綺麗なお姉さん。狸顔とでもいえばいいのか、身はすらっとしているのにどこか抜けて見える高校生くらいの人が私達に気付いて声を出す。

 どうやら総務係のリーダー格らしい。


 そして、私達の出現に気付いて私達を見た護送係がなぜか震え始めた。

 ああ、また真奈香恐怖症を発症した人が増えたんだね……

 最初は警察所内部の資料室に出入りしている刑事連中だけだったのに、随分と感染拡大してしまったものである。


 ちなみに、この病気は私に対して悪態ついたりすると発生する様です。

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