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妖少女  作者: 龍華ぷろじぇくと
第一節 加牟波理入道
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事件を追え3

 研究所内にあるカフェで、私達は四人で席に着くことになった。

 私の横に真奈香。対面には美津子さんと件の藤田という太った男。

 手荷物こそないが、写真通りの怪しい容貌。なぜか一仕事終えた様なスッキリとした顔をしている。本人曰く、賢者タイムらしい。


「いや~、お見苦しいところをお見せしたんだな」


 本当に見苦しい一幕だったよ。

 何が輝いてるわだよ。


「ごめんなさいね。頑張ってる人見るとつい応援したくなっちゃって」


 美津子さんはそれなりに美人だ。

 四谷怪談に出てきそうな長い髪を掻き上げ、頬に手をやって、からころと笑う。

 太い眉が柔和な表情を作りだし、目上の視線でこちらを見てくるのに、これがまた高飛車に見えない仏顔。

 こんな人に応援されたら、それはもう何かを頑張りたくなるものである。


「えっと……とりあえず初めまして。グレネーダーから来ました高梨です。こちらは上下と言います」


 他人行儀に自己紹介。

 素で出会ったとしても仲間意識を持たれたくないので、他人感を意識して業務的に話すことにする。

 確かに外見は綺麗な人だけで行動はどう見てもアブノーマルだしね。これ以上危険人物の知り合いはいりません。


「はい、私は三浦美津子。【加牟波理入道】の妖使いです」


「美津子さんは眼が見えないんだな。だから僕みたいな男でも優しく応援してくれて、大好きなんだな」


「やだもぅ藤田君ったら。私なんかのこと好きだなんてぇ」


 なんだ……この甘い空気は?

 まさか……いや、こんなキモデブでも、彼女は見えないらしいし、頑張る人が好きらしいし、あるのか、まさか本当に……


「ふふ、来月、結婚するんです、藤田君と」


 まさかの衝撃発言。いろんな意味で聞きたくなかった。

 私、このキモデブにすら……負けた!?

 彼氏が出来ないことをこれ程悔しく思ったことが、果たして今まであっただろうか? 血の涙を流しながら唇を噛み千切りたい衝動にかられた。


「いや~、妖研究所に保護して貰えって言われた時は物凄く嫌だったんだけど、あの女の人には本当に感謝なんだな。こんな素敵な人に出会えるきっかけを与えてくれて、愛の天使なんだな」


「あら、他の女の人のことを天使だなんて」


「ち、違うんだな。ぼ、ぼぼぼ僕は美津子さんオンリーなんだな」


 うあぁ、聞きたくねぇ。

 なんか私が底辺の人生送らされてる気がして聞きたくっていうかもう、こいつの顔も見たくない。

 叩き殺してやりたいね、ちくしょお。決して彼氏いない女の僻みじゃないからねっ。


「と、とにかく、私達が来たのはですね、その女の人について聞きたかったんです」


 耐えられなくなったのか、私の横から真奈香が口を出す。

 二人の世界に入りかけた藤田たちは、ようやく私達が来た理由を知ったらしい。というか、私達に気付いたらしい。

 ああそうだったと言った顔で私達の顔を見て、互いに恥かしそうに頬を染める。

 なんだろう、この敗北感?


「た、確か、護送係の人だったんだな」


 藤田の言うことには、彼は【四次元婆】という妖使いであり、コンビニのプリンで妖能力を試していたそうだ。

 その瞬間を鮎川智佳斗に見つかり、逃走したもののすぐに捕まったのだとか。

 彼女が言うには、「あんたんとこに警察が来る前に言っとくけど、他の店で回収された二段プリン、グレネーダーにあるわよ」とのこと。


 その段には既に一撃殴られていて、気の立っていた藤田は怒りに震える声で「そ、それがなんなんだなッ!?」

 と答えたらしい。ただ、自分が勝てないということは理解できていた。


 そして、彼女は言うのだ。

 これ以上被害が出ると私達、抹殺対応種処理係が動くと。

 これは藤田にとっても予想外だったらしく、一気に青くなったらしい。

 誰だって、自分がつい出来心でしたことがそれ程大きくなるなんて思いもしない。


 そして、彼女は能力を控えるように言い、可能なら妖研究所に保護を申し出ろといったのだという。

 ……いい人だ。そりゃあもう反逆罪なんて起こしたのかと思える程にいい人だ。

 犯罪予備軍に改心を促し保護するなんて、私が目指してた人物像に近いではないか。


 そんな人が……なぜ?

 私たちは最後に、何処で彼女にあったのかを聞いて、彼らに別れを告げることにした。

 別れ際、藤田は美津子さんにもうひと頑張りするんだなとか言って、もうノリノリでした。勝手にやってろドチクショウッ。


 しかも美津子さん凄く嬉しそうにしっかり見てるわねとか凄い事を言ってたし。

 なにこのバカップル。いや、相手するだけ無駄なんだろうけどさ。

 私は真奈香に同意してほしいと言うような視線を向ける。


 真奈香さん?

 何故そこで羨ましそうに二人を見つめているのでしょうか?

 あれ? ちょ、なんでアレ、したいね有伽ちゃんとか呟くのかな?

 やらないよ? というか、ちょっと、隠し撮りする場所の選定呟くの止めてくださいませんかね上下さん。


 真奈香との友情を再び考え直そうかと思う私だった。

 というか、冗談だよね?

 ちょっと? 部屋にある一台トイレに移動させるかなってどういう意味?

 名前:  三浦みうら 美津子みつこ

  頑張る人を応援したい人。

  眼が見えないので相手の容姿にこだわりが無い。

 特性:  いつもエロスに全力投球な藤田君を応援している。

 妖名:  加牟波理入道がんばりにゅうどう

 【欲】: 頑張る人を見守る。

 能力:  【盲目】

       妖能力に目覚めた瞬間から盲目になる。

       「加牟波理入道ほととぎす」と言われると逃げ出したくなる。

      【頑張って!】

       頑張るあなたに無言のエール。

       相手は視線が気になり頑張りにくくなる。

      【同族感知】

       妖使い同士を認識する感覚器。

       個人によって範囲は異なる。

      【認識妨害】

       相手の同族感知に感知されない。

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