最終話+1
※注意
本編はすでに終わっています。
ここから先は茶番です。ご理解の上お進みください。
――――――――――――――
「——。ハッ! ここは……」
見覚えがあるようでない、学校の教室。いままでいた学校とは窓から見える景色が違う。なのに、胸に去来するのは懐かしさ。
なんでこんなところに? と頭を掻いていると声が掛かる。
「やあ。藤宮斗真くん」
「……あんた――」
その人物は――。
「えっと、誰?」
知らなかった。
「はは。そりゃそうだ、知りようがないからね。でも今だけは特別、なんだ」
メガネをしたやせ型で笑顔をしているのに目が虚しいものを見ているような、そんな、不思議な男と対面していた。
「私は筆者。この物語を書いているものだ」
「ってことは、俺の事を書き続けた人?」
「そう。君が異様に呑み込みが早いのも、冷静なのもそうだ」
「なるほど」
「今回、このような形でエンディングを迎えた事、少し謝罪をしよう」
男は椅子に座っていたので、斗真も座ることにした。
「では、斗真君にも来てもらったことだし、反省会といこうか」
「反省……?」
男、筆者を名乗る人物は黒板ではなくスケッチブックを取り出し、そこに書きこんでいく。
「この物語には最初から欠陥があった。それは?」
「う~ん。情報量の多さ?」
「惜しい。それは私の悪癖の一つだが、今作ではもっとわかりやすいのがある」
「……ヒロインの多さ?」
「正解。まず最初で5人、追加で一人、それも短い期間で、だ」
男はメモを進めていく。
「参考にした作品に影響を受け過ぎた。五つ子が出てくるラブコメなんだけど」
「それって――」
「おっと、口にすると人を傷つけるぞ」
メモを書き終える。問題点、1:ヒロイン多すぎ。
「Web連載作品における「ハーレム」はゴールの形。過程から何までをハーレム形成する必要はなかった。——加えて、私の描き切る力も無かった」
「俺は楽しいと思ったけど」
「そう、それは私もだ。だがそれは計算や根拠のないただの閃きにすぎない。作品というものは、もっと計算されて作られるべきなんだ」
どこからか現れたお茶を飲む男。斗真も飲む。
「緑色だろう? エナジードリンクなんだ。昼職を終えて晩飯の後に飲む。すると午前三時に目が覚め、執筆時間を確保できる」
「大変なんだな、書くのって」
「そういってもらえるだけでいくらか気がマシになるというものだ。これを機に連載をしている作家には優しくしてあげてほしい。特に毎日更新には」
今度は斗真が聞く。
「なぁ、この「催眠アプリを手に入れ学園ハーレムを築こうとするも、実は全員口裏を合わせてかかったフリをしているだけだった話」ってタイトル。とあるプロからウケるっていうお墨付きをもらったんだろ? なんで途中でやめるんだ」
「簡単な話さ。読者想定する面白さに”成れなかった”からだ。最初は良かった。だが……”数字”というのは残酷でね……」
メモに追記する。2:タイトルに沿っていない。
「読者は何を求めてこのタイトルをクリックする?」
「んー、ハーレムでイチャイチャ?」
「違うな。調子に乗った主人公がいかに困惑するか、だ」
メモに書き足していく。
「私はいろんな顔色を伺う形で一話を広げた。その結果受動的なキミが生まれてしまった」
「受動的。例えば?」
「キミは命令権をもっているんだ。ヒロインに脱げとでも命令すればよかったんだ。最終話のように、ね」
「まぁ、言われてみれば……」
メモを書く手が止まる。
「そうして、”タイトルにそぐわない内容”のせいで離脱率が高くなった……」
「そうか……」
「非は私にある。もっとのびのびやっていれば、といった感じだな」
「でも俺も、自分から動き出すような個性のあるキャラにはなれなかった」
「出来なかった、だ。気にする必要はない」
お茶の追加。いや、もう体裁を隠さなくなってきた。缶のエナジードリンクがいつの間にか置かれている。
「ふう、まあ、こんなところだろう」
「一つ聞きたい。飽きたからやめる、とかではないのか?」
「それはないな。本来は20万字までは展開する予定だったし、学校行事にも絡めてたくさんの”青春”を描くつもりだった。文化祭とかな」
「そうか。なら、いい」
斗真は椅子にもたれかかり天井を見上げる。夕日色の天井だった。
「さて……」
男は立ち上がる。そして――。
「私は面倒くさがりで、同時に物へ執着してしまう癖があってね」
懐から拳銃を取り出した。
「は?」
当然困惑する斗真。それは間違いなく本物だろう。
「君には”転生”してもらう。この世界で、もう一度やり直すために」
「ちょ、未練たらたらじゃないか!」
「構わん。それでも、やりたいことがあるんでね」
撃鉄が起こされる。彼は本気だ。
「では、反省を踏まえて、いってらっしゃい。ノクターンの世界へ」
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