第27話 ”無題”
朝の動きは終わった。次にバトンタッチする。
「次の作戦は……」
「まだ彼は悩んでいる。それを肯定してあげるフェーズよ」
昼休み。ある二人が手を取り合う。
「一番は私……っていいたいけど」
「多少なりは私も信頼してもらってもいいわ。——任せて」
斗真を良く知る幼馴染、ことね。
付き合っている(仮)、凜花。
この歪に見える二人が手を取って斗真を助ける。
お昼。刷り込みで教室から動かなくなった斗真の元へやってくる二人。
「斗真くん、お昼よ」
「凜花。それに……?」
立つ凜花とその後ろに立つことね。クラスの違うことねがいる違和感もあるが、この二人という組み合わせが? という疑問のほうが大きかった。
「ことね、どうして……」
「だってトーマ、元気ないって聞いたから……」
「そんなことはないけど」
「嘘。目を見て言ってみてよ」
それを言われると弱かった。心が弱っている人間には相手が優しかろうとその相手の心を受け止めきれない。
「ねぇ。"言ってみて"」
「・・・・・・。二人とも、仲良く出来るか?」
したり、と心の中で思う二人。
「"そう言うのなら"、もちろんよ」
「ええ、"言われてしまったら"ね」
二人は軽く微笑みを浮かべ、着々と席を作り座る。
二人は弁当を広げる。色とりどりの食べ物が並ぶ。──斗真は気づいていないが、二人の弁当が補完しあうよう、パズルの様に組まれているのを。
「さあ、"何が食べたい"かしら」
「・・・・・・卵焼き」
「毎度ながら好きね、卵焼き。作りがいがあるってものだけど。はいあーん」
いつも通りの餌付け。だが初めて見ることねには少し刺激が強かったようで。「あわわ・・・・・・」と困惑と焦りが生まれる。一応協力関係のはずなんだけど、と頭を整理する。
「と、トーマ。次は何がいい?」
「……ごはん」
「じゃあこれ! おにぎりにしてきたんだ! 食べやすいでしょ?」
「……ほんとだ」
おかずを放り込んでもらい、飯は自分のタイミングで食う。贅沢極まりないスタイルに仕上がった。そこでふと、斗真は思う。
(あれ、もしかして俺が欲してたのってこういう感じなんじゃ)
今までぼやけていた理想の形がなんとなく見えてきた気がした。
斗真はいつの間にか失っていたのだ。アプリを手に入れ、何がしたかったのか。最初に思い描いた”理想の学園生活”とはなんだったのか。
(俺が”言って”、その通りになって、そんなハーレム生活を送るんだった)
自信がついてきた斗真。ちょっとづつ強気にいく。
「から揚げ……」
「はいどうぞ」
「むぐむぐ。ハムカツ……」
「はいあーん」
「むぐ……、お茶」
「ここにあるよ」
「んきゅ、もっかい卵」
「はいあーん」
「もっきゅもっきゅ……」
斗真は基本的にバカなので調子に乗るのは早かった。……その維持が少し大変なだけで。
「さすが斗真くんね、あっという間に平らげてしまったわ」
「食べたいものがあったらなんでもいってね」
凜花もことねも笑顔である。これでいいんだ、これで。
——本当にそうか?
こうしてお昼は終わっていった。
放課後になる。いつも通りの流れになる。——そう誰もが思っていた。
グループトークがにわかにざわつく。
<誰か、斗真くんを知らないかしら。
<クラスにいない。どこへいったのかしら。
>分からないな。みんなそうか?
>さあ、凛花が見てたんじゃないの?
<そうなのだけれど……。
しばらく間が空いた。その時間で凛花の反省のようなものが伺えた。
>手分けして探しましょう。見つけたら図書室へ来るように。
>まだ私の番が回ってきてな~い!
紗良とユナがごねる。彼女たちの立てた一日のプランが崩壊しつつあったからだ。
一方、斗真。
「……」
屋上にいた。いつぞや使って以来だ。少し寒さを感じる風が、なんだか当たりが強い気がした。
携帯を持つ。その画面には催眠アプリがある。
(”理想の学園生活”か……)
これを使ってから始まった俺の学園生活。いろんなことがあった。
思い出す。普通には在り得なかったことがたくさんあった。
(楽しかったな……)
色々なことを思い出す。その全てが”青春”のものであったと思う。
だが……結果論的に、だが――。
(俺は、扱いきれなかったんだな……)
今日を通じてそのことを深く思った。”それ”に振り回されている、と。
(……行こう)
斗真は決意を固める。想像通りなら、きっと……。
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