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平氏の優位は崩れません

 

 治承元年(1177年)11月


 以仁王の令旨に呼応した者は、予想の範囲を超えるものではなかった。

 まず畿内・西国においては河内源氏、伊予の河野氏、肥後の菊池氏などが挙兵した。史実では、興福寺をはじめとする寺社や近江源氏らが挙兵したが、いずれも既に討伐されているか、沈黙している。

 また、挙兵した者らには、平氏の棟梁たる平宗盛が反乱軍討伐の軍を派遣し、翌治承2年にはいずれの勢力も壊滅させている。


 次に東国では甲斐源氏、美濃源氏、木曾義仲などが挙兵した。史実では越前、加賀のほか各地の豪族が挙兵したが今世では平氏方につき、各地の平氏軍団に参集している豪族が続出している。

 また、挙兵した者らには、東海から平基盛が美濃源氏の討伐に向かっている。坂東の平知盛は甲斐源氏の討伐に向かい、その後、信濃に向かう予定である。

 そして木曾義仲に対しては奥州から越後を抜けて平資盛が討伐に動いている。


 最後に平氏方の総大将ともいえる平重盛は、京を発し、近江から美濃に向かって動いていた。平氏方にとっては大規模な軍事行動であるが、兵糧をはじめとした軍需物資は長年にわたる農地開拓や肥料の改良等による生産拡大によりため込んできた膨大な蓄積があり、史実のように兵糧不足に悩まされる気配はなかった。


 なお、この時点で源頼朝は未だ沈黙を続けている。



 -美濃国


「美濃源氏の討伐、滞りなく終えましてございます。」


 美濃に入った僕のもとに基盛から戦勝の報せがとどいた。基盛はこの後、遠江に引き上げるらしい。今年は早い時期から信濃の雪が深くなっており、木曾義仲討伐は春までお預けになる見込みだ。

 兵たちには冬の間、新田開発を頑張ってもらうそうだ。

 僕も来春までは美濃に駐留する予定だ。


 坂東の知盛も甲斐に侵攻し、甲斐源氏を打ち破ったらしい。甲斐源氏の生き残りは、木曾義仲を頼って一路信濃を目指して落ち延びていった。知盛は兵の一部を甲斐に残し、武蔵に引き上げていった。春までの軍事行動はこれで仕舞いだ。


 資盛は越後で雪の影響で足止めをくらっている。こちらも信濃侵攻は春までお預けだ。


 僕、基盛、知盛、資盛が皆、今年の軍事行動に区切りをつけ、あとは雪解けを待って来年と考えていたのだが、義仲の思惑はそうではなかった。


「基盛様から浜松城を義仲に包囲されたとの報せがっ!」


 年の瀬も迫るころ、遠江の基盛から急使が来た。なんと義仲が出兵を強行し、雪中、遠江に侵入したとのこと。やや警戒を緩めていた基盛はこれに対応しきれず、やむなく浜松城に籠城した。


 まずいな。義仲が攻城兵器を持っているとは思えないので、戦国風に仕上げた浜松城を落とすことはできないだろう。しかしせっかく開発した遠江が荒らされるのは望むところではない。


「浜松へ出陣する。準備を急げ!」


 直ちに美濃に駐留する軍団の集結を命じる報せを発した。


 義仲来襲の報せが届いた2日後、軍団の集結を終えた僕は美濃を立ち、尾張・三河を経由して、浜松へと向かった。


 浜松に着くと、やはりというか義仲は浜松城を攻め落とせずにいた。


「よし、このまま後背から攻めかかるぞー!」


 僕はさっそくに義仲本陣を見定め、後背から襲いかかった。義仲の軍が乱れたと知るや、籠城していた基盛も打って出て義仲の軍を挟撃した。


 結局1刻もしないうちに義仲の軍は壊走し、義仲を討ち取ることこそできなかったものの、今井兼平をはじめ多くの将を討ち取ることができた。


「落ち武者が遠江にとどまっているかもしれない。村々を襲う賊にでもなったら大変だ。ただちに捜索と討伐にあたるように。」


 遠江の豪族らに依頼をした後、美濃に引き上げた。このまま義仲を追って信濃に向かう手もあるけど、雪中の行軍は危険を伴うので、今の状況ではすべきでない。


「雪解けとともに信濃に攻め込もう。その後は頼朝だな。」


 美濃への道すがら、1人、今後の計画を練りながら帰還した。





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