表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/90

対抗馬


 久安4年(1148年)1月


 こんにちは、平重盛です。


 正月だ。いつもなら宮中行事が目白押しでじいちゃんも清盛パパも忙しそうにしているけど、今年はちょっと違う。

 去年の祇園社事件がまだ尾をひいている。

 罪は罰金刑が確定し、支払いも終えた。だけど、比叡山の強訴を防ぐために公卿の皆さんや検非違使、それに北面の武士たちにも骨折りいただいた。


 世間的には、「こんだけ迷惑かけたんだから謹慎くらいしろよ。」という雰囲気だ。

 さすがに清盛パパもこの空気を感じ、自ら謹慎中だ。

 正月行事だって参加していない。


 な・の・に!


 「兄者は謹慎中だからな。宮中行事は俺に任せておけ。」


 とか言って、家盛のやつは恩着せがましく出仕している。しかも足繁く!

 いや、どうせアンタは当主にはなれないのだよ、と分かっていても言い方に腹が立つ!


 今日も


 「射礼じゃらいに行ってきたぜ。平氏の代表として、この左兵衛佐家盛がな。法皇様にもお褒めいただいたわ。」


 とか言いやがった。くー!本当に腹が立つ!

 こんなのに押されてる場合じゃないよ、清盛パパ!


 まずいことに、正月28日の除目で家盛は昇進した。従四位下・右馬頭だ。

 清盛パパは従四位上だ。

 まずい、まずい、あと一階だけの差になってしまったよ。


 史実では、このあとどうやって清盛パパは平氏の惣領になったのだろう。それとも僕の行動のせいで、史実とは違うようになってしまっているのだろうか。

 不安になるなあ。

 これからは情報収集を密にしていこう。



 2月になると、平氏うちへの宮中、というか鳥羽法皇の距離感がみてとれる事案がいくつもあった。

 まずは、じいちゃんが四位のトップになったこと。

 これまで四位の最上位だった皇后宮亮・藤原忠隆様が従三位に昇進され、2番手だったじいちゃんが繰り上げ1位になった。

 他の四位の人を上にもってこずに、じいちゃんを1位にしたということは、平氏に対する鳥羽法皇の気持ちに変わりは無いということなんだと思う。


 次に、鳥羽法皇は因縁のできた祇園社で死者などの供養の行事である法華八講を行った。しかもこれから毎年するという約束付きで。

 これって明らかに祇園社事件の対価だよね。

 鳥羽法皇に平氏の尻拭いをさせてしまったということか。

 鳥羽法皇が自分に尻拭いをさせた平氏、いやこの場合は清盛パパか。清盛パパにどういう感情を持つかだよな・・・。


 そして2月下旬。鳥羽法皇は熊野詣に出発する。じいちゃんが護衛につくこと、清盛パパが謹慎なのは定番だとして、じいちゃん以外でお供についていくことになったのが、家盛の実の弟の五男・頼盛殿。


 あれっ? これって非常にまずいんでないかい?


 鳥羽法皇は平氏を切ることはできない。平氏を切るのは自分の武力を捨てることになるから。

 だけと平氏の次の惣領は鳥羽法皇に忠実な人物なら誰でも良い。当然、清盛パパでなくても良い。ちょうど対抗馬になりそうな家盛もいる・・・。


 うん、まずい。とてもまずい。

 史実でも同様の状態だったとしたら、清盛パパは何かしら逆転打をはなったか、じいちゃんが後継を指名したか、家盛が自滅したか、何か逆転劇があったのだと思う。

 それが何だったかは、まったく覚えていない。というか知らない。



 とはいえ、僕にできそうなことで思いつくことは今のところ、何もない。

 おとなしくMissonの続きでもやるとしますか。

 そう決意して、引き続き頼長様の邸宅通いを続けた。




 久安4年(1148年)9月


 -mission完了! 1,000冊読み切りましたー-

 ※報酬 少名毘古那神すくなびこなのかみの国造りの書


 「うああぁぁ!」


 Misson完了と同時に知識が奔流のように流れ込んでくる。

 耐えきれず、頼長様の書庫の中を転がり回った。


 「ふうふう・・・」


 暫くして、ようやくおさまった。誰もいなくて助かった。

 それにしても凄まじい知識量だ。戦国時代くらいまでの建築学、酒造、治水、冶金などが一気に詰め込まれた。もう立派なチートだよ。ほんと。


 「同士重盛よ、おるか。」


 頼長様が入ってきた。

 あぶなかった。もう少しで転がり回っているところを見られてしまうところだった。


 「はい。こちらに居ります。」


 「明日から暫く院の供で留守にする。出入りは自由にしておくので好きにせよ。」


 毎回留守にするときには声をかけてくださる。

 通わなければ、こんなに律儀な方だとは気づけなかったな。


 Missonは完了したけれど、このまま訪問は続けさせていただこう。

 お礼を言って、辞去した。


 気づかなかったけど、このとき頼長様の邸宅を去る僕の姿を見つめる影があった。


 「・・・ただの小倅こせがれではあるが、内府と親しいか。内府に介入されると面倒よな。」


 影はしばしとどまり、やがて闇夜へと溶け込んでいった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ