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腐女子の面目


 久安3年(1147年)


 おはようございます。平重盛です。


 清盛パパから頼長様とのあらぬ噂を知らされて、すぐに噂の源を調べました。


 犯人は意外に近くにいました。実にすぐ近くに。


 「むふふ~。重ちゃん×頼長さま。尊い!むふふふふー。」


 夜な夜な、不気味な声が邸宅内からすると聞き、調べてみたところ、元凶がそこにいた。


 「おのれか。」


 こめかみをピクピクさせながら、くだんの人物に地獄の番犬のうなり声のような声をかける。


 「ひいいいいい!お、おたすけえええ!」


 時子かあちゃんが這って逃げようとする。

 しかし、その手にはしっかりと書きかけの物語が握られている。

 うん、中は確認するまでもないだろう。



 その後、1刻ばかり、しっかりとしつけをさせていただきました。

 最初のうちは「腐女子としての面目が・・・」とか言っていましたが、最後には分かってくれたようです。


 しかし、その後、めったに怒らないばあちゃんに、「妊婦に無茶するな!」とお説教されました。



 そんなことがあってから、はや数ヶ月、今日は朝から邸宅中がばたばたしています。


 時子かあちゃんが産気づきました。


 色々ありましたが、今となっては大事な家族だ。無事に出産してほしいけど、この時代の出産って、相当危険だからなー。


 いや、そもそもこの時代の妊娠に対する考え方がおかしい。

 枕草子のなかで、興ざめするものとして、赤ん坊が亡くなってしまった産屋をあげているのはともかく、その後、女の子を続けて産ませたことをあげている。

 せっかく産んだのに女の子だと・・・いや、今更だな。


 とにかく今は時子だ。

 僕もできるだけのことをしよう。


 本来は、実家に戻って出産するらしいけど、時子はうちで出産だ。

 家が騒がしいのは、僧や陰陽師、山伏に安産祈願をさせているからだけど、母さまの流行病のことがあってから、うちでは神頼みにそこまで力を入れていない。

 騒がしいだけだしね。

 高僧とか比叡山の天台座主とかなら効果があるのだろうか。一度見てみたい。


 さて、僕は産屋には近づかせてもらえないので、幽世かくりょ経由でこっそり近づく。もう手慣れたものだ。


 産屋の中は真っ白だ。

 松竹鶴亀の屏風も白、壁も白、几帳も白、畳の縁も白だ。

 出産を手伝う女房たちの装束も白で統一され、その真ん中で時子が踏ん張っているのが見えた。



 そして目的のものを見つける。


 -いた。


 疫鬼、疫蟲とでも言おうか。異形のものが入り込んでいる。

 部屋中、白いから奴らはそこに落ちた黒いシミのようなものだ。


 さっそく小狼たちに襲わせる。

 小狼たちも慣れたもので、上手に連携しながら、次々と疫鬼たちを仕留め、その数を減らしていく。


 もうちょっとで終わるかな、と思っていると、疫鬼の1匹と目があった。

 嫌な予感がして、後ずさる。


 「って、何でこっちに来るのー!?」


 疫鬼はまっすぐこっちに向かってくる。


 幽世にいるから安全、疫鬼たちは僕に興味が無い。

 すっかり先入観ができあがっていた。検証したわけでもないのに!


 走って逃げていると、後ろから追いついてきた小狼たちが、疫鬼を仕留めてくれた。


 危なかった。ホントに一人だと何にもできないな。


 「ほんぎゃあ、ほんぎゃあ」


 産屋のほうから、赤子の声が聞こえてきた。


 よかった、無事産まれたようだ。


 外に出て、空を見上げると太陽の周りに光の輪ができていた。

 日暈にちうんだ。


 「良いことありそうだな。」


 すっきりした気持ちのまま、伸びを1つして、部屋の中へと戻っていく。



 そして、さらに季節はすすみ6月。清盛パパとじいちゃんが任国から返ってきて、家の中は一気に賑やかになった。


 時子の出産もあったので、夏の疫病よけの御利益があるとされている祇園社の御霊会にでも行こうかという話になっている。


 このまま順調に保元の乱まですすむといいな。

 ・・・ん?何かイベントを忘れているような気もするけど?


 ああ、そうか。保元の乱は清盛パパが平氏の主役だから、じいちゃんがそれまでに死んじゃうのかもしれない。

 じいちゃんの健康にも気をつけよう。



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