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怪盗、始めました! 〜平和主義な義賊と愛に燃える乙女の戦い!〜  作者: 華月蒼.
第一夜.義怪盗アリババ、推して参る。
4/4

3.ステキな趣味をお持ちでいらっしゃる

 ――午後九時少し前、某所。

 サンドリヨンの予告状が出された美術館の周りには、パトカーをはじめとした大がかりな警備網が張り巡らされていた。

 包囲網の中には、六花の姿もある。


 俺は『潤』の姿のまま、自室のテレビから流れる中継でその様子を見ていた。




 サンドリヨンの予告状の内容は、ワイドショーなんかはめったに見ない俺でも、夕飯の席で六花から聞くことが出来た。


「六花ちゃん、またサンドリヨンの現場に行くんですって? 大変ねぇ」


 六花にそういうウチの母親に、六花もメシを食いながら答える。


「そうなんです。今夜は九時に、美術館です。美術館自体だってセキュリティは厳しいのに、さらに警察やFBIからも警備を出すんですって」


「あぁ、そういえばお昼の番組でもやっていたわねぇ」


「えぇ。おばさま、私絶対にあのサンドリヨン捕まえて見せますから!」


「そう、頑張ってね……でも、そういうのは、やっぱり警察の方の方が良いんじゃないかしら?」


「いえ、私、これでもサンドリヨンと同じくらいの年代の女子として、現場では結構功績も上げているんです! テレビで流れるサンドリヨンが追い詰められるシーンの罠、だいたいは私の発案なんです!」


「あら、そうだったの。それはすごいわねぇ。それじゃあ、頑張って、行ってらっしゃい。ケガには気を付けてね?」


「はい、おばさま!」


 そう言って、早々にメシを食い終えた六花は、一足早く、現場となる美術館へと向かったのだった。




 その後、メシを食い終えた俺は、普段通りに自室へと引き上げる。

 だが、部屋の中にはいつもと違う部分が一つ。

 オレ様何様クソヤロー系天使、ジルの存在。そしてもう一つ。


 今日から俺は、『義怪盗』になる。




 ――午後九時ジャスト。


 サンドリヨン及び『義怪盗アリババ』からの予告状が届けられた美術館の、天井のガラスが破られた。

 と同時に、俺はジルによって『義怪盗アリババ』の姿に変身させられ、硝子やらがれきやらの破片で見るも無残なサンドリヨン出現現場にワープさせられていた。

 ……どうやらほとんどの報道陣や警備の人たちは、サンドリヨンの後を追って、美術館を走り回っているらしい。


 が、美術館入口に突っ立っている俺の姿を、残っていたらしい少数の報道陣がカメラに捉えていた。


≪『美少女怪盗サンドリヨン』の出現跡地に何者かが立っています! ……アレはもしや、本日確認されたもう一枚の予告状の――≫


 慌ててリポートを開始する報道などには目もくれず、俺はこう言ってやった。


「我が名は、義怪盗アリババ。推して参る」


 ……報道の女性陣からは、「新たな怪盗、その名もアリババ! クールに決めて颯爽と駆け抜けていきます!」とかマイク通して言われてるけど。

 ぶっちゃけ俺の頭ン中は混乱に混乱を極めていた。


 どーしてこーなった。

 なんで俺がこんなことに。

 そもそも『義怪盗』って何だよ!?


 そして。


 こちとら怪盗初心者だっつーの! イキナリ現場放り込むヤツがいるかー!

 ……居ましたね、ウチの聖天使サマですねわかってました。


 長年(といってもせいぜい十七年ちょいだけど)の経験で俺の中に培われたのは「人生諦めが肝心」という、何とも情けない始末だった。


 ケーサツさんやら美術館のご自慢のセキュリティも、サンドリヨンか悪魔だかは知らないが、見るも無残。そんながら空きセキュリティを堂々と走り抜ける俺。


 なんていうか、コレ、俺が思ってた『怪盗』となんか違う気がする……。


 どうやら警備はほとんどサンドリヨンの方に集中しているらしく、走り続ける俺の周りには人っ子一人いない。

 そういえば、サンドリヨンは、警察やら警備隊やらにちょっかいかけるのが趣味かってくらいに、現場をしっちゃかめっちゃかにしていくのだと、尊から聞いていたような気がする。六花も、サンドリヨンのせいでほぼ毎晩走り倒していると言っていたが……。


 走っている俺の後ろから、ジルが飛んで追いついてくる。


「わかっているだろうな、アリババ。今夜の『預かり物』は――」


「何回聞くんだよ! 金で出来た黄金のランプだろ! どうせ美術館の最奥だろ!」


 それだけを確認すると、ジルは「また後で」とか言ってさっさと飛んで行ってしまった。

 ……フツーの人間に視えないのをイイことに、ジルの奴は俺よりも先に行ってしまったようだ。


 美術館の経路通りに走っていくと、ご丁寧に「本日の目玉! 金で作られた黄金のランプ!」と書かれた看板が立っていた。

 警備やら何やらにちょっかいかけるという、ステキな趣味をお持ちでいらっしゃるサンドリヨンは、まだ到着していないらしい。


「こちらだ、アリババ」


 振り返ると奴が居た。……俺の苦労を知りもせずにさっさと飛んでいきやがった慈悲深~い聖天使サマだ。


「やはり罠は仕掛けられていた。赤外線のセンサーやその他盛りだくさんの罠……の成れの果てがコレだ」


 ……俺の予想に反して、ジルはジルなりに仕事をしてくれていたらしい。

 ゴチャっとジルの足元に積み上げられた罠の数々……何も知らずに踏み込んでいたらと思うと身震いしてしまう。


「まぁ、貴様は今夜がデビュー戦だからな。このくらいのサービスはしてやる」


 あ、つまり次回からは自分で回避しろってことですねわかりました……。


 繊細な素材で作られたランプを、サンドリヨンが来る前にそっと『お預かり』する。……ジルがお返しするまで丁重に扱わなくては……。


 ガラスのケースに入れられていたランプをそーっと持ち上げて、とっととトンズラしよーとしてたら、サンドリヨンがケーサツやら何やらうじゃうじゃ引き連れて現れた。


 俺の姿と、手にしたランプを見るなり、サンドリヨンは叫んだ。


「あーっ!! ソレ、アタシのー!!」


 イヤ、違うだろ。


 心の中でツッコミを入れつつ、俺はサンドリヨンの今日の衣装をチェックする。

 毎回違う衣装で現れるサンドリヨンの、今日のコスチュームのテーマは解らないが(いつも尊が見ている昼の番組では、その日のサンドリヨンのコスチュームのファッションチェックもやっている)、今日は黒髪ロングで姫カットのウィッグに、着物のようなミニドレス、黒のニーハイソックスに踵の高い厚底の下駄のような靴を履いていた。

 ……テレビで見る度に思っていたんだが、動きづらくないんか、そのコスチュームは。


 キイキイと喚くサンドリヨンを尻目に、俺はジルのスーパーテクでその場を去る。


「我が名は『怪盗アリババ』。以後お見知りおきを」


 空から垂らされたロープに吊り上げられながら、俺はそう言い残し、現場を去っていく。


 それにしても……こんなモンまともに相手してたら、いくら日本のケーサツさんやFBIやらが有能でも、捕まらんわなー、怪盗……。




 そのままジルのスーパーテクで部屋に戻った俺は、カーテンやドアが閉められていることを確認してから、『潤』の姿に戻る。

 強制ワープは正直あまり心地のイイモンじゃないが、他人に目撃される心配を考えると、効率的なのかもしれない。

 今晩『お預かり』した宝物は、翌朝辺りにほとぼりが冷めてからジルによってあの美術館に返すそうだ。なので、俺はジルに金のランプを託すと、そのままベッドに倒れ込む。


 今日はいろいろなことが起こりすぎた。

 そう思いながら。


「そういえばな、潤よ」


 ウトウトしていると、ジルが何やら話しかけてくる。

 うるせーこちとら毎日が忙しいDKやぞ! DK(男子高校生)!!


 うるさいジルの声をかき消すようにして、俺はさっさと夢の世界に旅立った。




 次の日。

 教室は有象無象の阿鼻叫喚だった。

 『義怪盗アリババ』の出現とその報道の情報によって、「アリババ様親衛隊」なるモノが出来上がっていたのだ。

 その筆頭が……。


「いやぁ~ん、アリババ様のこのクールでソリッドな、ひ と み ! もう、メロメロよぉ~ん」


 腰をくねらせながら、どこのJのつくお方系の速さで作成した、『義怪盗アリババ』の顔写真ラミネートカード。を、持ちながら顔を赤らめるオネェ。そしてその取り巻きと化した女子たち。


 ……凪……俺は最後までお前だけは信じていたのにな……。


 一方。


「な~にがアリババやねん! サンドリヨンちゃんのカタキはオレらのカタキやー!」


 それに対して野太い声を上げる尊率いる「サンドリヨン親衛隊」のみなさん。


 ……何このクラス、バカしかいねぇ……。


 頭を抱える俺の脳裏には、昨夜眠りに落ちる前にジルの言った一言がぐるぐると渦巻いていた。




「サンドリヨンに憑いているのは……堕天使だ」





 

 

 

とりあえず、第一部完、です。


そのうち第二部が始まるかと思われますので、

よろしくお願いします。


華月蒼.

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