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悪人になりたくはないのです

                     1



 50を過ぎて、大山田は実直を極めつつあった。ありふれた地方都市の市立中学で勤めながら、多くの生徒を卒業まで見送り、大きなトラブルもなく。保護者はもちろん生徒からすらも感謝こそすれ、批判を向けられたことなど滅多になかった。

 若いころは人並み以上にズボラで鈍くさく、小児趣味をこじらせてジュニアアイドルの追っかけなどまでしたものだが、ある程度歳を重ねるにつれか、燃えるような性欲は憑き物がとれたように消えた。無難な歳のうちに無難な女と、無難な恋愛結婚を済ませ、今まで子宝に恵まれない中でもつつましく幸せに暮らしてきた。大山田は教師としても、人間としても、究めて模範的であった。


 そんな大山田だが、ある夜、妙な二人組と会話をした。その二人は丸っきり同じ見た目をしていたのだが、どんな特撮でも見たことが無いような、奇妙な着ぐるみの様相をしていた。ずんぐりむっくりした胴体に短い手足、キツネのそれのようなふわっと長い尻尾。そのどれもが緑と白のけばけばしい縞模様で彩られていた。反対に顔は緑一色だったが、大きい目玉はゴマ粒ほどの黒目を残してほとんど白く、一目にはむしろ白色の方が際立って見える。ゴマ粒黒目は忙しなくコロコロ動き回り、大きな口からはピンク色の歯茎とサメのように細かい歯が見え隠れしている。着ぐるみに見えるのは見た目だけで、れっきとしたこういう生き物の様である。

 当たり前のように人の言葉を操るので、「~人」と数えるが、この二人は明らかに人間ではなく、なおかつ、明らかに大山田が今体験している時間は夢のものである。


 大山田自身それを理解しているつもりなのだが、体に薄くまとわりつく空気感が、夢離れしたリアリティを覚えさせる。しかし、大山田の直近の記憶は、歯を磨きながら妻とニ三談笑したもの。紛れもなくこれは夢なのである。大山田もそう疑わないことにした。

 

「よろしいでですか?」


 奇妙な二名のうち、右側が口も大して開かずに声をかけてくる。どうやら、大山田が事態を把握できるまで待っていてくれているようである。これは夢という結論は出していても、今自分が直面している事態など到底把握しきれていないのだが、少なくとも、目の前の怪物二名はこちらを慮ってくれているようである。どことなくもじもじと短い手(前足?)をすり合わせている様子などは愛嬌さえ感じる。


「私たちは、ドゥドゥンギュリュ(不明瞭な発音)言います」

「私たち、人間に、お話あってあなたに会話きました」


 今度は交互に話し出した。彼らの簡素な自己紹介はたどたどしくも要点をついており、分かりやすかったが、反面、内容が分かったとて新たに驚きがあるような代物ではなかった。

 要するに、大山田に話が合ってコンタクトを取ってきた友好的なUMAである。それくらい、夢の中という前提さえあれば、一目で察せられる。大山田は、無言のまま、しかし時折頷きながら怪物たち交互に目を向け続けた。


 話が本題に入ったらしかった。怪物たちは小さな黒目をさらに小さくして、心底申し訳なさそうにこういった。


「私たち、子ども食べます」

「人間の、子ども」

「絶対に食べなければいけない」

「でも、いっぱいない。一人だけ、ひととせに、一度だけ」


「子どもを食う?」


 ここで初めて、大山田が言葉を返した。怪物は慌てたらしかった。おろおろしながら、必死に弁明し始めた。それは、自己紹介のそれとは打って変わってたどたどしく、おぼつかない。まるで、己の非を認めた後にしなければいけない言い訳のような、そんな苦しさがあった。彼らも分かっているのである。子どもを食うなんて、ひどい話だ。


「祭り。祭り。祭りのために、子どもを食わないといけないの?」


 怪物が言ったことを大山田がそのまま聞き返す。怪獣は顎との境が見えない首を縦に振った。


「神事ってことだな?それは、絶対しなけりゃいけないってことか」


「話早い」

「助かります。おおおおおださん」


「大山田だよ」と言って、大山田は笑った。夢だからか、はたまた彼らに慣れすぎてしまい、緊張感がなくなっているのか、怪獣とは裏腹に大山田は朗らかである。


「しかしね。キミ。何で僕にそんな話を?僕に子どもはいないよ?」


 居たらやるってもんでもないだろうかと、言いながら大山田は何となくおかしく思った。


「でも、先生です」

「たくさん子ども、見ている」

「良い先生」


「ああ、なるほど。教師だからか」


 ひどく合点がいった大山田だが、すぐに「でも、だからこそ生徒は食わせやしないぞ」と怪獣に言った。怪獣は弾んだ声で返した。


「大丈夫です。先生の知らない子」

「ただ、先生、選んで欲しい。クラスの中から一人、子ども」

「教師なる。子どもたち見る。一人、消えてもいい、消した方がいい」

「選んで欲しい。教室で」

「消えてもいい子、消した方がいい子」

「私たちが食べても支障の少ない子」

「しようのない子」

「私たち、子ども食べる。それは人間にとって良くないこと」

「とても悪いこと。でも仕方がない。食べなくてはいけない」

「だから、選ばなくてはいけない。でも、人間の子ども、分からない」

「人間の事詳しくない」

「悪いこと、悪さが少なくなるよう、協力してほしい」

「私たち、悪人になりたくはないのです」

「それはとても悲しいこと。人間が、人間でなくても、嫌われたくはない。悪と思われたくはない」


 右側の怪物の左目と、左側の怪獣の右目が、大山田の両の眼の視線と重なる。大山田はそれを逸らすことができず、言葉の意味も理解できなかった。ただ、怪物たちの言葉に明らかな熱がこもっていることだけが分かり、そこでようやく恐怖が迫ってきた。



2


 目を閉じたはずがないのに、何故か瞬きのように目の前が一瞬暗くなり、そして景色が変わった。大山田は教壇に立っていた。立ったことが無いクラスの教壇で、目の前には見覚えのない生徒たちが立っていた。子どもには違いないが、彼らは中学生であった。


 大山田は数秒硬直したが、背中に刃物を当てられせっつかれているような焦りを憶え、慌てて闇雲に生徒たちに声をかけた。とてもまともなメンタルではなかったが、豊富なキャリアで言葉はほとんど自動に出てきた。違和感のないホームルームが幕を開けつつあった。


 しかし、生徒たちは皆、教壇を向いてこそいるが総じて無表情で、大山田の言葉を熱心に聞いているとも()()()しているとも取れる微妙なリアクションを見せてきた。

 最初こそ、適当な話題をつらつら並べる大山田だったが、途中で嫌になり黙った。そして俯いて、初めて教壇の上に束ねられたプリントが、びっしり文字で埋められた原稿用紙であることに気づいた。


(………この子らが書いたのか?課題か何かかこれは?)


 原稿用紙一人につき一枚分。ほぼ余りなく書かれていた。一番上のものを軽く黙読すると、どうもそれは彼ら自身が書いたと思われる、自身の身の上や人となりに関する文章であった。


「足立信也……」


 目で追ったついでに、プリントに書かれた名前を読んだ。すると、教壇から見て一番左端の、最前列の席の男子がスッと立って。黙ったままプリントを受け取りに来た。


「これは……名簿順?…に並んでるの?席も、プリントも」


 尋ねてはみたが、足立信也と思われる男子生徒はそのまま黙って席に戻っていった。しかし大山田は既にこの夢の勝手が分かりつつあった。名簿順であることも、彼らが一言も発さないことも、つまりはそういう設定なのだろう。そして、俺は生徒を順に呼んで、このプリントを渡してやればいいのだ。


「安部樋波」


 ようやく教師が板についたような。そんな貫禄を思わせる低くも澄んだ声で、生徒の名前を呼んでいった。円滑に、ごく円滑に、プリントは生徒の手の元へ渡っていった。大山田は「普段の自分のクラスもこのくらいなら楽なのにな」と腹の中で苦笑した。


 最後の生徒にプリントが渡ったタイミングで、再び足立信也が起立した。そして、ようやく口を開いたかと思うと、自身がしたためたであろうその文章を読み上げた。


「足立信也。14歳。僕の人生は、いつも静かな挑戦の連続だった。東京の平凡な家庭に生まれ、幼い頃は体が弱く家で絵ばかり描いていた。机の上が僕の世界のすべてだった。しかし、小学校の運動会で転んでも最後まで走りきった時、諦めない楽しさを知った。それが僕の最初の転機だ。中学校では、あえて未経験のサッカー部に入った。最初はボールに触ることすらできず、ベンチを温める日々が続いた。悔しくて毎日夕暮れまで居残りで練習を重ねた。二年生の秋、初めて公式戦のピッチに立ち、アシストを決めた瞬間の興奮は忘れられない。仲間と泥まみれで笑い合った時間は、何物にも代えがたい僕の財産となった。 これまでの十五年間は、弱い自分を少しずつ乗り越えていく道のりだった。」


 何というか、おあつらえ向きな、イヤに真面目な文章だなと思いつつ、大山田は原稿を読み終え、静かに着席する足立信也を見た。髪の毛を最低限セットし、キリっと面長の真面目そうな少年だ。丁度、今の文章が良く似合う。そんなことを考えているうちに、もう二人目の安部樋波の自己PRが終わってしまっていた。

 ここで再び我に返ったように緊張感を取り戻した大山田は、3人目の卑屈そうな眼鏡小僧と目を合わせた。小僧は圧縁のレンズをしっかりと原稿に向けて、くぐもっていてもハキハキとした調子で己についてスピーチを広げた。見た目に反して、中々大した声量と態度だったが、その内容に大山田は愕然とした。


 眼鏡の小僧(名前は忘れた)は恥ずかしげもなく自分は帰宅部で、大した才もなく、憑りつかれたかのように自慰行為をするだけの日々を送っていると告白した。さらには、クラスメートを盗撮しているとか、妹の下着を盗んでいるとか、犯罪めいたことまで明け透けに話している。絶句する大山田を無視して、眼鏡はストンと席に着いた。天秤のように一つ奥の席の男子が起立する。


 とめどなく一人一人が、己のことを曝け出していく。「しようのない子」という先ほどの宇宙人の言葉が脳裏によぎる。大山田はドラッグストアで細かくは覚えていないほど万引きをしているという茶髪の少女を見つめながら、改めて自分の役割を理解した。


(……俺は今から、生贄を選ぶのか。宇宙人に食われる。食われても仕様のない子どもを)


 部活の後輩から小銭をせしめている奴。職員室からテストの答案用紙を盗んで、データを売りつけているあくどい奴。意図的に仲間外れにして女子一人を不登校に陥れた奴。様々な仕様のない子の群れ。大山田は、原稿用紙の束の下敷きになっていた座席表に、震えるペンでチェックマークを付けながら、少しづつ目星をつけ始めていた。

 選ばないという選択は許されない気がした。夢だと思って、適当にいなすのも許されない気がした。なぜ自分がこんなことを、なんて疑問も、不思議なことに一切かすめもせずに一身に、生贄選びに勤しんだ。


 生徒全員のPRが終わり、大山田は座席表につけた三つのバツをトントンとペンで叩いた。そこから数十秒、大山田は「桐山楓」と呟いて、ペンを教壇に、放り投げるように置いた。視線は生徒の方を向けず、大山田は悪事を働いた少年のように、ジッと目を伏せていた。教室は一切の音が無く。そのまま大山田は見慣れた布団の中に戻って来ていた。


3



 朝の陽光の中で、大山田は数分呆然とした後、学校に病欠の連絡を入れた。教師になって初めての欠勤である。気分がすぐれないのは本当だったが、大山田は家で養生することなく、電車とバスで県を一つ跨いだ先にある閑静な住宅街を訪れた。

 そこの街に、「桐山楓」が幾度となく窃盗を繰り返したドラッグストアがあるはずだった。一つ橋商店街のはずれにあるドラッグストア。彼女の原稿に確かにあった地名を素通りして、大山田はそこから一番近い中学校に向かった。ネットで一つ橋商店街と検索してから、この町に降りて、大山田は迷うことなくその中学校に向かうことができた。彼がソフトボール部の顧問をしていたころ、練習試合で何度か訪れたことがあったのだ。


 しかし、たどり着いたとてできることなどない。大山田は近辺をふらついたり、商店街の喫茶店に入ったりして時間を潰した。今度、校門の前まで訪ねたころには下校の時間になっており、たくさんの生徒が夕陽に顔を染めつつ、あちこちに散っていった。各々、よく騒いでいる。


 それら朱色をぼんやり眺めていると、背後から声をかけられた。「やっぱり大山田先生だ」と歩み寄って来たのは、この中学のソフトボール部の顧問だった教諭だった。大山田も「ご無沙汰してます。羽田先生」と握手を求めた。


 羽田は特に、大山田が訪ねたわけを聞くこともなく、朗らかに二、三の他愛のない会話を振ってくれた。大山田は羽田と平行に並んで変わらず生徒たちの顔を眺めながら、それに応えた。そこから少し沈黙があり、大山田はボソッと「足立……足立信也は…元気ですか」と呟いた。声は震えていた。


「足立ですか?」


 羽田はキョトンとしつつ、「アイツは相変わらずお調子者ですよ。ケジメのついたいい奴でもありますけどね」と答えた。「足立が何か?」と質問を返したが、それに大山田は答えなかった。

とうとう、大山田の視界に、例の、自慰に狂わされている眼鏡が映った。夢の教室より、数倍卑屈に見えた。


 眼鏡を目で追いながら、何かに憑りつかれたかのような顔で「桐山楓……」と呟く。羽田は今度は「はい?」と耳を傾けてきた。大山田はここで初めて、記憶より少々老け込んでいる羽田の顔を見た。「桐山、楓ですよ」と上ずった声で繰り返す。


「うちの生徒ですか?聞いたことがありませんが……」


 羽田は他人でも見るかのような目で、大山田を見つめ返し、そう返した。




 桐山楓は、夢の中の桐山楓の話では、彼女は回数を覚えていないほど万引きをしているが、そのうち3回は補導を喰らっている。警察の手を煩わせているし、当然学校も処分を求められている。ベテランであるはずの羽田がそんな問題児を知らないはずはない。


(しかし、それを考えるのはキリがないことだ)


 大山田は帰りの電車でそう結論付けた。付けても、晴れることない靄を抱えつつ、それでも結論を急いだのだ。今眠るのはあまりに恐ろしかったが、大山田は目を閉じてこのまま酔うように車体の揺れに身を任せようとしていると、「もし」と言いながら肩を叩くものがいた。


 目を開けると、スーツ姿の、大山田と同年代らしい男性がいた。男は、一つ橋で教師をしとります横尾ですと名乗って、一枚の紙を渡してきた。それはあまりに見覚えのある名簿であった。


「そこに書いてある名前に、見覚えがありますか?あなたが羽田先生に足立の名前を尋ねていたのを、聞いてしまって」


 大山田は横尾の話もそこそこに、食い入るように座席表を眺めた。どの名前も記憶の遠くに覚えがあった。紛れもない夢であったあのクラスの名簿である。


「ええと……桐山?…でしたか。その名前を探しているのですか?」


 大山田は核心を突かれ、バッと横尾の皺の深い顔を向いた。


「無いでしょう?」


 言う通り。桐山楓の名前は無かった。大山田より先に横尾が続けた。


「夢を、見たんでしょう。宇宙人に会ったかと思えば突然教壇に立って、生徒たちのスピーチを聞く。そして、一人選ぶ」


「あ、アナタは」


「過去に同じ夢を見た者です。そして、私も同様に、何とか私が立った教室を調べて、探し当てた」


 横尾は握っているレザーバックの持ち手を揺らしながら、伏し目がちに続けた。


「貴方も見当がつき出しているころでしょうが、私たちが選んだ生徒は存在が消えてしまっています。私も、アナタの言う桐山という女生徒のことを思い出せません」


 大山田は横尾の視線の先と同じ、つまりは彼のカバンの持ち手を見つめながら唇を震わせた。依然として声は発せられなかった。


「この世から消えてしまっているのです。それがあの夢の中の宇宙人の仕業なのかは分かりませんが、その桐山という少女を認識しているのは、もう貴方のみです」


 大山田は自身の犯行を明かされていくサスペンスの犯人さながらに、激しい動悸に見舞われた。が、横尾はそんな彼に寄り添うように穏やかな顔を見せた。


「私も貴方と同じ境遇に立ち、貴方と同じ決断をしました。今、貴方が葛藤をしているように、それは罪深いことなのかもしれません。しかし、私はよくよく考えたうえで、自分は無実だと思っています」


「無実?」


「そうです。貴方は、最初の説明で宇宙人共が言ったことを覚えていますか?『儀式のために子どもを喰わなければいけないが、できる限り支障が出ないようにしたい』とそう言ったのです」


「……………………」


「宇宙人共は、消えてもいい子どもを選んで少しでも自分の罪を減らそうとしていました。こともあろうに命の天秤をかけようとしていたのです。しかも!その選択すらも第三者に任せようとしたのです!何の因果もない私たちに!」


 横尾の声は徐々に勢いづいてきて、持ち手を握る手にも筋が浮かぶ。大山田は口を半開いて、頷いている。


「彼らは自分たちの被るべき罪を、私たちに投げ打つことでチャラにしようとしているのです。そんな行為に巻き込まれた私たちは被害者であり、まかり間違っても加害者ではありません」


 大山田は心の靄が晴れていくのを感じた。確かにそうだと心から思った。際限なく開き続ける横尾の口数の多さに精を見出していた。


「どれだけ仕様のない子どもを選んでも、その罪が消えることは無い。子どもたちの存在を消したからと言って、その罪が消えることは無い。彼ら彼女らを認識している我々はあの外道共を断罪する意思を見せ続けねばならないのです!」


 大山田は小さく成程と呟いた。あまりに小さいリアクションだったが、横尾の言葉は深く響いて彼のわだかまりを解いてくれた。


「桐山という少女はどういう学生だったのですか?」


 レザーバックを自分の膝の上で整えて、横尾が聞いた。大山田は「万引きを繰り返している。不良少女でした。それで、僕は選んでしまったんです」と素直に答えた。その心情はほとんど懺悔に近かった。


「目に見えて素行の悪い生徒がいれば、私も同じような選択をしたでしょうね」


 遠い目で横尾はそういった。そのまま「私の時は、全員目立った悪事はなく、みんな等身大に子どもでした。だから、私はPRで死にたいと言った子どもを選んでしまった」と、今度は足元に目線を向けて静かに言った。


「その子の名前は?」


 聞かなくてはいけない気がして、大山田は縮こまる横尾を覗き込むような形で話を掘った。横尾は手をモジっと動かして、静かに言った。


「忘れもしません。大山田玲奈と言う子でした。小学校の時から、父親から隠れて性被害を受けていたと語っていました。思い出すのもつらい、凄惨な文章でした」


 大山田の降りるべき最寄りの駅はとうに過ぎていた。横尾の背後から指す強烈な西日が前の座席で文庫本を広げている制服の少女を照らし、光で覆っていた。光に包まれる少女の背後には大山田が教鞭を振るう学び舎が見える。少しの静寂の後、横尾がまた口を開いた。


「そういえば、貴方の名前を、まだうかがっていませんでしたね」

足立信也の文章は作品の表現上、AI生成したものをこちらで修正したものになります。

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