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眠るたび異世界の少女と入れ替わる服飾学生は、滅びかけた都を繕う  作者: 魔法使いアリッサ
6章 お風呂がない!

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愛菜の日記-愛菜と嵐-

嵐のラストライブがやばすぎて

どうしても気持ちが抑えられませんでした、、、。




ラストライブの配信が始まった瞬間、藤井愛菜は息をするのを忘れた。


画面の向こうで、光が揺れている。


ペンライト。

歓声。

五人の影。

聞き慣れた声。


部屋の中は暗いのに、画面だけが眩しかった。

眩しすぎて、愛菜は少しだけ目を細める。


終わるんだ。


その言葉が、胸の奥で静かに落ちた。


終わる。

あの嵐が。

小学生の頃から、ずっとそこにいてくれた人たちが。


最初のきっかけは、たいしたことじゃなかった。


クラスの子たちが好きだった。

テレビでよく見た。

休み時間に、みんなが楽しそうに話していた。


置いていかれたくなくて、愛菜も聴き始めた。


でも、いつの間にか違っていた。


周りに合わせるための音楽じゃなくなっていた。

誰かと話すための話題じゃなくなっていた。


愛菜が、ひとりで帰るための音楽になっていた。


中学生になっても、愛菜はまだ嵐が好きだった。


下校途中、イヤホンを耳に入れる。

制服の袖。

重たい鞄。

夕方の駅。

ホームに入ってくる電車の風。


誰にも言えなかったことを、全部、曲の中に隠していた。


学校で笑えなかった日も。

家に帰るのがつらかった日も。

自分が何のために生きているのかわからなくなった日も。


嵐の曲だけは、いつも同じ温度で流れていた。


ある日。


どうしても、どうしても辛い時があった。


今思い返しても、何が決定的だったのかはわからない。

いくつもの小さな痛みが、胸の中で絡まって、ほどけなくなっていた。


もう無理だ、と思った。


駅のホームに立っていた。


アナウンスの声が遠かった。

人の足音も、話し声も、全部、水の中みたいにぼやけていた。


黄色い線の向こうだけが、妙にはっきり見えた。


電車が来る。


そう思った。


愛菜は、ゆっくり歩いた。


一歩ずつ。

一歩ずつ。


自分の足なのに、自分のものじゃないみたいだった。

誰かに押されたわけじゃない。

でも、自分で選んでいる感じもしなかった。


ただ、吸い寄せられていた。


もう考えなくていい場所へ。

もう傷つかなくていい場所へ。

もう、何も感じなくていい場所へ。


その時だった。


イヤホンから、5×10が流れてきた。


最初は、ただの偶然だった。


何度も聴いた曲。

大好きな曲。

だけどその日は、いつもと違って聞こえた。


胸の奥に、まっすぐ言葉が落ちてきた。


『ここに立ってる、

僕たちが今

輝けるのは君がいるから

5人でいる。ずっといる』


その一節だけが、愛菜の中で強く光った。


そんなはずない。


愛菜は、頭のどこかで思った。


あの人たちは、自分のことなんて知らない。

名前も、顔も、今日この駅のホームにいることも知らない。

自分がいなくなったって、世界は変わらない。

電車は走る。

学校は続く。

明日は来る。

テレビの向こうの五人も、きっと輝き続ける。


それなのに。


それなのに、その瞬間だけは。


本当に、そう言われた気がした。


君がいるから。


見てくれる君がいるから。

聴いてくれる君がいるから。

好きでいてくれる君がいるから。


僕たちは、ここに立っている。


その「君」の中に、自分も入っているのだとしたら。


たった一人分でも。

小さくても。

誰にも気づかれなくても。


愛菜がここで消えたら、その「君」が一人、いなくなってしまう。


それは、ゼロじゃない。


愛菜は足を止めた。


電車の風が、前髪を強く揺らした。

遅れて、心臓が大きく鳴った。


怖かった。


その時になって初めて、自分がどこまで歩いていたのかがわかった。

何をしようとしていたのかが、身体の方からわかってしまった。


足が震えた。

息ができなかった。


愛菜は、黄色い線の内側へ戻った。


一歩。


たった一歩だった。


でも、その一歩で、愛菜は今日まで生きてきた。


画面の中で、五人が歌っている。


ラストライブの光が、涙で滲んだ。


愛菜はもう、小学生ではない。

中学生でもない。

あの日の制服も、鞄も、駅のホームも、今ここにはない。


それでも、あの瞬間だけは、まだ身体の奥に残っている。


ホームの冷たい空気。

電車の音。

イヤホン越しの歌声。

そして、自分が「君」の中にいてもいいのかもしれないと思えた、あの一瞬。


愛菜は膝を抱えた。


「……生きてたんだ」


声にした途端、涙が落ちた。


生きててよかった。


まだ、そうは言い切れない。


そんなに綺麗に、過去を抱きしめられるわけじゃない。

あの日から今日まで、全部が美談だったわけじゃない。

何度も折れた。

何度も戻りたくなった。

何度も、自分なんていない方がいいと思った。


それでも。


生きててよかったって、思えるようになりたい。


あの日、曲に足を止められた自分を、馬鹿にしたくない。

大げさだと笑いたくない。

たかがアイドルだなんて、誰にも言わせたくない。


遠い光が、人を救うことがある。


テレビの向こうにいる人。

イヤホンの中の声。

直接会ったこともない五人。


それでも、あの日の愛菜の手を引いたのは、確かにその光だった。


画面の向こうで、五人が笑う。


終わりに向かっていく時間の中で、愛菜は涙を拭わなかった。


終わってしまう。


それは悲しい。


でも、消えるわけじゃない。


あの日の歌は、まだ愛菜の中にある。

ホームから戻った一歩も、まだここにある。

泣きながら配信を見ている今の自分も、その一歩の続きにいる。


「ありがとう」


愛菜は小さく呟いた。


誰に届くわけでもない。

それでも、言いたかった。


「私、まだ生きてるよ」


画面の光が、涙の中で滲んで、五つの星みたいに揺れた。


愛菜は思う。


いつか本当に、生きててよかったって思える日が来たら。


その時はきっと、あの日の自分にも言える。


戻ってくれてありがとう。

一歩、戻ってくれてありがとう。

今日まで連れてきてくれて、ありがとう。


ライブは終わりに近づいていく。


けれど、その終わりの中で、愛菜の中に小さな始まりが生まれていた。


生きててよかったって、思えるようになりたい。


その日まで。


一歩ずつ。

一歩ずつ。


愛菜は、もう少しだけ歩いてみようと思った。

本当は勇気くんが悶々としてる話の予定だったけど

予定を変更して、、、。



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