疑わしき第三者
「こんにちは。来栖川です」
桜がいつもの様に丁寧に挨拶をする。
桜の力で、長年の茜の慎太郎に対する誤解を解くべく再会させる為、翔太の家へ桜を招き入れた。
「あ〜ゴン太さん?こんにちは。ゴン太さんてこんな可愛い女の子だったのね。翔ちゃん!」
翔太の後ろから、茜が嬉しそうに顔を出し挨拶する。
「ゴン?…あ〜〜」
桜が翔太を睨み付けた。
「はははっ…忘れてた」
翔太は笑って誤魔化した。
そして2匹の犬達も桜を歓迎し、満足そうにシッポを振っている。
「どうぞ」
と、茜が誘導し、桜を部屋の中へ招き入れる。
「お邪魔します」
「いらっしゃい」
リビングに入ると、滝川が桜を迎えた。
「母さんの仕事関係の人で、滝川さん」
翔太が紹介すると、また、桜が丁寧に挨拶する。
「しっかりしたお嬢さんね。翔ちゃんの彼女?」
滝川が2人に向かって聞いた。
「はい!」
桜は元気良く返事をし、満足した様に、にっこりしている。
「違うよ!」
翔太は真っ赤な顔で、思い切り頭を振った。
「あらあら、お茶淹れて来ますね。美味しいケーキが有るのよ。座ってて」
滝川はキッチンへ消えた。
「へ〜そうなんだ〜」
茜は、思い切り冷やかしの目を向けて来た。
「違う……ってば」
翔太は必死に否定するが、桜は澄まして座っている。
「滝川さんどうしよう?」
「んー、今日は来なくても大丈夫って言ったんだけどね〜、心配で来ちゃうのよ」
「傍目で見てるだけでは、何やってるか分からないと思いますが……ある程度説明して置いた方が良いと思います。
じゃないと…怪しい宗教か何かと、心配されますから」
「そうね……」
「お待たせ〜ここのケーキ人気なのよ。いつも行列が出来てて、今朝1時間並んで買って来ちゃった」
「美味しそう!」
3人は飛び付いた。
桜はお茶を飲みながら、滝川に説明した。
「本当にそんな事が?……現実に出来るんでしょうか?」
「最初は信じて貰えないですけど……」
「それって……本人が知ら無い事は分からないんですよね?」
「えっ?ええ……そうですね。本人が分からないと……」
『?……』翔太は桜の顔を見た。
桜は翔太に軽く首を振って見せた。
「そうですか。先生も慎太郎さんとあんな別れ方して…聞きたい事もおありでしょうし……分かりました。お邪魔しませんわ。わたし、離れて見…」
「あー滝川さん。そう言う訳で、今日は仕事にならないから、帰って貰っていいわ」
滝川の話が終わる前に、食い気味に茜が言った。
『えっ?帰しちゃうの?じゃ何の為に説明したのさ?』
翔太は珍しく素っ気ない、茜の滝川に対する態度にハラハラした。
「そうですね。込み入った話もあるでしょうし」
桜が付け加えた。
「あっ‼︎ああ……そうですね。気付きませんで、失礼いたしました。分かりました……じゃ先生、明日また来ますね」
滝川は自分の置かれてる立場に初めて気付いたらしく、慌てて帰る準備をした。
「何で?何で急に滝川さん帰しちゃったのさ……仲間外れにしたみたいじゃないか」
翔太が茜に抗議した。
「仲間外れって……子供じゃないよ。でも滝川さん。何であんな事聞いたのかしら?」
桜が眉間に皺を寄せ、難し顔をしている。
「えっ?何か言ったっけ?」
「うん……確認したのよね」
「??………」
「だから!本人の知ら無い事は分からないんでしょって……聞いてたでしょ」
「あー、それって、何が変なの?」
翔太にはさっぱり分からない。
「わざわざ聞いたのよ…関係無い第三者が……何でそこが気になるのよ」
「?……あーそれで。本人が知らなくても分かるって、教えなかったの?」
「可笑しいのよねー。滝川さんに慎太郎の話なんか1度もした事無いのに。今回の話しだって、翔太の父親が亡くなってたって言っただけなのに、あんな別れ方って…慎太郎が亡くなってたの知ってたみたい……」
「えっ!えっ?そうだった?……母さんが僕に言ってるの聞いてたとかじゃないの?」
「それにしても慎太郎って名前…何で知ってたのかしら?翔ちゃんにも言った事無いのに……」
「ああ……何でだ?滝川さんは…第三者じゃ無いって事?」
ここで初めて翔太にも疑問が湧いた。




