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89 『絶望』を名乗る帝王②

遅れました…すみません…

「ジャン・バティスト…デュリ!」


 そんな…あり得ない…!デュリのことはこの国にいるものなら誰でも知っている…。


 200年以上前…フィール様と共にリヴリィア帝国を立ち上げた英雄の一人…。歴史上の偉人として学んできた者がどれだけいるか…。


 そして…100年前…。デュリは人間との大規模な戦いの中で戦死したと聞いている…。


 今…目の前にいるのがその英雄だと言うのか!?


「嘘を語るな!お前が…デュリであるはずがない!彼は人間との戦いで…すでに死んでいるはずだ!」


「…ふん…やはりな…真実が歪められている…」


「…?どういうことだ!」


 男の呆れたような嘆息…。その表情は愚かなる者に向けるようだ…。無知に対して不快感を感じているようにも…。


「我は人間との戦いで戦死したのではない。あんな奴等に…敗れるような『帝王』ではない…」


「…なら…なぜ…!」


「答えは簡単だ。我は…フィールとの戦いに敗れ…命を落とした…」


「…!?」


 デュリ…と名乗る男からの衝撃的な言葉…。仲間であったはずのフィール様との争い…。


 そうなると…謎はさらに深まる。


「…何故だ!何故…フィール様と戦う必要が…!?あのお方は…同胞との争いを最も好まないはず…!」


「…そうだな…あの女は同族の者と戦うことを何より嫌う…。だからこそだ」


「…何…?」


「…ジャン・バティスト・デュリは許されざる大罪を犯した…。それによりフィールは自らデュリを処刑…。それが歴史の真実よ…」


「…!」


 歴史の英雄は戦死したのではなく…処刑された…?もしそうなら…これは大問題だ…。


 これまで伝えられてきたデュリに関する英雄譚は偽物だったと…そういうことになるのだから…。そして…それを隠そうとしたフィール様…。いったい何があったのか…。


「ふん…事の重大さに気付いたようだな…」


「…くっ…!なら…なぜ生きて…」


「まぁ…我が生き返ったことについては自分でもわからんな…。気がついたとき…こうして生きていた…それだけだ」


 …話が複雑になっている…。偽物の歴史…英雄の大罪…処刑…そして復活…。


 これらを今まとめて思考するだけの余裕はない…。それよりもまずは…


「ルル!ミミ!ここら一体の住民の避難を優先しろ!間違いなく…負傷者が出る!早く!」


「そっ…それは…!」


「ヴォルン様!ヴォルン様は!?」


「俺はこいつの足止めを図る!とにかく急げっ!俺の言うことが聞けないのか!」


「うぅ…!死なないでね!ヴォルン様!」


「ミミ…ルルと一緒に頑張るから!」



 タッタッタッタッタッ…



 よし…これで被害を最小限に抑えられるだろう…。かつての英雄と言われた男相手に…どこまで粘れるかはわからないが…。


 そんな俺の考えを嘲笑うかのように…デュリは鼻で笑うと、口の端を歪ませた…。


「…ふん…自分よりも他人のことを気にするとはな…。そんな考えだからこそお前は弱いのだ…」


「…それが一国を担うものの務めだろう…!」


「違うな…真の王はただ一人立ってさえいればいい…。他の雑魚など使い捨てるものだ…」


「…お前とは話が合わないな…」


「当然だろう…」


 お互いの考えの差違など、この際関係ない…。戦うことに必要ないからだ…。


 俺は民のため…デュリは自らのため…。結果はどうなろうと…俺は最善を尽くす!


「さて…始めるぞ…ヴォルンよ…」


「…!」


 来る…!


 デュリの猛攻に備えて、とっさに身構えた瞬間…



 ドゴォォォォォ…ン!!



「…くっ!」


 俺のいた場所の真下から強烈な衝撃波が…。砕け散った破片が身体中に襲いかかり、所々血が流れていく…。


 その場に留まるわけにはいかない…。瞬間的に移動するべく、羽に力を加えて飛び立つ…。



 バッ…フォンッ…!



 翼を一瞬で広げ、目にも止まらぬ早さで空中へと移動…するが…


「遅いな…」


「…!」


 俺の飛び出した場所にすでにデュリが…。反応したときには、すでに奴の拳が俺の顔面めがけて襲いかかる…。



 ゴッ…グシャッ…!!



「ぐっ!!」



 ドゴォォォォォ…ン…!



 くそっ…!速すぎる…!


 そのまま地面へと吹き飛ばされ、意識が薄くなるギリギリの状態へと追い詰められた…。たった数分…。それだけの時間でここまで戦力差があるとは…!


「…なんだ…我をどれだけ楽しませるか…気にはなっていたが…。所詮はこの程度か…」


「…舐めるな…!」


「ほぅ?」


「たとえ…お前の力には及ばずとも…フィール様の側に立つものとして…一矢報いてやる!」


 俺は倒れた状態から…両手をデュリにかかげると、渾身の一撃を加えるべく…唱える…!


「『レテルギルス』!」


 『レテルギルス』…。フィール様の得意とする必殺技…。この数週間…彼女の指導のもと、必殺技の習得に集中していたのだ…。


 さすがにフィール様の威力には及ばないものの…強力な力を持つことには変わりない。


 距離によってダメージが変化する『レテルギルス』…。この位置ではデュリを沈めることはできないだろう…。


 それでも…俺の…リヴリィア帝国の意地を見せつける…!



 カァァァァァ…ヴォンッ…!!



 禍々しい光を解き放ち…真っ直ぐにデュリへと撃ち込まれる…。奴の顔面へと向かったそれは…間違いなく外すことはないだろう…。


 そう思った俺の予想は…


「ふん…」



 バァン…!



 一瞬にして消え去った…。


 渾身の一撃は、デュリの右腕一振りで消滅…。傷一つつけられていない…。


「そんな…馬鹿な…」


 俺の絶望の声に…さらに落胆したような表情のデュリ…。その口からは期待外れ…と言わんばかりの声色が伝わる…。


「…なんだ…これは…。なんの威力も感じられん…。我のいた時代でもここまで弱い者はいなかったがな…」


「くっ…!」


「いいだろう…手本を見せてやる」


 デュリはそう言うと…自らの両手を広げ、体の前へと移動する…。その瞬間…



 ヴァァァァァァ…!!



「…!?まさか…貴様…!」


「…ヴォルンよ…お前にはメッセンジャーとしてフィールに伝えてもらう。それゆえ…威力は抑えるがな…。もっとも…ここら一帯は一気に吹き飛ぶだろう…」


「やめろ!!」


 間違いない!『レテルギルス』…!それも…俺のものよりさらにどす黒い…!


 このままでは…この付近に住んでいる者達が…!俺の命はどうでもいい…!この国の民達を守らなくては…!


 そう思っても…体が動かない…。そして…その『絶望』が解き放たれる…。


「…『レテルギルス』!」



 ヴォンッ…!!



 邪悪な光が辺りを包み…目の前に広がり…そして…


 俺の意識は途切れてしまった…。

お仕事大変…がんばります…

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