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幕間 吸血女王との出会い

大雨の中…更新です( ´・∀・`)

 タッタッタッタッ…



「…いやぁ…お久しぶりで…。ヴァンパイアの『女王』たるあなた様が…こんなところに赴くとは…」


「…ふん…別によかろう…」


「ハハッ…そうですか…。良い『商品』があれば…いくらでも値切ることもできますよ?」


「…」


 薄暗い部屋…。妙にジメジメとした空間…。陰鬱な雰囲気漂うそこは…まさに裏の世界そのものであった…。


 辺りには鉄格子に閉じ込められたモンスターが…。いや…モンスターだけではない。人の姿をとる魔族の者までいる…。


 ここは…人間が経営している奴隷商…。訳ありのモンスターから魔族を『商品』として売り付ける…最も下卑た市場である…。


 衛生管理の届いていない状態…。よほど価値の薄い者が集めらたそこを…フードを被った少女…そして店主らしき醜い老人が歩く…。


「…さてさて…今日はどうされるおつもりで?」


「いつも通りだ。身寄りのない魔族…モンスター…『同胞』…こちらで『商品』として扱っているならまとめて引き取る…。わかっているだろう?」


「ハハッ…つまらない方ですなぁ…。そんな偽善者極まる行為…まったくつまらない…」


「…」


「おぉ…怖い怖い…これは失礼しました…」


 言葉では怯えながらも…店主の老人はどこか愉快げ…。そんな表情を見て…『少女』…フィール・メルリアーノは不快感を露にする…。


 この頃は…人間を徹底的に嫌っていた彼女だが、奴隷商では手荒な真似はしなかった…。


 下手に暴れて…『商品』となってしまった者たちを、巻き添えにするわけにはいかないからだ…。


 それよりも…不幸な形で堕ちてしまった者をまとめて救済する…。そのためにあえて奴隷商を潰さない…。


 フィールは…そう考えることにしたのである。


 店主の老人は人間だが、お互いには顔馴染み…。最も仲は非常に悪いが、両者の利害が一致しているため特にトラブルもない。


「ふー…さてさて…忙しくなりますなぁ…。とりあえずは…要望通りまとめてお売りいたします…。モンスターが11体…魔族は21人…料金はこちらで…」



 スッ…



 老人はそう言うと、一枚の紙にササッ…と数字を書き…それをフィールに渡す…。


 紙に書かれた値段を確認して…ホンの少し眉を潜めるフィール…。


「…『一人』足りんな」


「おや?」


「この奴隷商には…確かに11のモンスターの『呼吸音』…『鼓動音』が聞こえる…。よほど体力的にも余裕がないな…はっきりとわかる…」


「ほほぅ!さすがは…」


「そして…お前を含めて…『23』人の気配もな…。本来なら『22』人だが…これはどういうことだ?」


 やや…殺気のこもった視線を投げ掛け、理由を問うフィールに…老人はニヤニヤと笑みを浮かべる…。


 あまりにも不気味な表情で…落ち着いた口調を維持しながら説明する…。


「ハハッ…なに…あなたには必要のない『商品』だと思いまして…」


「何?」


「…『人間』です…。それも…幼い少女でして…」


「…『人間』…」


「…モンスターや魔族であれば快く引き取るでしょうが…『人間』を嫌うあなたであれば必要ないのでは?」


 予想外の言葉…。さすがのフィールも次の言葉を口にできない…。


 それを察した老人は、さらにその経緯を付け足すことに…。


「つい先日…同業のものに譲られましてね…。赤茶色の髪を持った女でして…。誘拐したが…どうも『欠陥品』とのことで安く渡したいと…」


「…同業の…そいつも人間か?」


「…本人は人間だと言ってましたなぁ…」


「『欠陥品』というのは…」


「少女は病持ちで…あと数日の命だと…」


「…ふん…人間はどいつも腐っているな…」


「ハハッ…」


 本来なら…ここで話は終わり…。フィールもそのまま…背を向けて帰るべきだったのだが…


 フィールのとった行動は…予想外のものだった…。


「…その少女はどこにいる?」


「…は?」


「なに…興味本意だ。見るだけなら問題なかろう?」


「…はぁ…それは珍しい…。こちらです…」


 老人も…この言葉には一瞬驚くことに…。まさか…あの吸血女王が人間に興味を持つとは…という思いが浮かぶ…。


 そして…それは言った本人であるフィールも同様…。自分でも…なぜ口にしたのかわからない…。


 ただの戯れ…そう自分で結論付ける…。



 タッタッタッタッ…



 さらに奥の奥…。より一層の闇の空間に…鎖に繋がれた『それ』はいた…。


「コホッ…うっ…」


 見るからに病弱な少女…。やや長めの髪の毛は埃ですっかり汚れきっている…。口からは赤い血がホンの少し垂れて…瞳は完全に落ち窪んでいる…。


 もはや…命枯れる一歩手前…。


 これには…さすがのフィールも言葉を失ってしまった…。人間が人間を拐い…結果的に捨ててしまう…。


 あまりにも醜い…そう思うほど…。


「ハハッ…ワシも…ここまでくると胸が痛みますなぁ…」


 嘘…。それなら…すぐに少女を助けるのが先…。それすらしないこの老人も…醜い存在だ…。フィールの心はさらに怒りに燃える…。


 そうしていたとき…


「…ィ…。どこに…」


 少女の口から漏れたか細い声…。一体何を言っているのか…。フィールはさらに耳を澄ましてみる…。


「レィ…会いたい…ゴホッ…!」


「…」


 きっと…誰かを思っての言葉だろう…。会いたい…と…。自らの命尽きるその前に…一目でも…。大切な誰かが…この少女にいるのだ…。


 その時…なぜかフィールは歩を進め、少女の側まで近づいた…。老人も…その行動に疑問を抱く。


「…?どうされました?」


 フィールはそんな言葉を無視して…今にも死に絶えそうな目の前の少女に言葉をかける。老人に聞こえない…小さな声で…。


「生きたいか?」


「…ぇ…?」


「お前の望み…会いたいという思い…そのためなら…どんなことをしても生きたいか?」


「…あな…たは…」


「答えろ」


 有無を言わさぬ迫力ある質問…。少女は…一瞬驚くもすぐにその思いを口にする。


「生き…たい…。レィと会う…そのためなら…どんなことをしても…!」


「そうか…。『人間』をやめることになってもか?」


「…!」


「どうだ?お前の本心を知りたい」


 あまりにも突然の台詞…。『人間』をやめる…という驚愕の方法…。


 それでも…少女の答えは変わらない…。


「それで…レィに…会えるなら…!」


「…決まりだな…」


 そう言うと…フィールは老人に振り向くと、持っていた紙に何やら文字を付けたし…それを渡す…。



 カリカリ…サッ…



「変更だ。この人間もいただく」


「…!正気ですかい?もう…すぐに死にますが…」


「…なにか問題が?」


「…ハハッ…これは参った…。いいでしょう…それでは…再計算いたしますので少々お待ちを…」



 タッタッタッタッ…



 老人は…紙を手にそのまま別の場所へ…。フィールと少女の二人になったその空間…その時…



 スッ…



「…?」


「声を出すな…じっとしろ」


 少女の側にしゃがみこむフィール…。何が起きるのかわからない…という表情をした少女の顔を見ることなく…突然…



 クァッ…ガプッ…!


 

「…!!」


 フィールは…彼女の首筋に歯を立てた…。

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