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異世界召喚 〜リアルすぎるカードバトルを添えて~  作者: 一刻一機
第二章 ~獣人村の異変~
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第二章 〜獣人村の異変〜(6)

執筆時間が……しかし、負けずに続けたいと思います。


「うわああああ!?」

 どんどんと自由落下に身を任せていると、凄まじい速さで落ちていく。

 壁から落ちそうになった際に、城壁から『風の盾(ウィンドシールド)』で浮き上がったため、当初想定していた高さよりも遥かに高い位置から現在落下中である。

 これ本当に『防御強化(ディフェンスアップ)』で耐えられるのか!?

 いや、無理だろう。

複合魔法(コンボ)風の盾(ウィンドシールド)』『大気の壁(エアフィルター)』羽毛布団!」

 うむ。我ながらネーミングセンスがゼロだった。

 だが、複合魔法(コンボマジック)には具体的なイメージが必要不可欠だ。

 俺の中で、ふわっと体を受け止めるものと言えば、とっさには羽毛布団しか出てこなかったのである。

 だが、そのおかげでぶっつけ本番で試した『羽毛布団』は成功したらしい。

 地面に乱気流を起こしつつも、その空気を全て覆い尽くす大気の膜が出来上がっていた。

「ぶふっ!?……ぐっ、痛てててて」

 大量の空気が一気に破裂する轟音。土煙。そして周囲の物が破壊される音。

 大気の膜をあっさり貫通し、中の乱気流で揉みくちゃにされながらも、無事に着地は出来た。

 その代償として一気に解放された乱気流で周辺の物が散乱し、木片などが散らばっている。

 俺の両脚も変な方向に曲がっているが、これぐらいは治療可能な範囲である。

「いたぞ!回り込め!」

「逃すなよ!どこかの国の間者だ!」

 『治癒(キュア)』で骨折を治していると、遠くから複数の男の声が聞こえる。

「ぐっ……ゆっくり治療する暇も無いな!」

 骨は無理矢理つなげられてもいい、痛みはしばらく残る。

 足を引きずるように走っていると、あっさり兵士数人に見つかった。

「動くな!抵抗すれば撃つぞ!」

 鋭い声と光に晒され、俺は動きを止めた。

 かなり不味いな。

 ゆっくりと周囲を見回せば、槍を持った兵士が五人。

 その姿を、空中に浮かぶ十中八九魔法と思われる光源が照らしている。

 逃げれるかーー?

 正直、自身は無い。

 かと言って、現代日本と違って捕縛されても人権が保障される可能性も極めて低い。

 勝手な想像だが、拷問で情報を抜かれて死んだらポイだろう。


「『闇の霧(ダークミスト)!』


 魔法を唱える声が、俺と対峙している兵士達の背後から聞こえた。

 とたんに光の魔法はその効力を弱め、周囲が深夜のこの時間帯に相応しい闇に包まれた。

「な、何だ?!」

「新手か?!」

(誰だ?キリアか?)

 兵士達の声だけが聞こえる中、俺の手を掴む存在があった。

 一瞬キリアが助けに来てくれたのかと思ったが、キリアの手の感触ではない。

(一応、力説(・・)しておきたいが、キリアの手の感触が判断できるのは、組手でボコられたからである。決してスウィートな理由があったわけではない)

 ほとんど何も見えない中、掴まれた手からは焦りから来る強引さは感じるものの、敵意のようなものは感じられなかったため、素直に引かれるまま見知らぬ街を進んでいく。

「王よ。遅参致しまして、申し訳ございません」

 ようやっと街灯の明かりの下で見えた、俺の恩人はいきなり片膝をついて(こうべ)を垂れた。


「は?」


 この反応は失礼ではないと思う。

 一瞬だったが、見えた顔は褐色の肌に薄紫の髪をした、地球で言うラテン系の顔立ちをしたかなりの美女だった。

 そんな美女に、いきなり跪かれて喜ぶドS趣味は俺に無い。

「っ……重ね重ね申し訳ございません!王の御前にあのような不快な輩をのさばらせた挙句、言葉だけで済ませようとは!ここは、直ちにこの素っ首を掻き切り、お詫びに代えさせて頂きたく……!」

「いやいやいや!何言っちゃってんの!?」

 突っ込みどころは山のようにあるが、取り敢えずはいきなり取り出したナイフを全力で取り上げる。

「はっ!?まさか、この卑しい身体がお目当てで御座いますか?私なぞで宜しければ、いつでもお使いいただければ……!」

「だから、あんたは何を言ってるんだ!?」

 さっきはナイフを取り上げ、今度は素早く脱ごうとした服を慌てて戻させる。

 何なんだ、このキリアとは全く別ベクトルに人の話を聞かない女は!?



 ようやっと褐色の美女を引っ張り出し、町外れの一角にある寂れた小屋の中に来た。

 聞けば、彼女が拠点として利用している廃屋らしい。

 廃屋とは言え、それなりに手が施されている様子が見て取れるし、最低限の家具が揃っており特段の不便は感じない。

「さて、色々と聞きたい事はあるけど、まずは礼を言わせて欲しい。結構やばいところだったんだ。助けてくれて本当に助かったよ」

「滅相もございません。王の視界にあのような奴らを入れてしまった時点で、私の不徳の致すところでございます。本来であれば、皆殺しにすべきところで御座いましたが、力及ばず……」

 褐色美女は相変わらず、膝をつき服従の姿勢を見せている。

 ってか、皆殺しって何だよ!言動が危なすぎて、さっさと逃げ出したいところだが、命の恩人ではあるし、現状この街で唯一の味方である。

 そう無碍にもできまい。

「そう、そうそれだよ。さっきからずっと気になってるんだけど、『王』ってどういうこと?」

「おお……やはり御記憶を失われておりますか」

 今度は記憶喪失扱いかよ。

 本当についていけない。

 俺にはちゃんと日本で生きてきた、十六年分の記憶があるぞ?

「我々は司祭の予言に則り、王の御迎えに参りました。その予言とは、『(いにしえ)の赤き王は闇夜の(みやこ)に舞い降りる』と言うものです。そこで、我々は所謂『(みやこ)』と呼ばれるこのゴート帝国の帝都の他、ジジアイナの商都、更に西のイワの海都に手のものを送りこんだのです。流石に海の向こうと、リンドゥールの聖都には人を送れませんでしたが、こうしてここで王を御迎えにできたのは幸いでした」

「いや、俺のどこでその『古の赤き王』って奴になるの?俺は赤くないし、王でもないぞ?」

 しかも『舞い降りる』って厭味か!?

 俺のはただの落下、もしくは墜落である。

「はっはっは。何をおっしゃいますか王よ。いくら記憶を失われても、その直視することさえ憚れる強大な魔力は、王以外ありえませぬ」

「強大な魔力?魔力って眼に見えるのか?」

「ああ、そうですね。眼も普通の人族のモノになってしまわれたのですね。我々魔人族であれば、当然魔力の流れは眼に見えます。普通は人間が持つ魔力程度は、体内で自然消費され見えませんが、王の魔力は溢れかえっておりましたので、暗闇でもすぐにわかりました」

「げっ、俺の身体ってそんな事になってたのか……不味いな。つまり、どうにかしないと俺の存在はどこにいても分かるって事だろ?」

 それでなくても指名手配疑惑があったのに、先程の不法侵入による騒ぎがある。

 かなり暗かったので顔はちゃんと見られていないと思うが、そんな目立つ印(魔力)があるならば、隠れる事もままならない。

「いえ、大丈夫でしょう。この国に魔人族は我等しか居りません」

「ならいいんだけど……それで記憶喪失が当然みたいな言い方もしてたけど、どういうこと?俺は普通に記憶があるぞ?」

「はっ。これも司祭様の……と言うか、昔からある物語でありますが、その中に『魔人の王は、その五体を悪しき天神に砕かれ封印された』とあります。当然に頭部も封印されたそうですので、記憶を失われている可能性は高いと司祭様はおっしゃっておりました。まだ封印の全ては解けていないようですが、ご安心下さい。不甲斐ない子孫で申し訳ございませんが、我等が封印に縛られし御身をすぐに解放してみせます!」

 ううむ。

 真っ直ぐな瞳で俺を見つめてくる。

 どうも俺の異常に多い(らしい)魔力量と、夜の空から舞い降りた(落下した)と言うか事象が重なったため、俺の事をすっかり『予言の王』と誤認したようだ。

 そもそも俺は、こちらの世界の人間ですらないので、完全にこの褐色美女の勘違いだが、訂正する手段もない。

 しばらくすれば、自然と誤解も解けるだろう。

「まあ勘違いだと思うけど、助けてくれるってならそれでいいか……。そう言えば互いに名前も名乗ってなかったな。俺はシンドウミナト。シンドウが姓でミナトが名前だ。ミナトと呼んでくれればいいよ」

「恐れ多くもお名前を頂戴できた上に、お名前を呼ばせて頂けるとは……身にあまる光栄でございます。私めの事はミルドとお呼び下さい」

「わかったよ。早速なんだけど、俺の仲間を探しに行きたいんだ。だけど、きっとまだあちこち兵士が巡回しているだろうし……何かいいアイディアはないかな?」

「はっ!では今すぐ町中の人間どもを皆殺しに……」

「やめろよ!?ってか、何で人探しをするだけでそんな物騒な話になるんだよ!別に変装道具とか、顔を隠すようなものがあればそれでいいんだけど」

「はっ!それではこの魔法でどうでしょうか。『誤認(ミステイク)』」

 ミルドが魔法を唱えると、ミルドの全身に黒い(もや)のようなものがかかった。

 そこに確かにミルドがいるはずなのに、誰か別のような人間が立っているような気がして来る。

「これは?」

「闇属性魔法の『誤認(ミステイク)』です。術者が指定する対象を、他人に誤って認識させる魔法です」

「へえ。それは魔法っぽい魔法だな。じゃ、俺にそのカードを貸してくれるか?」

「はい?」

「ん?」

 ミルドにとても不思議そうな顔をされた。

 俺、何かそんな変な事言ったか?

「王よ。まさか真言(マントラ)までお忘れになりましたか?」

 やっべー、すごい懐疑的な顔をされている。

 あ、誤解が早く解けるなら、それにこしたことはないか。

「そんなこと言われても、知らないものは知らないさ」

「……まあ、いいでしょう。真言(マントラ)とは、魔法を構成する言語です。人族共は、これを理解できるのはほんの一握りと言われていますが、我々魔人族の言語と真言(マントラ)は非常に形が近いため、ほとんどの魔人族は真言(マントラ)を理解し、操る事ができます。人族は内包する魔力が弱い上に、真言(マントラ)を理解できないため、魔法カードのような惰弱なものに頼らなければなりませんが、我々は違います!自前の魔力と真言(マントラ)により、魔法カードなぞに頼らなくても魔法を使うことができるのです!」

「へえ。ってことは今の『誤認(ミステイク)』もミルドの自前の魔法だから、俺は使えないってことか。汎用性や互換性を考えれば、魔法カードの方が優れてるんじゃないか?」

「ぐっ……それはそうかもしれませんが……あっ!魔石とミスリルさえあれば、私が真言(マントラ)刻んでカードを作りましょう!」

「カードって作れるもんなのか!?それはすごいな!」

 という事は、俺が日本に帰るための魔法カードも、見つからなかったら作ればいいんじゃないか?

 これは嬉しいニュースだ。

 はるばる旅をしてきた甲斐があるってもんだ。

「そうでしょう、そうでしょう!」

「じゃあ、さっそく魔法カードを作ってくれるか?」

「……ですから、その魔石とミスリルさえあれば、その」

「つまり、材料が無いのか。あ、魔石なら俺も持ってる奴で使えないかな」

 俺は展開しっぱなしの『窃盗(スティール)』から様々な色の魔石を取り出し、ゴロゴロと机の上に転がした。

「なっ!?お、王よ、これらは一体全体!?」

「ん?聖樹の森で魔物(モンスター)から採ったものだけど?」

「どう見ても、最低でも三ツ星以上の魔石ばかりが……これに至っては見たこともないレベルの魔力を感じますが……」

「ああ、それは双頭狗(ツインハウンド)から採ったやつだな」

双頭狗(ツインハウンド)ですか……普通なら軍が狩るような魔物(モンスター)ですが……さすがは王でございます」

「いや、そう言うのはいいから。で、使えるか?」

「いえ、申し訳ございません。魔石の星数(ランク)は十二分なのですが『誤認(ミステイク)』は闇属性の魔法でして、カードを作るためには同様に闇属性の魔石が必要になります。ミスリルは少量で結構ですので、ここにある魔石を売ってよければ、すぐに手に入ると思いますが、闇属性の魔石は希少(レア)ですので簡単に手に入らないと思います」

 カードを自作できるとドヤ顔だったミルドだったが、今やすっかり意気消沈している。

「まあ、そんなに落ち込まないでくれよ。ミルドが悪いわけじゃないんだからさ。しかし、結局どうするかな……俺がその真言(マントラ)って奴を理解できれば一番簡単なんだろうけどな」

「さすがにそれは……御記憶が戻られれば簡単だとは存じ上げますが、真言(マントラ)は百四十四の音と字で構成されておりまして、一昼夜で覚えられるようなものでは……」

「百四十四文字?めんどくさっ!」

 アルファベットの何倍だよ。

 日本語は漢字を入れれば余裕で百四十四字なんて超えるが、それだけ日本語や中国語は習得が難しい言語として有名である。

「そうです。例えば『誤認(ミステイク)』の一行目は『闇ノ精霊ヨ、我ガ声ヲ聞ケ』と、闇属性を司る精霊に呼び掛ける言葉を、魔法陣の外縁に描きます」

「うんうん」

「最初は何と言ってるか分からないと思いますが……」

「え?わかるけど?」


「え?」


「ん?」

 あれ?また何かやらかした?

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