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異世界召喚 〜リアルすぎるカードバトルを添えて~  作者: 一刻一機
第二章 ~獣人村の異変~
18/29

Story.002 〜VRカードゲーム『神々の遺産』で遊んでみよう〜(2)

やっと引っ越しが終わりましたが、全く開封が進んでいません……


 前回の反省を活かすためにも、やはりデッキの強化を図る必要がある。

 デッキの強化と一口に言っても、色々な手段があるが、やはり一番は召喚モンスターを充実させることだろう。

 攻略サイトにそう書いていたので、きっとそうだと信じたい。


 召喚モンスターの入手方法は、一番簡単なと言うかオーソドックスなもので「カードパック」の購入。次が「クエスト報酬」、もしくは「対人戦(バトル)賞品」。そして「野生モンスターの確保」である。

 野生モンスターとは、試合(ゲーム)中のフィールド上に出現(ポップ)するお邪魔虫で、全てのプレイヤーに牙を剥く害獣のようなものだ。

 しかし、高難易度のフィールドではこの野生モンスターが馬鹿に出来ない程強く、敵の「城」を発見する前に召喚モンスターが野生モンスターに全滅させられる事もあるらしい。

 または、「城」の護衛を疎かにし過ぎたばっかりに、相手プレイヤーと一度も交戦する事なく召喚士(じぶんじしん)が野生モンスターに殺されたと言う笑い話もある。

 そんなゲーム進行上非常に邪魔な野生モンスターだが、実は捕獲しカード化すれば自軍の召喚モンスターとして使用可能になるのだ。

 ただ、試合中のんびりそんな事をしていれば、あっさりと敗北するので、普通はやらない。

 勿論僕もそんな無茶をするはずも無く、今日は「クエスト」に挑戦し、あわよくばクエスト報酬と野生モンスター捕獲の一石二鳥を狙う作戦である。

 クエストには「採取」「討伐」「探索」「攻城戦」「防衛戦」等があるが、今回は「討伐」を行いたいと思う。

 討伐クエストの対象となるモンスターは強いモンスターが多く、野生モンスター以外にもこのモンスターも捕獲を狙う事ができる。

 それに「光属性」や「闇属性」のレアモンスターが出る確率もグッと高まるのだ。



 VRシステムを起動すると、そこはいつもの無機質なブルーの部屋だった。

 空中投影されたパネルを操作し、「討伐クエスト」を選ぶまえに「ショップ」を選択。

 トレーニングモードでこつこつ溜めたポイントと、「無地の召喚カード(火)★★★」を交換した。

 この「無地の召喚カード」が無ければ、召喚モンスターを捕まえることができない。

 しかも、属性毎に対象モンスターの星数ランクに応じたレベルの「召喚カード」を用意しなければならないので、召喚カードを大量に用意するのも至難の業だ。

 まあ、中にはリアルマネーを多額に投じて、あらゆるバリエーションの「無地の召喚カード」を用意する猛者もいるかもしれないが、この「無地の召喚カード」もデッキ規定枚数の上限五十枚に含まれるので、あまり大量にデッキに組み込めば、戦闘行為そのもに支障を来すし、かといって枚数が少なければ、いざと言う時に肝心の捕獲ができなくなる。

 逐一頭を使わされるゲームなのだ。

 今回、僕はポイント数の都合もあり、一枚だけデッキに組み込むことにした。

 

 さて、これで準備が整ったので、いよいよ「討伐クエスト」への挑戦である。

 討伐目標は「火蜥蜴亜人ファイアリザードマン」。

 星数ランクは三ツ星級と、僕のカードが持つどのカードよりも強い。

 本当ならデッキの主力は「火属性」なので、「火属性」に弱い「風属性」を攻めるべきだが、そこは知恵と戦略でどうにかしたいと思う。



「暑い……いや、熱い!?何もここまでリアルにしなくても……」

 火蜥蜴亜人(ファイアリザードマン)の住むフィールドは、「アシド火山」と言う火山の中にあるダンジョンの中だ。

 溶岩があちこちでボコボコ音を立て、熱気が容赦無く汗を拭き立たせる。

 溶岩の炎のおかげで多少は見通しが良いが、完全とは言えず僕の緊張感が否応なく煽られた。

「とりあえず、まずはカードを引くか」

 既にクエストは開始している。

 試合形式ではないので「城」が無く、召喚士(プレイヤー)である僕も、ダンジョンの奥まで進まなければならないのだ。

 このままでは野生モンスターに出会った瞬間死んでしまう。


 最初のカードで「レッドスライム」が出た。

 スライムと言えば雑魚の代表格のような存在なので、些かの不安はあるが「火耐性」を持っているので、「赤芋虫(レッドキャタピラ)よりはマシだと思おう。

 (余談だが、「蟲」特性は「火属性」が弱点である。火属性モンスターなのに火属性に弱いとはこれいかに……)

 

 レッドスライムを前面に出しながら、慎重に進んでいると、目の前に敵が現れた。

「うわぁ!?」

 薄暗くいせいで、本当に目の前に来るまで気付かなかった。

 しかも相手もレッドスライムで、地面をプニプニと転がりながら近づいて来たので、音がほとんどしなかったのだ。

 同じレッドスライム同士なら消耗戦は避けられないだろう。

 まだまだ先は長いので、ここはあっさり勝負を決めたいと思う。

「『火の矢(ファイアアロー)』!」


火の矢(ファイアアロー) 火属性 ★★

威力 ★

範囲 ★

速度 ★★

「矢の形状をした直線上に飛ぶ火の魔法」


 「魔法」カード。

 召喚カードと同様に、二ツ星の魔法カードはコスト2を消費することで、「魔法」を発動することができる。

 今回の「火の矢(ファイアアロー)」は単純な攻撃魔法で、カードを使用した瞬間、僕の頭上から火の矢が飛び出し、レッドスライムが火に包まれた。

「よしっ!」

 幸い、射線上に何の障害物も無かったので、きれいに命中した。

「あれ……?」

 だが、火の中からレッドスライムが燃える様子もなく、ぷにぷにと動いているのが見て取れた。

 そして、レッドスライムは何事も無かったかのように飛び出してきた。

「あっ……そうか!『火耐性』か!」

 僕は大馬鹿だ!

 自分のレッドスライムに「火耐性」があるんだから、敵のレッドスライムだって「火耐性」があるにきまってるじゃないか!

 自分の空っぽの頭を思わず壁に叩き付けたくなるが、どうせ仮想現実(VR)の中なので、無駄な行為である。(痛みは感じるが)

 だが、いくら「火耐性」があってもさすがにノーダメージとはいくまい。

「いけっ!レッドスライム!」

 僕は気を取り直して、レッドスライムをけしかけた。

 敵のレッドスライムも、負けじと体当たりを繰り返す。

 同じ様な赤いボールがぷよんぷよんと体当たりを繰り返すシュールな光景がしばらく続き、遂には僕のレッドスライムが押し勝った。

「おっと……」

 敵のレッドスライムがこちらに転がってきたところを、反射的に避け、僕も数歩後ろに後退したところ……


召喚士プレイヤー死亡。クエスト失敗しました。再度挑戦しますか?』


 僕は、いきなりいつもの無機質なブルーの待機室に戻され、茫然自失していた。

「は?……え?……ええ!?どういうこと!?」

 何らかの原因で、僕(召喚士)がダメージを受けていたらしい。

 『神々の遺産は』リアルな設定が売りのゲームだ。

 モンスターに攻撃されれば死んでしまうが、さすがに転んだだけだったり、包丁で指を切った程度で死ぬと言う話は聞いたことがない。


 落ち着いて記録ログを読み直してみると「地形:溶岩によるダメージが許容量を超えました」と表示されていた。

 「地形:溶岩」?

 全く心当たりがないぞ?

 文章記録(ログ)だけではなく、映像記録を再生すると……

「あ!」

 敵のレッドスライムが転がってきたときに、僕が下がった場所に溶岩があったらしく、映像上の僕が火達磨になっていた……

「む、むごい……と言うか、設定リアルすぎだよ……」


 しかし、その後改めて攻略サイト等を読み返してみると、そもそも特殊地形マップをプレイする際には、対策用のカードを数枚用意する事が好ましいとの事だった。

 今回のような「溶岩」には、「火」ダメージを無効化させる「火属性無効化ファイアキャンセル:火属性★★★★」や、床トラップ全般を避ける事ができる「浮遊フロート:風属性★★★★」や「飛翔フライ:風属性★★★★★★」が必要だとか。

 四ツ星どころか六ツ星のカードって……どうやって手に入れるんだ……



 心が挫けそうになったが、既に「無地の召喚カード(火)★★★」をポイントで購入してしまったのだ。

 ここは、自力プレイヤースキルで溶岩を回避しまくるという荒業に挑戦したいと思う。


召喚サモンレッドスライム、召喚サモン犬亜人魔法使い(コボルトマジシャン)

 肌を刺すような熱気に耐えながら、今度は、慎重にモンスターが二体揃うまで、ダンジョンの入り口でドローを繰り返した。

 じりじりと時間制限の表示に気を付けながらも、ぎりぎりの遅さで火蜥蜴亜人ファイアリザードマンを探していると、例のヤツが現れた。

「おっ、出たな!今度こそ!」

 先程僕の死因になった(決して自業自得とは認めない)レッドスライムが再び現れた。

 犬亜人魔法使い(コボルトマジシャン)の火魔法は、先程と同様に効かないだろうから、普通に二体で袋叩きにしたところ、あっさり完勝。

「お、ラッキー」


 赤面お玉杓子レッドフェイスラドル 火属性 ★

 体力 ★

 魔力

 攻撃 ★

 防御

 素早  

 知性 

 精神

 特性:両生類

 特技:溶岩ダメージ無効

『溶岩の中で一生を過ごす溶岩蛙マグマフロッグの子孫。溶岩蛙マグマフロッグは溶けた鉄をかけても堪えない程熱さに強いが、急な温度変化に弱く、突然常温の水をかけただけでも死ぬらしい。ましてやその子孫ともなれば何をか言わんやだ』


 今のドローで、手元のモンスターが増えた。

 しかも、好都合で溶岩ダメージ無効を持っているので、地形を気にせず動き回る事ができるのため、星数ランク以上の働きが期待できるだろう。

「……」

 ただし、地面の上でぴちぴちと跳ねるだけで動けないようなので、犬亜人魔法使い(コボルトマジシャン)赤面お玉杓子(レッドフェイスラドル)を抱えてもらう。

 そこまで豊富な立体データを用意していなかったのか、犬亜人魔法使い(コボルトマジシャン)の表情の変化が乏しく、その内心を伺い知る事はできないが、何となく嫌がっている気配を感じる。

 一抱えもあるような大きなお玉杓子を無理やり抱っこさせられる、その気持ちは痛いほどわかるが、ここは心を鬼にして我慢してもらいたい。


 3匹のお供と共にダンジョン一階を探索している内に、奇妙な事に気が付いた。

「階段ってどこだろ?」

 むしろ、たかだ一階が広すぎじゃないか?

 攻略サイトによると、火蜥蜴亜人ファイアリザードマンは大体地下3階程の深さに生息しているらしい。

 だが探せど探せども、全く階段が見つかる気配が無く、むしろ野生モンスターの気配さえ消えてきた。

 ただただ黙々と溶岩の吹き出る岩地を歩いている内に、やがて嫌な気配を感じ始めた。

 地面が軽く揺れるような地響きがするのだ。

「ま、まさか噴火でもするのか?」

 活火山の噴火なんてテレビでしか見たことがないが、話に聞く限りでは噴火前には地震が起こるはずだ。

 リアルさを求める限り、そんなものまで再現したのか、最初はそう思った。

 だが、地震と言うには体感的な話だが震源地が浅すぎる気がする。


 それに、何か、生物の唸り声のようにも感じ……?


「……」

「……」

「……」

 スライムやお玉杓子が「唖然とした表情」をするのかどうかは解らないが、間違いなく全員硬直したはずだ。


 僕たちの目の前には、ビルよりも大きい、赤いドラゴンがいた。

「……(静かに後退している)」

「……(ぷよぷよと跳ねるのを止め、岩と同化しようとしている)」

「……(舌を垂らし、死んだふりをしようとしている)」

「……(潜り込む溶岩を探している)」

 さて、どれが誰のアクションでしょう!

 いやあ、人間驚きすぎると声も出ないんだね!

 心の中では絶叫してるのにね!

(こ、これはもしかして六ツ星の赤竜レッドドラゴンって奴か!?でも、何で三ツ星ランクのクエストに!?あ、まさか、噂の希少レアクエストか!?)

 希少レアクエストとは、確率1%未満で発生するというレア級(六ツ星以上)カードが取得できるクエストである。

赤竜レッドドラゴンの迫力が凄すぎてちびりそうだ……デザイナー力入れ過ぎだろう……)

 どうりで周辺に野生モンスターがいないはずだ。

 こんな食物連鎖の超トップにいるような奴が居座っていたら、虫一匹さえ残らず全員逃げ出すだろう。

 もちろん僕たちも、見つかった瞬間即死(ゲームオーバー)である。


 ここで素直に帰ればいいのに、僕は逃げ出す前に「ソレ」を見つけてしまった。

(卵?あの赤竜レッドドラゴンメスなのか?)

 赤竜レッドドラゴンの腹の下には、三つの卵がある。

 一つ一つの卵が、鶏の卵一万個分ぐらいの大きさがあるのではないだろうか。

 ごくりと唾を飲み、手元の奮発して手に入れた「召喚カード(火)★★★」を見た。

 親は六ツ星級だが、子竜なら四ツ星、五ツ星もありえると言う。

 なら、卵なら三ツ星以下の可能性もあるのでは?

(全員カードに戻れ!)

 再召喚には同様にコストが必要になるので、よっぽどの事が無い限り「送還」は行わないのだが、赤竜レッドドラゴン相手に、僕の一ツ星、二ツ星のモンスターが何百匹いようとも無駄である。

 ならば、無駄な物音を立てる危険を排除した方がいい。

 それに、僕の馬鹿に全員みんなを突き合わせる道理も無い。


 いくらゲームだからと言っても、仲間が死ぬのを見るのは嫌なのだ。


 僕は呼吸音さえギリギリまで抑え、そうっとそうっと赤竜レッドドラゴンに近づいていく。

 ゲームとは思えない恐怖と緊張感に耐えきれず、思わずリセットボタンを押したくなる。

 やがて僕は、赤竜レッドドラゴンの腹下に近づいた。

 こうなればもう自棄である。

 どうせ赤竜レッドドラゴンが寝返りを打っただけで、僕は死ぬのだ。

 普通、野生モンスターを捕まえるには、戦闘で相手を死ぬぎりぎりまで追い詰め、モンスターを屈服させる必要がある。

 だが、今回は屈服も何も自我があるとさえ思えない。

 僕は駄目元の精神で腹を括り、召喚カードに野生モンスターを封印するための呪文キーワードを唱えた。

隷属スレイブ!」


 赤竜の卵 火属性 ★★★

 体力 

 魔力

 攻撃 

 防御 ★★★

 素早  

 知性 

 精神

 特性:竜族、移動不可

 特技:

『火属性の中で最も弱い竜と呼ばれる赤竜レッドドラゴンだが、決して油断してはいけない。竜族特有の鋼よりも硬い鱗に、城を押しつぶす巨体。そして空を焦がす火の息(ファイアブレス)。竜族は全ての生物の頂点に君臨する種族である。重ねて言おう。決して油断してはいけない。ただし、孵化できたならば』


「おおおお!?成功した!?」

 あ、思わず声が……

 卵が一つ無くなった異変と、その自分の腹の下で叫ぶ小さな生命体ぼく

 赤竜レッドドラゴンの中では、簡単な計算式ができあがったようだ。

「逃……」

 最期に確認できたのは、赤竜レッドドラゴンが、その大きなあぎとを開いたところだった。

 何をするまでもなく、僕の視界は一瞬でブラックアウトした。



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