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奪還(2)


その乗員たちの中から1人の幹部自衛官が小原2佐の前へと現れた。


「救援感謝する。私は【あかつき】の艦長を務める須川1佐だ」


小原2佐や他のSBU隊員はそれを聞くと須川1佐に敬礼をする。


須川1佐は答礼を返し話し始めた。


「緒官らは特警隊だろう?その格好を見れば判る。救援感謝する」


「いえ、もったいないお言葉です」


そう言うと小原はブラボーチームの小隊長を呼び残りの部屋の制圧を指示し、チームは小原2佐を残し

機関室を後にする。


「須川1佐、現在我々が艦内を制圧中です。まもなく制圧完了だと思われるのですが、制圧完了後速かに艦を動かす事は可能ですか?」


小原は今一度室内を見渡しながら須川に話しかけた。


「ああ、襲撃されて乗員の数名に死傷者を出してはいるが操艦には支障はないはずだ」


そんな会話の中、アルファチームより艦矯制圧の報告が入ってくる。


須川は小原より制圧した区画を聞き、出航準備の為の乗員を配置に就かせるように指示をすると、小原2佐と共に艦矯へと向っていた。


2人が艦矯に到着すると先程まで銃撃戦があったのであろう、硝煙の匂いと血の匂いが鼻をついてくる。


見渡すとSBU隊員らがゲリラの死体を片付けていた。



≪ズドォーン!≫


不意の爆発に驚き艦矯より外を見る須川1佐だが、炎に包まれた港湾施設を見て更に驚きの顔を見せていた。


「陽動作戦で陸自が闘ってくれています!さぁ、急いでここを離れましょう」


と話す小原に


「ああ、すまない!」


と頭を下げ須川は艦内放送のマイクを手にした。


「艦長より各員に継ぐ!出航準備!


 CIC(戦闘指揮所)これから何が起るか判らん!対空・対海上戦闘用意ぃ私も速やかにそちらに行く」


と告げたのだ。



そして小原は須川へと話しかける。


「須川1佐、我々はこれよりこの艦を接岸している舫い綱を外しに行って参ります。艦の機関が始動すればこちらにも攻撃が加えられる可能性があります。


一般隊員ですと負傷する可能性が高いので我々が行きます!操艦の方宜しくお願い致します」


「ああ、そちらは任せる。艦は任せておけ!」


それを聞いたSBU隊員らは小原に大して小さく頷くとまた2チームに分れ、前・後部甲板に付けられいる舫い綱を解くべく走り出していた。







そして話は特機小隊へと戻る。


1号機と2号機が正面ゲートで交戦している頃――――





【5号機】こと【速水2等海曹】は海岸沿いに港湾施設に突入していた。


この【速水】も【沖田】と同じSBU出身でSBU時代は近距離戦闘と白兵戦を得意とした隊員である。

特機へ来てからもそのスタイルは変わっていなかった。



5号機は港湾施設に突入し、停泊中のゲリラが使用してるであろう、旧式魚雷艇や哨戒艇を攻撃する任務を帯びていた。



コックピットのモニターにそれらが次々に映し出されロックオンを示す緑色の四角いマーカーが付けられていく。


爆発に気付いたゲリラ達が甲板へ現れ5号機に驚いている中・・・速水はトリガーを引いた。



砲声と共に吐き出される大きな薬莢が機体のせいで小さく見え、発射炎によりキラキラと輝きコンクリートでバウンドすると海面へと落ちて行く。


その機が片腕で射撃しているこの武器は名を【20式機関砲】と言う。まるで9mm機関拳銃を巨大にしたような形をしているが構造機能は大きく異なり21式専用サブマシンガンで口径は40mmであった。



120mmライフルに比べればかなり小さい口径なのだが、アメリカの攻撃機A‐10や、対戦車ヘリAH‐64の30mm機関砲以上の口径を有しており、戦車すらも撃破可能な砲弾が装填されている。


ましてや目前の艦艇はFRPやプラスティック、厚さ数mmに満たない装甲板なのだからひとたまりも無い。



ある船は船体が真っ二つに、またある船は弾薬や燃料に引火し大爆発を起こし次々に海中へと没していった。




そんな中、5号機のモニターにイージス艦あかつきの船体が映し出され、サブモニターには赤外線映像で機関が始動した事を告げる熱源が捉えられていた。



その事はSBUの傍受無線でも確認が出来き、作戦も終盤を迎えようとしていたのだが・・・




ふと、モニターに目をやると甲板に走り出してくる懐かしい戦闘服姿のSBU隊員らが映し出される。


彼等は舫い綱を解く為に出て来たらしく、甲板から互いをカバーしつつ作業に取り掛かっていた。


だが、イージス艦が機関を始動した事にゲリラも気付き始め艦に向け発砲が始まっていた。





≪ピピッ!ピピッ!≫


突然、21式のコンピューターが自動映像識別により警告音を発し、モニター左隅にRPGを構えるゲリラが拡大表示される。


その後、画面には予測弾道が表示されそれは甲板で交戦しているSBU隊員へと向けられていたのだった。


今までイージス艦やSBU隊員らに姿を見せず交戦していた速水だったのだが・・・


その予測弾道が判ると直ぐにその場所へと向っていた走り出していた。




≪バシューン!≫


その独特の発射音を聞いた小原2佐が叫ぶ。


「RPG!!」


発射されたロケット弾は白い航跡と共に、前部甲板・小原2佐達へ向い飛翔していく。




そして爆発。


爆音と衝撃波を彼等に伝えその場に伏せた小原2佐は辺を確認した・・・


だが、艦や隊員らに被弾した形跡が見られなかったのである。


「何っ!?」


その疑問の言葉を呟きつつ、彼は港の方へと目を向けた。


そこには見た事の無いロボットの大きな背中があり、先程のRPGを受けたであろうシールドらしき物からは黒煙が上っていた。


「なっ!・・なんだコイツは」


「判りません!ただ我々を助けてくれた事は確かです」


唖然としつつもSBUの隊員の1人が小原に答えた。


「そんな事は判っている!俺が言いたいのは、港湾施設で闘っていたのは【陸自】じゃなかったのかって事だ!【陸自】にこんな装備が在るなんて聞いて無いぞ!」



CICのモニターからそれらを見ていた須川1佐や他の海上自衛隊員もその機体に驚き唖然としている中、ロボットの頭部が動き出し・・・7.62mmミニガンが発射された。



吐き出された銃弾が至る所に当たり曳光弾や跳弾がバチバチと花火のように火花を上げながら、RPGを持つゲリラの下へと迫り、その敵の胴体ちぎると倉庫や建物に無数の穴が穿たれ他のゲリラもバリケード越しになぎ倒され制圧されて行く。


そしてそれが終わったその機体からSBUとイージス艦に通信が入った。



「こちら日本国自衛隊・第1特別機動小隊。ここで見た全ての事は最重要機密にあたります!

一切の他言を禁じます!繰り返すします。ここで見た全ての事は最重要機密にあたります!一切の他言を禁じます」



それを聞いた小原2佐が反応する。


「!」


「その声・・・まさか!」


そう言うと小原は無線に特殊部隊独自の周波数とプロテクトのかかったチャンネルに切り替えてロボットへと話しかけた。


「お前、速水!速水じゃないのか?辞めたんじゃなかったのか?


まさか・・・沖田もいるんじゃ?お前らが・・・辞めるなんておかしいと思ってたんだ!SBUに来て自分が守れる者を見つけたって言ってたお前らが」


「隊長・・・元気そうで何よりです。さぁ、時間がありません!早くここを離脱して下さい」


「あ・・・ああ・・・了解した。支援感謝する!」



そう言うと小原2佐や他のSBU隊員らは艦の中へと消えていく・・・


舫い綱が解かれ港を離れるイージス艦を背後に5号機は援護射撃をしながら少しずつ離脱して行った。


それは、通信やモニターで確認している他の機体も同じであった。





本来、特機小隊は他部隊との交信を一切禁じられていた。


これを隊長の許可なく行った速水は何らかの処分を受け、最悪の場合、機密漏洩罪等の罪で刑務所へ入ってもおかしくないのだ。


だが、メンバーの誰もがあの場面に遭遇したら・・・速水と同じ事をしたのであろう。


だから誰もが速水の行為に対して口を出す者はいなかったのだ。


速水も十分にその事は理解しているばずなのである。



港湾施設を離れメンバーが集結予定の場所へ向う中、伊達の通信が各機体に入った。


「速水・・・」


その声に隊の誰もが緊張する。


「・・・次は無いと思えよ。各機、聞いているな。『コードJ248657』を入力!」


「?」


その言葉に隊の誰もが疑問した。


伊達が言ったコードは益田司令と伊達しか知らない戦闘記録を修正するコードだったのである。


「この会話を含む、速水と小原2佐の会話までの全ての記録を削除せよ!」


『「了解!」』


伊達の言った意味を理解した隊員達が一斉に復唱していた。



そして6つの機体は燃え盛る港を後に森の中へと消えて行く・・・









その頃――――



イージス艦【あかつき】のヘリ格納庫では小原2佐が煙草を吸いながら海を眺めていた。


(そうか・・・速水、沖田、お前達は俺の知らない世界でこの日本を・・・いや、自分の守るべき者を守っていたんだな。あの頃と変わらぬ思いで・・・ありがとう!速水、沖田。この借りは必ず返す!だからそれまで絶対に死ぬんじゃないぞ!絶対に・・・)


そう思いながら煙草を海へ投げ捨て小原は、格納庫を後にした。







同時刻―――


≪ピッ!ピッ!≫


「なんだ?」


ここは集結地・・・港湾施設より北西に10km進んだ海岸沿いの林の中。


先程の作戦が終り、一番最初にこの場所に到着した3号機のモニターから流れる電子音・・・

それに気付き確認する工藤の目には僚機を示す5つの光点と、北より迫る2つの光点が映し出されていた。


(こんな所を航空機が・・・?)



そう思いつつキーボードを操作し機体の分析を始め出す工藤・・・・





その光点が新たなる闘いの幕開けになろうとは・・・この時誰もが想像する事が出来なかった。


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