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暗躍(上)②


同時刻-―――


栃木県・宇都宮・東北自動車道


某パーキングエリア


ここに一台の大型トレーラーが停車していた。


荷台には【JP貨物】と表記された大型コンテナが載せてあり一見どこにでもある業務用

のトレーラーなのだが・・・


この車両は防衛省情報部が所有する偽装指揮分析車であり、遠山1尉以下数名の隊員が

乗車し様々な情報と格闘していたのだ。



そこへ緊急を告げるコール音が車内に鳴り響き、設置された大型ディスプレイに発信者の

名前が表示されていた。


「阿部1曹からです!そちらに回します」


オペレーターの1人がそう告げると遠山は目前にあるインカムを付け、それに答えた。


「私だ、何があった?」


「現在、危惧していた謎の襲撃者の攻撃を受け特機小隊のメンバー全員と共に十和田湖方面

へと待避中!至急応援要請願います」


「なに!?判った。直ちに応援を回す。なんとしても持ちこたえてくれ!」


「了解しました!」



交信を終えた遠山はそのまま防衛省情報本部へと電話を繋いでいた。


「遠山です、例の組織の一部と思われる一団が動き出しました。現在、特機小隊を襲撃中!至急応援部隊を回す為、緊急特例処置C号発令許可を願ます!」



緊急特例処置C号とは・・・法改正により新たに設けられた制度であり、従来の自衛隊の行動制限や許可権者の制限を緩めた物であり、幕僚長の許可により一部の部隊を動かせると言う物だった。


しかも情報部は情報本部長の許可があればそれが適用される。


岩塚は遠山の切迫した声を察知し、直ぐに返答する。


「緊特C号発令を許可する!本部長には私が言ってくる。派遣部隊は君に一任!速やかに行動に移ってくれ」


「了解です」


通信を終えた車内は慌ただしく動き出し、それまで作業していたモニターの画面は、青森地区の衛星写真や各部隊の情報へと切り替わて行く。


その画面を見つめながら次々にオペレーターへと遠山は指示を出す。


「よし。まず八戸にある第2対戦車ヘリ隊にスクランブル要請!AH-2にミサイルやロケット弾は搭載せず、機関砲弾を詰め込んだら直ぐに向かわせろ!」


「了解!」


「次、弘前にレンジャー訓練で向かっている第9飛行隊のUH-60改2機に連絡。39普連の小隊を完全武装にて搭乗させ、それも向かわせろ!尚、青森県の警察や消防・関係機関にも防衛省として通達を出し情報収集に勤めよ!」


そう言い終えた遠山は表示される情報に目を向けながら席へと腰を降ろし阿倍から発せられるGPS信号の光点と八戸より飛び立った2機のAH-2の光点を見詰めていた・・・






その頃―――


特機小隊を乗せたマイクロバスは猛スピードで十和田湖方面へと向かっていた。


車両は平日と言う事もあり車の流れは少なく、次々に一般車両を追い抜いて行く。


通信を終えた阿部はGPSが作動している事を確認しながら追跡が無いかを確認する為に後ろへ目を向けた。



だが・・・3台の中型ワゴンがマイクロバス同様に一般車両を追い抜き接近して来るのである。



「チッ」



舌打ちをした彼は、拳銃にサプレッサーを付けると窓を開け迫りくる黒塗りの先頭車両のフロントガラス目掛け発砲した。



武器を所持していない小隊メンバーが見守る中、阿部の発射した弾丸は全て弾き返された。


「防弾ガラス!」


と海野が呟く中、そのワゴン各車のサイドドアが静かに開閉し、車内からシールドに覆われた固定銃架が姿を現した。


「偽装戦闘車!?あれは・・・ラインメタルMG3」


兵器に詳しい工藤がそう叫んだ時、ワゴンからの発砲が始まった。



約1,150発/分で発射される7.62mm×51 弾がマイクロバスに襲い掛かる!


バキバキと車体が唸りを上げ全員が咄嗟に身を屈めるも、1発の弾丸も貫通する事は無かったのだ。


「!?」


皆が真っ白になった後部ガラスを見詰める中、阿部が口を開く。


「安心して下さい。この車も情報部の特殊車両なんです」


そう言いながら運転席の横にあるパネルを操作する。


すると、天井から防弾板が現れ全ての窓を覆い隠したのだ。


「やたら天井の低いバスだと思ったらこんな仕掛けが・・・」


驚きながら運転を続ける原の脇を離れた阿部は、バスの中央へ来ると座席を上げ床のパネルを開く。



ワゴンからの発砲が続く中、開けられたパネルの下からは武器・弾薬・ボディーアーマー等が姿を現した。



それに気付いた小隊メンバー各々が速やかに自分に合った武器を装備していった。


全員が武器を装備したの確認した伊達は彼等に一喝する。


「発砲はまだするな!」


「何故です!このままじゃ・・・」


そう言う阿部に伊達は振り向き


「周りを見るんだ!ここは一般道だぞ。我々が今、反撃したらどうなる?民間人に被害が出るのだぞ!それを考えろ!」


伊達の言葉は正しかった。


すでにワゴンからの発砲により3台の民間車両が事故を起こしていたのだ。



「しかし、このままでは。いくら防弾とは言えこちらが持ちません!」


焦りの表情を見せる阿部に伊達は話を続ける。


「原!大きい道路と民家から離れる。山道か人の居ない道へ移動しろ」


「了解です!」


原は上唇を舌で軽くなぞると、カーナビに目を向けハンドルを切りアクセルを踏み込んだ。


車はタイヤを浮かせながら2又の道を右へと入り進んでいく。


追跡者は必要以上に発砲を繰り返し、特機小隊に反撃の隙を与えない。


「阿部1曹。対装甲用の武器は無いのか?」


追跡者の攻撃に苛立ちを見せる遠藤はそう問いかける。


「残念ながら、この車両に搭載されているのは手持ちの武器だけです。この車両はそう言う目的で運用されていませんので・・・」


申し訳なさそうな表情を見せる阿部。


追跡して来る車両からの発砲は以前続いていた・・・












その頃―――


八戸にある第2対戦車ヘリコプター隊の2機のAH-2は情報部に示されたGPS信号を頼りに増援へと向かっていた。


AH-2は、従来のOH-1観測ヘリを攻撃ヘリに転向させた機体であった。


性能と対弾性を高めアパッチと同等の能力を有した純国産の攻撃ヘリであった。


急の要請で1200発の30mm機関砲弾を満載し飛行する2機のヘリの眼下に支援目標である小型バスが飛び込んでくる。


「こちら2対戦ヘリ、リーダー機アルファ1。目標を視認!指示を求む」


「こちらIHQ(INTELLIGENCE HEAD QUARTERS・情報本部の略)現在避難中の小型バスを妨害する全ての目標を無力化せよ!ただし、民間人への被害は出さぬ様、細心の注意をされたし」


「アルファ1了解。これより支援を開始する」


そう答えた2機のAHー2は目標へと降下を開始した。


1機は道路に沿って低空を、もう1機はそれを援護すべく高度を少し上げバスへと接近して行った。


銃弾が車体に当たり異音を上げる車内、その小隊メンバーの耳にヘリのローター音が聞えて来る。


「胴体に日の丸。陸自のAH-2!増援です」


嬉しそうに装甲の隙間から上空を見上げる阿部。


追跡者もそれに気付きバスに向いていた銃口は一斉にヘリへと向けられた。


吐き出される銃弾!


日中でも確認出来る無数の曳光弾がヘリへと吸い込まれて行く。


だが・・・重装甲のヘリに機関銃弾が効くはずも無く。


少し距離を置いたヘリの機首に取り付けられている照準装置が発砲を繰り返す先頭のワゴン車へと向けられた。


連動した機関砲の砲口も当然その方向へと指向し、前席のガナー(射手)はトリガーボタンを握ったのだ。

 


戦車すら破壊可能な機関砲・・・その重く響く砲声と着弾の火花を散らし無数の弾丸が先頭車両を突き抜け、アスファルトに穴をあける。


バラバラになりながらガードレールにぶつかり炎上する1台のワゴン。


それを回避した残り2両の車両だったが・・・その車両も上空からの攻撃に耐えられるはずも無く、あっという間に火だるまになっていったのである。


それをバックモニターで確認した原は自然とアクセルを緩めていく。


ヘリは以前バスの上空護衛をし、車内では歓声が上がると共に胸を撫で下ろす一同だったのだが・・・











それはつかの間の喜びに過ぎなかったのだ。



歓声を消すかの如く突然の爆発音が木霊する。


上空を見上げると大きな火の玉と降り注ぐ無数の破片がそこっひはあったのだ。


それは――――上空を警護していたAHー2の変わり果てた姿だったのである。


寮機を失ったアルファ1はすぐに状況を確認するべく高度を上げた。





その彼らの視界に黒い航空機が映る。


「あれは・・・」


機長がそう口にした直後、アルファ1は、回避行動に移ったのだが――――





それが彼らの最後の雄姿となろうとは・・・誰もが想像していなかった・・・

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