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暗躍(上)①


メキシコの戦闘から1週間・・・


機体の損傷は思いのほか激しく機体整備員や専門家まで動員し日夜、機体の修復に励んでいるものの・・・21式の修復のめどはたっていなかった。



防衛省からの情報によると・・・メキシコで攻撃して来た米軍部隊は特機小隊が離脱後に何者かの攻撃により全部隊が壊滅、米政府自体がその行動や原因を追求しているとの事だった。






都内某所―――【防衛省・情報本部】


ここは防衛省の一部の人間しか知らない、自衛隊の情報の全てが集まる秘密機関の心臓部である。



その一室にて―――2人の男が小さな応接用のソファーに腰を掛け言い争っていた。


「是非、私に調査させて下さい!」


「いや・・・危険過ぎる。今月に入ってもう5人も殉職してるんだぞ!」


「だからこそ!行かせて欲しいのです。志し半ばで散った部下の為にも・・・」


会話をしているのは、情報2科に所属する情報科長・岩塚1佐とその部下である遠山1尉であった。


彼等は特機小隊の参加した全ての作戦について情報を収集・分析する科に属しており、特に南アフリカの作戦以降に暗躍する数名の人物の追跡調査を実施していたのである。


しかし・・・その調査に向かった彼等の部下2名と連絡員1名、協力した某国内潜入員2名が殉職していたのだ。


「危険なのは重々承知しております!私と選抜メンバーで望ませて下さい。何かとてつもない事が起こる気がしてならないのです!」


「・・・・・・」




しばしの沈黙の後、岩塚は決断を下す。



「・・・判った。許可しよう。ただし・・・関係各位には連絡はしない。これを知っているのは君と

 君の部下それと私だけと言う事だ」


「有難うございます」



「・・・うむ・・・後、全員に武器の携帯許可を出す。決して命を粗末にするな。生きて帰ってこい!」



「了解しました!」


そう言うと彼は敬礼をし足早に部屋を出て行った。







その頃――――


新潟県‐佐渡島

第1特別機動小隊基地


ブーリーフングルームに集められた小隊メンバーを見渡しながら伊達は基地司令の命令書を読み上げていた。


「え~本日から1週間、私を含め小隊全員に特別休暇の許可が出ている。久々の休暇だゆっくり休んで来い!」


そう話すと小隊メンバーの歓声が部屋の中に響き渡る。


「こら!新隊員じゃないんだ場をわきまえろ」


伊達の一括によりその場は収まりさらに伊達は話を続けた。


「尚、判ってると思うが定時連絡と異常の有無の報告は支給されている端末で逐次送信するように。緊急招集の場合は最寄の空自基地か陸自のヘリ隊の基地へ行き直ちに帰投せよ。以上解散!」


小隊メンバーは伊達に敬礼すると部屋を後にする。


伊達はその事を基地司令の益田へ報告し終えるとロッカールームへと足を運んだのだ。



ドアを開けると何故かそこに帰ったはずのメンバー全員が腰を掛けており、伊達に気付いた全員が彼に敬礼をする。


答礼を終えた伊達は


「なんだお前ら?もう島を出たのかと思っていたのだが?」


と呟いた。


「それなんですが・・・隊長?良ければこれから皆で温泉旅行を計画しているのですが、ご一緒いたしませんか?いきなりで失礼なのは承知しているのですが私もさっき誘われたばかりでして・・・」


と、遠藤は言葉を濁す。


伊達はその誘いを快く受けメンバー全員で急遽、温泉旅行へと行く事となったのである。











それから数時間・・・


C-2輸送機が降り立ったのは航空自衛隊三沢基地。そこからヘリで青森駐屯地へと飛び、レンタカーを借り走る事50分、ここは八甲田連峰の山麗に位置する温泉地・・・温泉宿泊施設はこの1軒だけと言うまさに秘境といえる温泉宿に彼らは到着する。


國村3尉の出身地であり、原2尉が三沢基地で勤務した際にここに1度足を運んだ事があると言う理由から彼等はここを選んだらしい。


そして・・・一行は案内された部屋へ荷物を置くと一目散に浴衣に着替え温泉を目指す。


青々とした八甲田の大自然を満喫しながら、戦いの疲れを癒す小隊のメンバー達。平和だと実感するひと時を個々に楽しんでいく・・・


その後はお待ちかねの夕食であり部屋には豪華な山の幸、海の幸が並びその味に舌鼓を打つメンバー達・・・


グラスを片手にその隊員達の顔を見るのが伊達にとって何よりのご馳走なのだ。


「隊長!グラスが止まってますよ」


そう言い寄って来たのは海野准尉だった。


かなり飲んでいるらしくその顔はすでに真っ赤になっていた。


「おいおい!いくらなんでも飲み過ぎなんじゃないのか?」


「そんな事はありまへぇん!」


「呂律が回ってないじゃないか。國村!なんとかしてくれ、バディーだろ!」


困った表情の普段と違う隊長の一面を見た隊員らは大いに喜びそして夜は更けていったのだった。








翌日


昨晩浴びるほど飲んだ彼らだったが、ケロッとした表情で何事も無かったかの様に手配した2台のレンタカーに分乗し八甲田の観光をするべく旅館を後にする。


車は一路、十和田八幡平国立公園を目指し進んで行く。


国道394号線を北上し城ヶ倉渓流を越え右折、八甲田ホテルにチェックインを済ませると雪中行軍遭難慰霊碑のある場所へと車を走らせる。





そんな中・・・


「隊長・・・気付いてますか?」


と2台目の助手席に乗っていた遠藤が急に話し出した。


「ああ・・・3台後ろだな」


「はい。上手く尾行しているつもりでしょうが・・・明らかに我々を追跡していますね」


その言葉に、運転する原と國村の表情は変わった。


「尾行ってどう言う事です?私達なにか悪いことでも・・・」


「國村、それは違うぞ。俺達が特機のメンバーだから付けられているのだと思う」


「多分そうだろう・・・まさか他国の情報機関じゃ?」


「遠藤、それはまだ判らんが・・・確認する必要があるな」


伊達がそう言うとメンバーはコクリと頷き、前を走っているメンバーには盗聴を恐れあえて本当の事は言わずに目的地を八甲田ロープウエイへと連絡し目的地を変更したのであった。






それからしばらくして目的地に着くと、何事も無かった様に振舞うメンバー達はロープウエイへと乗り込んで山頂を目指した。


そこ最中に残りのメンバーにもその事を伊達は告げたのだ。


追跡者は多分次のロープウエイで来るのだろう・・・彼らはその事を見越して行動に移ったのだ。


20分後・・・


案の定、追跡者はその便で山頂の展望台へと姿を現した。


伊達は1番目立つ所で5人のメンバーと観光を楽しむ振りをする。


「?」


追跡者の1人がメンバーの2人が減っているのに気付き一瞬辺りを確認する。


だが、時すでに遅く2人の追跡者の背後には遠藤と速水がその2人の動きを止めていた。


確保した2人の追跡者を人目に付かぬ様、林の中へと連れ込んだメンバー達は慣れた手つきで2人のボディーチェックを開始する。


すると9mm拳銃が姿を現し遠藤が


「これで言い訳はできないぞ!さぁ話して貰おうじゃないか?」


とその拳銃を突きつけ問い詰めるた。


すると今まで沈黙していた一人の男が渋々喋り出す。


「我々は・・・防衛省・情報部作戦2科に所属する【阿部 隆】(アベ タカシ)1等陸曹と【川村 慶太】(カワムラ ケイタ)3等陸曹です。非礼ではありますが・・・ある人の命令であなた方を尾行するよう命を受けています」


と話すのだ。


伊達は速水から手渡された身分証明書が本物である事を確認してそのまま彼らに手渡した。


「速水!拳銃を返してやれ」


「しかし隊長・・・こいつらの事信用するんですか?」


「ああ、身分証明書も本物だし職務上これ以上詳しい事は聞けないだろう。我々がそうな様に彼らも仕事なんだ。遠藤!速水!彼らに拳銃を返すんだ」


そう言うと渋々2人は拳銃を彼らに返納する。


「申し訳ございません」


そういいながら頭を下げた阿部は足早にロープウエイ乗り場へと向かっていった。


「隊長・・・最近の作戦といい今の情報部といい・・・我々の知らない所で何か起こっているのではありませんか?」


そう話す遠藤と心配そうにメンバー全員が伊達を見つめる。


「ああ、それは薄々感付いて居たのだが・・・我々に詮索は必要は無い。唯でさえ危険な任務に付いている我々が余計な事に首を突っ込んで何になる!今日の事は忘れるんだ。いいな!」


と言いメンバー達も山を下る事となったのであった。








その頃・・・




八甲田ホテルの地下駐車場に1台の大型トラックが入り停車した。


ホテルへの納品の車だと思われるその車は停車すると、荷物の積み下ろしをするわけでもなくそのままエンジンを止め運転席の男は荷台のドアを開けると中へと消えていったのである。



一方、特機メンバーは場がしらけた為に宿泊先である八甲田ホテルへと戻り各々の個室で休息を取っていた。




その地下では・・・先程の男が電話でなにやら指示を受け、その電話を切るとニヤリと笑美を浮かべながら口を開いた。


「指令だ・・・各員、作戦開始。特機小隊全隊員を拉致セヨ!」


その言葉と共に謎の集団がトラックから這い出し行動を開始した。





八甲田ホテル―――地下荷物搬入口


そこで入り口を監視する警備員の目に黒ずくめの男達の姿が飛び込んで来る。



「おい?止まれ。ここで何を・・・・」



静かな発射音と共に壁に血の花を咲かせた警備員はその場に倒れ絶命した。


それから謎の男達は警備室と書かれたドアを蹴破ると、モニター監視員全員をサプレッサー付きのP90で撃ち殺した。


そして非常階段から特機小隊の宿泊している部屋へと駆け上がって行く・・・






同時刻―――


≪ガタン!≫


ベットの上で考えていた伊達の部屋のドアが勢いよく蹴破られた。


それに気付いた彼は直ぐ様飛び起きて身構える。


そこには先ほどロープウエイで会った阿部1曹が拳銃を手に立っていたのである。


「奴等が動き出しました!ここは危険です。速やかに他の隊員らも連れこのホテルから退避願います!」


その突然の言葉に驚くも彼の目に嘘は無く、切迫した状況だと判断した伊達は彼と共に他の隊員達の部屋を回って行く。


そして特機小隊の全員が廊下に出ると非常階段のドアが開き、黒尽くめの集団が姿を現した。


「皆さん。目を瞑って下さい!」


そう言いながら阿部はその黒尽くめの集団に伊達も見覚えのある物の投げつけた。


閃光と轟音!阿部が投げたのは特殊部隊で使用する閃光手榴弾であったのだ。


「ぐわぁ!」


廊下に転げまわる謎の集団を後にし阿部1曹は特機小隊の全員を誘導する。


そしておもむろに窓を叩き割るとそこから外へと飛び降りたのである。


「!」


「な、ここは3階だぞ!」


そう言って下を覗く原の先には・・・消防で使用される高所脱出用のエアーマットが川村3曹によって広げられていた。


それを確認した彼等も次々にそのマットへと飛び降り用意された小型バスへと乗り込んでいく。


そして原が運転席に付き最後に川村が乗り込もうとした時・・・


フラッシュバンから回復した黒ずくめの音男達から銃撃が加えられたのだ。


「うっ!」


背中から血を流し地面に倒れる川村。彼を助けようと遠藤が手を伸ばす。


「駄目です!車を出して下さい。早く!」


そう叫びながら阿部は遠藤を車内に押し込みドアを締めた。


「しかし、彼が!」


「奴等の目的はあなた方です。彼の行動を無駄にしないで下さい!」


目に涙を浮かべながら話す阿部に原はアクセルを思い切り踏み込み車を走らせた。





そして猛スピードで走るバスの中で阿部は袖で涙を拭うと胸のポケットから衛星電話

を取り出しコールボタンを押したのだ。


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