崩された条約(2)
曳航弾が飛び交い爆発が闇を照らし出すメキシコの地で――――
戦闘は激しさを増し特機小隊も苦戦をしいられていた。
今まで交戦して来た敵とは訳が違い完全武装のアメリカ正規軍。被害を出しつつも彼等、特機小隊を追い詰めて行く・・・
林縁より2機の【AH‐1Wスーパーコブラ】が飛び出し20mm機関砲が唸りを上げた。
「クッ!陸軍の次は海兵隊か!」
そう言いながら機関砲弾を回避する2号機は1機のコブラに右アームを伸ばすと同じ20mm機関砲で反撃した。
残弾カウンターが物凄い速さで減り夜空を曳航弾がかけ昇って行く。そしてその先にあるコブラを火の玉へと変貌させた。
だが、そのまま黙る敵では無くもう1機のコブラは散って逝く僚機から距離を取り、70mmロケット弾を全て2号機へと吐き出した。
無数の航跡が林の中に吸い込まれるように伸びていき紅蓮の大輪へと変貌する。
その爆煙から飛び出して来る2号機に驚くパイロットがすぐにTOWを発射しようとするのだが・・・
6号機から発射された近距離地対空誘導弾を後方より受け、夜空に大輪の炎を描き爆音と共に散って逝く。
「助かったよ」
「礼なら帰ってからにして!今は敵に集中しましょう」
「了解!」
そう言いながら2機は戦線へと戻って行く。
その頃―――
3号機も小隊へ合流し戦闘を続けていた。
「105mm砲の残弾60!このままじゃあっという間に丸裸になっちまう!」
原はそういいながら回避運動と射撃を続ける。
「これは!?」
そんな中、工藤が何かを発見し呟いた。
「どうした?工藤1曹!」
「LCAC-1(エルキャック) エアクッション型揚陸艇を発見!近くに輸送艦か強襲揚陸艦があると思われます」
「どうりで数が減らないはずだ・・・よし!」
そう言うと原は無線を開く。
「特機3から1号機!」
「海岸にLCAC-1 揚陸艇 を発見。近くに輸送艦もしくは強襲揚陸艦がいると思われます!現状を打開すべく、その艦の撃沈を具申します」
「!」
伊達はその報告に迷っていた。
輸送艦にしろ強襲揚陸艦にしろ、かなりの数の人員が乗艦してるに違いない・・・それを攻撃するとなるといったい何人の命が失われるのだろうか?
だが、伊達は遠藤に話した自分の言葉を思い出す。
(6人の命の為に・・・これから何人の屍を築く事になろうとも俺は部下を守りたい!)
そう思った伊達は無線を開きうずしおへと連絡を始めたのだった。
「特機1より※SS01」(※うずしおのコールサイン)
「こちらSS01!どうしました?予定回収時間を過ぎています」
すぐに通信兵が無線に答えた。
「緊急事態発生!現在米軍と交戦中。急ぎ艦長に繋いでくれ」
「了解。艦長に回します」
「特機1、聞いてたぞ。何があった」
伊達は近藤1佐に今までの事を話し・・・敵艦の撃沈を具申する。
「・・・了解した。多分我々の回収地点近くの海域にその艦が居ると思われる。特機隊は回収地点デルタを変更!当初の回収地点を目指せ。敵艦攻撃後、速かに回収する!」
「特機1了解。幸運を」
「まかせろ。そっちも頑張ってくれ、死ぬなよ」
そう言うとうずしおは敵艦の捜索へと向って行く・・・
伊達が交信を終えると休む暇無く警報が機内に鳴り響いた。
戦場で【生存】すると言う事は【殺す】と言う事になる事を感じながら・・・・
同時刻―――
空から轟音が響きわたり、無数の曳光弾と砲弾が大地に向かい降り注いでいた。
そこには月明りに照らし出され鈍色に輝く寸胴な機体の航空機・・・
アメリカ空軍―――ガンシップ
【AC‐130Uスプーキー】が上空を旋回しながら5号機へ向け105mm榴弾砲と40mmボフォース砲の発砲を繰り返していた。
その降り注ぐ砲弾の雨をジグザグに回避する5号機。
本来なら6号機による対空援護を受けられるのだが、目標の数が多すぎ小隊全てをカバーできずにいたのである。
さらに5号機は先の爆撃により、モニター及び各種計器類を破損していた為に反撃もままならないまま、回避運動を繰り返していた。
バルバリと周囲の木々が弾け飛び、爆風が機体を揺らしHUDのモニターにノイズを走らせる。
ヘルメットからは汗がにじみスティックを握るグローブもベタベタになりながら回避の時に生じる
横Gと彼は戦っていた。
「!」
そんな中、不意に空からの砲撃が止まった。
林から抜けた5号機の側方に生きている数少ないセンサーが反応し彼は視線を向けていた。
そこには待ち伏せた戦車がいたのである。
「しまっ・・!」
そう言いかけた時!5両のエイブラムスの砲腔から一斉に砲弾が放たれた。
曳航剤が大気に航跡を描きながら5号機へと集中する。
そしてそのHEAT弾は目標を見事に捕らえ爆炎と粉塵が機体を覆うのである。
「殺ったか?」
「ああ!手応えはあった!」
そんな米兵の会話の中、粉塵が徐々に晴れていく・・・
微かに何かが動く感じがしたかと思われた時、その煙の中から巨大が跳躍する。
上空より無数のオレンジの閃光が現れ2両の戦車の装甲をまるでダンボールの様に貫き、積載された砲弾を誘爆させた。
「なっ!」
そう言いながらも回避の為に全速後退をかける戦車だが・・・
不意の側面からの120mmの射撃を受け瞬く間に大破したのである。
燃え盛る戦車に照らされながら現れたのは・・・4号機だった。
沖田は直ぐに無線を開き呼び掛ける。
≪ピッ!≫
「5号機!大丈夫か?応答しろ!」
本来通信を開くとHUDにパイロットの顔が映し出されるのだが、そのディスプレイには砂嵐のようなノイズだけが映し出されさらに沖田の気持ちを焦らせていた。
その呼び掛けを傍受している小隊全員が同じ気持ちで5号機からの応答を待っていた。
先程撃破した3両のエイブラムスの横を抜け、約50メートル先で大破している戦車を視認した沖田は警戒しながらその方向へと向かって行く。
各機体にはGPSが内蔵されており5号機の大体の位置は座標としてモニターに表示されてはいたのだが・・・戦闘中でもあり直ぐにその場に行く事が出来なかった。
先程まで攻撃を加えていたAC‐130も6号機の放った中距離地対空誘導弾により無力化され、空の脅威は下がっていたのだが・・・まだ多く敵地上部隊がいると思われ沖田も警戒しつつ慎重に行動していた。
すると、4号機のモニターに5号機の機体を捉えたマーカーが表示され沖田はそのパネルをタッチし画像を拡大すると呼び掛けた。
「5号機!応答しろ!5号機!!」
そう言いながら機体へと駆け寄る4号機
そこには、跳躍したのだろうか?大地に大の字で機体の3分の1を埋め大の字になる機体が横たわっていた。
「ピッ!ガガッ!ガッ・・ぐっ・・こちら・・5号機!4号機!聞こえます・・か?」
「ああ!聞こえるぞ!無事なんだな?」
「はい、反撃をした際にシステムダウンを起こし、たった今復旧した所です。支援感謝します!」
「本当に大丈夫なのか?」
「はい、計器類の破片で多少切り傷はありますが問題ありませんただ・・・
機体のダメージが著しく、これ以上の戦闘は困難です」
「了解した!集結地点はもうすぐだ。俺が先行するから離れるなよ」
そう話しながら5号機の機体を起こしつつ左腕に取り付けてある一際大きなシールドに目をやった。
バチバチと火花をあげ使用不能となったそのシールドは・・・
SBUを守った時に使用した盾でその時はRPGを防いだのだが、今回はそれよりも強力な120mm砲弾数発を防ぎきり速水を守ったのである。
21式の装甲は軽量化された新型複合装甲なのだが、120mmの直撃に堪える事はほぼ不可能だった。
だが、このシールドには秘密があったのである。
それは【電磁装甲】と言いどの国でも実現していない新技術の1つである。
APFSDS弾やHEAT弾に対抗するべく開発された反応装甲の一種で従来の爆発反応装甲と違い強力な磁力により砲弾の効力を無力化する。
詳細は防衛秘である為、詳しくは書けないのだが21式から生み出された膨大な電力により可能となった物だった。
沖田はそのシールドに感謝しつつ、集結地点に機首を向け歩き出す。
5号機も立ち上がり後へと続いた。
そう、集結地点へと向けて・・・




