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ゴールデンウィーク-1

巷では大型連休なんて言ってるけれど。

ここだけは別、宅パパは仕事だし如月パパと海はラブラブだしどこにも行かないのかなぁ。

なんて思ってたら旅行に連れて行ってくれることになったんだけれど……

またトラブルだらけ私にも責任があるんだけれど海はもっと大変な事になちゃうの。


「久しぶりにゆっくり出来るな」

「そうだね、いろんな事があったからね」

遅い時間に起きて、隆羅と海はゆっくりとした時間をベッドの中で過ごしていた。

「誰かさんのおかげでテストも仕上がっているしな」

「いじわる」

海が隆羅に背を向けた。

「感謝しているんだぞ、こうしてゆっくり出来るんだから」

後ろから隆羅が海を抱しめる。

「ねぇ、隆羅」

「なんだ?」

「もう少しだけ、その……」

「どうしたんだ、海」

「キスだけじゃなくて大好きだから」

「海がいいのなら構わないけれど、後ろで仁王立ちしている奴がなんて言うかな」

「ええっ?」

海の顔が真っ赤になり隆羅の後ろを恐る恐る見るとルコが怖い顔をして立っていた。

「ラブラブな所悪いんですけれど」

「悪いと思うなら出て行ってくれ」

「むかつく! いい大人がゴロゴロして楽しいの?」

「楽しいさ。これからいい所だったのになぁ、海」

「いい所って。バ、バカじゃないの昼間から」

ルコの顔が音を立てながら火を噴いた。

「そんなの関係あるのか? 夜しかしちゃいけないとか」

「そ、そんな事知らない!」

隆羅の肩が震えていた、そして海の肩も。

「ふふふふふ」

「あははははは」

2人が笑い出した。

「からかっていたのね、酷いよ2人とも」

「いい所に、勝手に入り込んできて何が酷いだ。それはこっちの台詞だ、いつもいつも」

「ううっ、それは、その」

「また、邪魔されたな。海」

「うん、また今度ね」

「ええっ、本当にそうだったの?」

ルコが驚いて床にへたり込んだ。

「いけないのか? それより今日は何の用なんだ」

「ええっと、今度の3連休に皆で何処かに行きたいなぁって相談しに」

「相談しに勝手に入ってきたと」

「ゴメンなさい」

「反省してはいるんだな。毎回毎回」

「そんな風に言わなくても良いじゃん」

語尾が小さくなりルコも気まずそうに体を小さくした。

「しかし、何でルコがここの鍵を持っているんだ?」

「ママが何かあった時にって」

「何も無いが」

「だから、ゴメンなさいって」

隆羅が枕元においてあった携帯で何処かに電話し始めた。

「今度の、3連休なんだが部屋は取れるかな。そうかそのスイートで良いから押さえてくれ」

そして別の所にも。

「俺だ、ワゴンを1台用意してくれ下の駐車場にいつものように頼む」

隆羅が電話を終えると海が不思議そうな顔をして聞いてきた。

「ねぇ、隆羅。スイートとかワゴンってどこかに出掛けるの?」

「海は清里に行った事はあるか?」

「あまり、旅行した事が無いから」

「今度の3連休に清里や八ヶ岳に行かないか?」

「良いの? 行きたい。嬉しい隆羅」

海が隆羅に抱きつくとルコが「私は、まるっきり無視ですか」と頬を膨らませて拗ねていた。

「どうせタコは仕事なんだろ」

「そうだけど、だから何?」

「沙羅に伝えておけ、今度の連休に清里で良ければ連れて行くと」

「ええ、本当に? 如月パパ」

「用は済んだだろ。帰ってくれないか」

「もしかしてまた、始めるの?」

ルコが気まずそうに隆羅と海の顔を見ながら言った。

「バーカ。2人でブランチしに行くんだ、邪魔するなよ。準備しろ海」

「うん、直ぐに仕度するね」

海がベッドから飛び起き着替えを準備し始めた。

「ルコ。もう用事は済んだだろ」

「お邪魔しました」

ルコが剥れながらでも嬉しそうに渋々と部屋を出て行った。


隆羅がベッドに座りボーとしていると、隆羅の目の前で海が着替えを始めた。

「なぁ、海。恥ずかしくないのか?」

「なんで? 好きじゃない人だったら恥ずかしいけれど。大好きな人の前なら恥ずかしくないもん」

「そういうものなのか」

「他の人はどうか判らないけれどね」

「まぁいいか。そんな海を見ているのも嫌いじゃないしな」

海が赤くなった。

「もう、そんな事言われたら恥ずかしいじゃんよ」

「そうか、恥ずかしくないって言ったのは海だぞ。とっても綺麗だし可愛いぞ」

「隆羅のバカ」

顔が真っ赤になって、ワンピースに着替えが終わり隆羅の所に来た。

「じゃ、行くか」

隆羅がGパンを履きシャツを羽織、メガネを掛ける。

「どうしたんだ?」

海がモジモジしていた。

「隆羅が恥ずかしい事言うからでしょ」

「あまり、言葉にしないって言うから素直な気持ちを言っただけだがな」

「綺麗で可愛いって」

「俺は海の事が大好きだからな」

海にキスをして玄関に向かう。

「もう、いつもズルイ」


車で街に出掛け、オープンカフェでブランチをする。

街路樹は若葉が青々として木漏れ日がキラキラと輝き、晴れていて爽やかな風が通り抜けとても気持ちが良かった。

「この時期は、オープンスペースでも気持ちが良いな」

「なんだか、夢見たいだな。大好きな人とこんな所で食事なんて」

「そうなのかなぁ」

「そうだよ、だって私まだ高校生だよ」

「そうだったな」

「隆羅って、私の事を子ども扱いしないよね」

「変か? 子どもだって大人だって同じ人間じゃないか。それに女の子を子ども扱いするのは失礼だろ」

「そうだけど、普通こんなに歳が離れていたら子ども扱いするんじゃないの」

「どんな女の子もガールじゃなくてレディなんだよ。それに大統領でも社長でも近所のガキんちょでも、人と人として対等で居たいんだ。相手がどんなに地位があろうと媚びる必要は無いんだよ」

「隆羅は簡単に言うけれどそれって凄い事だと思うな」

「前にも言っただろ、当たり前の事をしているだけだって」

「隆羅にとってそれがスタンダードなんだろうね、尊敬しちゃうな」

「光栄です、お嬢様。そろそろ買い物に参りましょうか」

「買い物って?」

「今度の旅行には、水着を持って行く事が条件なんだ」

「ええ、私持ってないよ水着なんて」

「だから、買い物なんだろ。欲しい洋服があれば一緒に見よう」

「本当に、嬉しい! ありがとう隆羅」

食事を済ませ2人でデパートなどをブラブラ&ラブラブしながら買い物を楽しんだ。


出発の日の朝がやって来た。

「おはよう、隆羅。朝だよ」

「もう、時間なのか?」

「ルコ達が迎えに来るよ」

「そう言えば、今日は来ないなアイツ」

「隆羅にあんだけ言われたら来づらいよ」

「準備するか」

「うん」

殆ど昨夜の内に準備を済ませていたので、着替えをして駐車場に降りる。

「楽しみだな。ねぇ、隆羅」

「そうだな」

「今度は、2人きりで何処かに行きたいな」

「大阪に行っただろ」

「ブゥー。あれは旅行じゃないもん」

エレベーターを降りると駐車場でルコ達が待っていた。

「おはよう!」

「海、そのワンピースとっても素敵どうしたの?」

「えへへへ。この前、隆羅に買って貰っちゃった」

海は生成り風の白いワンピースに藤色のカーディガンを羽織り初夏らしいサンダルを履いていた。

「いいな、海ばっかり」

「お前には、タコと言う財布があるだろ」

「だって仕事、仕事って全然遊んでくれないんだもん」

「それは俺に言わずに、タコ本人か沙羅に言え。なぁ茉弥」

「きゃあ、きゃあ」

茉弥が喜んで隆羅に両手を伸ばして笑った。

「茉弥まで、いいんだもん」

「しょうがない子ねぇ、今度買い物に連れて行ってあげるからそれで機嫌を直しなさい」

「ママ、約束だからね」

「はいはい。隆羅そろそろ行きましょう」

「そうだな、じゃ車に乗ってくれ」

「車ってこれなの、凄い」

その車は大きなワゴンタイプの車で全員が乗ってもゆっくりと寛げそうな高級感たっぷりの車だった。

「小さな子どもが居る時は、大きい車が楽なんだよ」

「でも、凄い。中も何だかファーストクラスみたいだよ」

「後ろに荷物は積めるからな。それと茉弥はちゃんとチャイルドシートに座らせろよ」

「判ってるってパパは心配性だな」

「ねぇ、隆羅。この車って?」

「会社の車だぞ。親父の」

「大丈夫なの?」

「何を心配しているんだ海は? 親父はいつも無理難題を押し付けて来るんだ、このくらいの事なんでもないよ」

「無理難題な事って何かなぁ~」

「乗ったか、出発するぞ」

「ブゥー。隆羅のけちんぼ」

「海の事が大切だから言えない事もあるんだ。お願いだから、今は旅行を楽しんでくれないか」

海が頬を膨らますと隆羅が時折見せる寂しそうな顔をした。

「えっ、隆羅。ゴメンなさい」

その時ルコが後ろの席から顔を出した。

「ねぇねぇ、どうしたのお2人さん?」

「ちゃんと座ってくれ、海とどうやって2人きりになろうか話していたんだ」

「私達はお邪魔虫か」

「邪魔じゃないけど、目障りだな」

「同じじゃんか! パパのバーカ」

「出発するぞ。いいか?」

隆羅が海の頭をクシュと撫でて優しい目で見た。

「うん、出発進行!」

海が声を上げた。

車を中央自動車道に向けて走らせる。


「静かだな、走ってないみたい。茉弥もご機嫌だし」

「そうね、こんなにゆっくりするの久しぶりだもんね。隆羅に感謝しなきゃ」

「沙羅、気持ち悪い事言わないでくれ。寒気がする」

「失礼ね。私だって時々は感謝ぐらいするわよ」

「変なの、私が小さい頃は良く連れて行ってくれたじゃん遊びに」

「そうだな」

「へぇ、そうなんだ。いいな何か親子って感じ」

「海は、どうだったの?」

「小さい頃はそりゃ楽しかったけれど……」

海が少し寂しそうな顔をした。

「でも今は幸せでしょ?」

「うん、そうだね。昔は昔、今は今だもんね」

「そうだな。でも、皆それぞれ色々な体験をして乗り越えて今の自分があるんだ。そして自分で選択して生きてくる、そんな中で出会いが生まれるその出会い大切な縁なんだ。大事にしないとな」

「先生みたいだよ如月パパ」

「先生見たいは失礼だろ。でも先生って言ったって先に生まれて少しだけいろんな経験をしてるだけだからな。間違える事も悩む事もある、同じ人間なんだ」

「隆羅って時々、哲学ぽい事言うよね」

「可笑しいか俺がそんな事言うのは?」

「凄いなって思っただけ。でも隆羅って時々子どもぽくなるよね」

「はいはい、そこまで。バカバカなのは分かるから」

ルコが茶々を入れると海が切って返した。

「ルコ、バカバカはバカップルより酷くない」

「だって、ちょこっと羨ましいかなぁなんて」

「じゃ、バカ親子はどう?」

「海、頼むからバカ娘だけで勘弁してくれ」

「もう、パパのバーカ。バカ、バーカ!」

「海ちゃんの言うとおり、バカ親子よね。隆羅そろそろ休憩しない」

「そのつもりだ、もう少ししたらパーキングエリアに入るから」

しばらく走り、パーキングエリアに入り休憩をする。

車を駐車スペースに止めて車から降りる。

「さぁ、ラーメンでも食べるかな。海も食べるか?」

「うん、行く」

「パパ、待ってよ。茉弥のオムツ交換したら行くから」

「先に、行ってるぞ」

「もう、ケチ」

隆羅と海が先にパーキングエリアの食堂に先に向かう。

ルコと沙羅が隆羅達の所に行くと隆羅と海は既に食べ始めていた。

「なんで、先に行くかなぁ」

食券を買い注文する。ラーメンを受け取って戻ってくると、隆羅はもう食べ終わっていた。

「茉弥、おいで」

隆羅が茉弥を抱っこしてあやし始めた。

「キャッ、キャッ」

「可愛いね、茉弥ちゃん」

「そうしていると、2人の子どもみたいね」

沙羅がからかうように2人に言った。

「そうか? まだまだ先だと思うけどな」

「そうなの? 隆羅」

「いつも邪魔ばかり入るからな」

「ゲホ、ゲホ」

ルコがこの間の事を思い出し思いっきり咳き込んだ。

「慌てて食べるからだ」

「パパが変な事言うからでしょ」

「事実を言ったまでだ。それにまだ海は高校生だしな、これからどうなるか分からないだろ」

「隆羅、それは本気で言っているの? 私は……」

海が少しだけ不安そうな顔をした。

「どんな運命が降りかかろうと、パパは戦うんでしょ」

「当たり前だ。大切なモノを守る為なら何でもする、海の事は大好きだしな」

隆羅の言葉に海が笑顔に戻った。

「それでも、どうしようも無い事が起きたらどうするの? 隆羅は」

「沙羅。何とかなるさ、何とかならなかった事など無いだろ」

「それもそうね、出発しましょ」


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