冒険者パーティーの服装と装備3 (魔法使いのローブと回復士のローブ)
一人を冒険者に変身させた達成感もそこそこに。
「お次は」
仲間のどちらの服装を決めましょうか。
「私も、冒険者用の服に着替えます!」
しっかり者な娘さんが乗り出してきた。
「冒険者の服は防臭と防虫加工がしてあるんですよね?」
「はい、その通りです」
信頼と安心のスマイル。
お客さんはほっと胸をなでおろした。
「冒険中に汗臭くならないのも嬉しいけど、虫が寄ってこないのが一番嬉しいです。全部ここの服にします」
全部買い替えるか、フククッ。
「あ、私はツケ払いはしなくて今払います」
本当にしっかり者なお客さんだ。
「それで、服なんですけど」
お客さんの瞳もキラキラしたものになった。
期待に満ちた笑顔だ、応えてあげたくなるな。
「私、神官の娘で回復士なんです。だから、その、清廉で神聖な聖女様のような服を着たくて! そんなのありますか?」
自信を持って応えられるスマイル。
「ありますよ、こちらへ――」
魔法服コーナーの白系のローブが並ぶ前へご案内。
「これらは、回復士、聖職者など神聖な職業用のローブです。白い生地はホワイトシャツなどと同じく汚れ防止加工がしてあります」
「ああ、こういうの着たかったんです!」
お客さんはさらに瞳を輝かせている。
勇者を目指す仲間のごとくテンションが爆上がりだな。
さらなる期待の眼差しを私に向けてきた!
「このローブ、特別な力を発揮する聖なるアイテムだったりしますか?」
聖なるアイテム、か。
「服屋にあるものは残念ながら違います」
「あ、そうですか……」
ちょっと下がってしまったテンションを上げよう。
「ですが、様々な魔法が付与されていますし、こちらは強力な防御魔法が付与されているので防具のように頑丈ですよ」
「よかった、助かります! 無謀な仲間がいるから、危険な目に遭うかもしれないし」
「大丈夫だって!」
「大丈夫だと思いたいですけど、一応、一番頑丈なのを着ます」
本物の聖なるアイテムは教会や神殿などに行けば授けてもらえることだろう。
それまでは我が店の服でも充分、役目を果たせるし様になる。
ローブを選んだら後は、
「下に着る服はどれになさいますか? ゴワつかないシンプルなワンピースに、動きやすいシャツとズボンなど、ローブを脱いだ時に普段着にもなりますよ」
「そうですね~、両方買っておきます! これもいいかなぁ~」
普段のショッピングかのように楽しく選んでいる。
仲間とともに見守ろう――
「よし、これくらいかな」
着替え用もとはいえ、かなり腕に掛けてるな。
荷物になりそうだから、
「着替えを入れるバッグやリュックもありますよ」
服屋だが、すぐ冒険に行けるようバッグ類もある。
棚を示して勧めよう。
「私も少し収納魔法が使えるので、あ、でも一応、バッグを一つ買っておこうかな」
さっきの鑑定士さんと同じく備えておくのは賢いな。
お客さんは仲間の一人にもリュックを差し出した。
「あなたも、リュック買っておきなさいよ。収納魔法に入れてもらうにしても、荷物はまとめておいたほうがいいでしょ」
「そうだな! 買っとくよ」
「僕も一応、何か入れるもの買っておこうかな」
しっかり者の助言で冒険がスムーズに行きそうだな。
準備が着実にできていくのを見守ろう――
「よし、バッグと服は揃ったから後は、靴も……私は魔法補正で足が痛くならなくて疲れが取れるのを買って履いてみようと思います。そうすれば、私の回復魔法は仲間に沢山使えるし」
仲間想いのお客さんだなぁ、感動のスマイル。
「俺達のためにありがとな。けど、いいなぁ、金に余裕があるみたいだな」
感動を壊す現金な物言い。
ツケ払いしてしまった仲間が羨ましげにしている。
「当たり前でしょ。子供の頃からこの日のためにコツコツお金貯めてきたんだから」
「俺も貯めてきたはずなんだけどな……」
子供の頃から一緒にここまで来たのか。
仲良しで微笑ましいが、しかし、しっかり者と性急な者では所持金にも差が出るんだなぁ。
「ここで使い果たすなよ~?」
「大丈夫よ、ちゃんと考えてるから。でも、最初が肝心だし、こんな服を見ちゃうと……できるだけ、お金は惜しまないで買っちゃう!」
うんうん、そういう買い方もありだ。
服屋としても有り難いお客だ、フククッ
「さぁ、靴も決まったし試着してみましょうっと!」
しばし待ってから。
喜びのままに着替えて出てきた姿を服装観察してみよう。
回復士の服装
清廉で神聖な純白の装いだ。
白いケープ。聖職者特有の装飾で防寒着にもなる。白の他に色や模様は色々あり職種や階級で違ったりする。留め具はブローチまたはクラスプ。
ハイネックローブのフロントには金の聖なる紋章や模様が施されたオーフリーという装飾布が縫いつけてある。オーフリーローブという。
ローブの腰の両サイドにはスリットがありオーフリーが切り離されて前垂れのようになっているのが特徴だ。
腰には紐に房飾りがついているタッセルベルト。装飾的だが、このように長い紐ベルトはロープのように使えたり、回復士なら怪我の治療時に患部を縛る道具として使うなど色々と役に立つ。
裾から少し覗いているローブ下のワンピース。
足首丈のアンクルブーツ。足首部分の筒が開いているがボタンで留めたり紐で縛ったりすることでキッチリ足に着けて履くこともできる。
説明を省いた簡単な名前は回復士のローブだ。
神官のローブ、聖なるローブ、聖衣、法衣、女性神官や聖職者のローブはプリーステスローブ、プリエステスローブともいう。男性はプリーストローブ。
「お似合いです。杖ともよく合っていますよ」
神聖なものに向ける絶賛のスマイル。
「似合ってるぜ! どこかで見たことあるような、聖女様って感じだ!」
「うん、よく似合ってる」
仲間達からも絶賛の笑顔だ。
「ありがとう! これです、理想の姿!」
満足を超えて感動しているようだ。
杖をかざしてみたりして、ご満悦。
着替え用に沢山買ってくれたし、将来有望な上客になりそうな回復士さんだ。フククッ
「では、お次は」
最後はクールな魔法使いさんだな。
「僕は、このままでも良いと思ってたんですけど」
仲間の変わりようを見て気が変わったか。
「魔法使いのローブも防御魔法とか付与されたものありますか?」
「はい、こちらに」
「僕も、お金は今払います」
「ありがとうございます」
こちらも将来有望そうだ。
魔法使いのローブが並ぶ前にご案内。
「防御魔法の他にも、属性ごとや特定の魔法耐性があるもの、魔力の蓄積、増幅させたり抑え込んだりと色々な機能のローブがあります」
クールなお客さんの瞳も輝きだした。
「私のローブと同じような綺麗な模様のあるのも色々あるね」
回復士さんは自分も欲しそうだ。
「これらの模様は魔法紋や呪文をデザインしたもので、付与されている魔法をあらわす模様と敵をあざむく偽模様があります」
「オーダーメイドで、ご希望の模様をつけることもできますよ」
将来上客になりそうな若者には案内しておこう。
「オーダーメイドもしたいけど、僕の今使ってる魔法なら、ここにあるローブで充分そうです。どれにしようかな……」
クールな表情のままだが、かなり迷っているようだ。
我が店は魔法研究所や魔法書図書館も近く、魔法使いの客が多い。ローブの種類に力を入れているからな。
このお客に最適な一着を見つけるために探っていこう。
「お客さんは、どのように魔法を使いますか? 手ぶらですが、本や杖のようなアイテムは?」
「僕はアイテムなしで、呪文を詠唱して手から出します」
口と手を使うのか――いいのがある。
「それなら、こちらはいかがですか?」
オススメのローブを見せよう。
「防御魔法が付与されたローブで、この、口を隠すボリュームネックが敵の攻撃や風など詠唱を邪魔するものから守ってくれます。もちろん、急所の首も一緒に」
「へぇ、凄いですね……!」
探していたのを見つけたように瞳の輝きが増した。
「メシが食べにくそうだな」
いかにも食べるのが好きそうな仲間が懸念を示した。
日常生活に支障がでる服となると。
お客さんも、少し悩むように首をかしげている。
「大丈夫ですよ、内側にフックボタンがあるので口元を開くことができますから。こちらは最新式で手で軽く引っ張るだけで開き押すだけで閉じることができる、留め具なしの簡単タイプです。どれも汚れ防止加工もしてありますし。最初は違和感があるかもしれませんが、着慣れると安心感を与えてくれる頼もしいローブですよ」
安心と信頼のスマイル。
「それじゃあ、これを着てみます」
着てみたい気持ちが勝ったようだ。
ローブが決まったなら、これも勧めよう。
「手を保護する手袋もいかがですか?」
魔法を出す時に手をかざすと敵の攻撃とぶつかったりするし。それと、
「防御魔法の他にこちらも、魔力放出や集中など補助機能もあります」
「じゃあ、それも……色は黒で」
「俺の手袋の色と被らないようにか? それぞれ別の色にして個性出したほうがいいよな!」
「そこまで考えてないけど、なんとなく。マネキンも黒いのしてるし」
みんなでマネキンを見ながら解説しよう。
「紫のローブに黒い手袋は魔法使いがよく選ぶコーディネートで、王道のスタイルですよ。黒は魔法の光が映えて魔法紋がよく見える視覚効果もあります」
お客さんは青く光を放つ魔法を出して確認した。
浮かぶ魔法紋が黒い手袋を背景にはっきりとわかる。
「本当だ」
「なんか魔法使いって感じが増して、かっこいいぞ! 王道のスタイルだし、これだな!」
「うん、似合ってるし!」
仲間も納得の商品に、お客さんも頷いた。
ローブと装備が決まった。
こちらも後は、
「ローブの下に着る服はどうしますか? 普段着になるチュニックやホワイトシャツ、鎧下にもなる頑丈なハイネックのアンダーダブレットを着る方もいますよ」
「そうですね、これも……黒いアンダーダブレットでズボンも黒で揃えるかな」
「ローブ脱いだら全身黒づくめになるぞ」
「そうだな、ホワイトシャツも買っておくよ」
仲間の突っ込みを受け入れて選んでいく。
「後は、靴か。僕も転ばない補正があるのにしようかな」
「やっぱり紫のローブには黒が似合うから、ブーツは黒にしたら?」
「そうだな、ブーツも黒にしようかな」
さらに仲間の意見を柔軟に取り入れて決まった。
後は、静かに試着を待ち、クールな面持ちで出てきた姿を服装観察してみよう。
魔法使いの服装
紫と金の配色は定番だが独特のデザインだ。
口元まで隠すボリュームネックのローブ。大きな立て襟のローブ、金属製のような素材だとゴルゲットローブ (首当て付きローブ)などともいう。大きい立ち襟が大事な口と急所の首を完璧に護ってくれる。
普段は何かと邪魔になりそうだが簡単に前を開閉することができる。
魔法模様の金の縁飾り。
見えないがホワイトシャツとズボン。
黒革の手袋とブーツ。
説明を省いた簡単な名前は詠唱系魔法使いのローブと装備だ。
「お似合いですよ」
絶賛のスマイル、三回目。
「うん、似合ってるぞ!」
「似合ってる!」
仲間達も絶賛している。
「それじゃあ、これをください」
ボリュームネックで笑顔かはわからないが。
お客さんも満足いったようだ。
「よし! 俺達、これでまさに冒険者だ!」
三人揃った姿を改めて服装観察してみよう。
冒険者パーティーになった姿
さっきの魔法使いと町の住人の姿から比べると見違えた。
王道の冒険者パーティーに見える。服装を変えて形から入るのは大事なことだな。
これなら魔王の元にも行けそうに見えてくるじゃないか。本当に行ってしまいそうな真ん中の若者がいるので、行けそうですよ! とは言わないでおくけど。
彼らを見ていると……それなりの姿に変えることができた達成感と同時に一抹の不安も出てくるし。
本当に、こんな冒険者パーティーが今まで何組も魔王の元へ向かったが、全員無事に戻ってくることは稀だからな……彼らも……いや、不安は振り払って今は喜ぼう。
「王道の冒険者パーティーになっていますよ!」
心からの感想とスマイル。
「今の俺達なら、このまま魔王城にまで行けそうだな!」
また不安になるような言葉を返された!
こぶし握りしめて、真ん中の若者は本当に熱血で前向きだな。応援したいが心配は尽きない。
「だから行かないって」
「ギルドに戻ってクエストでしょ!」
クールでしっかり者な仲間がいてよかった。
「わかったよ、行こう! 服屋さん、ありがとうございました!」
「おかげで、みんな、理想通りの姿になれました!」
「ありがとうございます、助かりました。また来ます、コイツのツケ払いを払わせるためにも」
お客さん達の嬉しい言葉に最高のスマイルを返そう。
「ご満足いただけて何よりです。ご利用いただきありがとうございました、またのご来店、お待ちしていますよ」
三人揃って浮足立っている様子だ。
後ろ姿を店先まで見送ろう。
「それじゃあ、行ってきます――!」
「お気をつけて、いってらっしゃい!」
新たに誕生した冒険者パーティーの旅立ちだ。
笑顔で手を振り、ただ無事を祈ろう!
補足です。
魔法使いと回復士のスタイルは完成されているように見えますが、勇者はまだ不完全さが際立っている気がします。
また来ますと言った冒険者パーティーが全員無事に再び店に来る確率が低いとなると、服屋がなかなか心理的にハードな職業になってしまいますね。まぁ、パーティーが崩壊する理由は敵にやられる以外にも色々ありますけども。なんにしてもちょっと寂しい気持ちになりそうですね。なろうではパーティーはバラバラになりますけど、この三人組には仲良くいてほしいものです。
女性聖職者キャラがよく着ている白いローブはデザインが多彩で複雑なものが多く、どうなっているのかとか着方や脱ぎ方など説明が難しいですね。
挿絵のケープで隠れているオーフリーの胸元部分は服によってデザインが違います。スクエアネックやハートカットのように首元か胸元の縁飾りからオーフリーが垂れているデザインが多いです。
他にもシンプルなローブにジャンパースカートのような肩紐付きで装飾的なワンピースを重ね着していたり、オーフリーが別アイテムとなっていて被って首元から垂らしたりベルトで腰から垂らしていたりと色々あります。
やはりオーフリーが前垂れがという説明がとにかく難しく長くなるので簡単にオーフリーローブとして紹介しました。
挿絵と同じようなデザインでもローブではなくワンピースやドレスとして描写されることもあります。
ローブ下は服を着ておらず下着だけの場合もあるでしょう。その辺も謎が多いです。
ケープはモゼッタという聖職者のケープが元になっているようです。
足首部分の筒が開いているブーツは虫とかが入りそうですが、これは中世のブーツの特徴で現代のようなしっかりした留め具がなかったためだそうです。
挿絵ではしっかりしたヒールもありますが、中世の靴はターンシューという靴底のない柔らかい革靴で、袋みたいなものがありました。靴底がないのでパッタンpatten
というサンダルのような木靴を重ね履きしていたそうです。ファンタジーではパッタンは使わず、エルフとか小人とか庶民が履いている中世や原始的な雰囲気の出る靴ですね。
魔法使いのローブはシンプルですがスタイリッシュでミステリアスな雰囲気が出て思った以上にかっこいい印象です。
また別のキャラにも着て登場させたいです。
ボリュームネックの服はNARUTOの暁のマントが有名ですね。パチパチと前を開けていたと思いますが留め具はなんでしょうね。コスプレ用はボタンですがパチパチ音をさせるならスナップボタンですかね。
留め具なしにするなら、ネックの縁に針金を入れて開いたり閉じたりできるようにするとかでしょうか、大きな襟を綺麗に立てるためにもよさそうですね。
ファンタジーの魔法使いもボリュームネックローブを着てると思うんですが、定番というほどではないようです。
口元が隠れると目元を強調したり正体不明なミステリアスさを出せたり、やはりかっこいいローブだと思います。
詠唱系ローブとしていますが機能面では口元保護以外にも色々あるはずで、現代のボリュームネックは防寒機能となっています。
黒い手袋には自分の汚れを隠したい、神秘さとミステリアスさ、白い手袋には相手を汚したくない、清潔さと神聖さなどの意味があるそうです。




