服飾ギルドマスターの心は? 仲良しギルドの服装
宝飾ギルドマスター達と別れて先へ進む。
ああ、良い気分だ……
貴族街の宝飾品店オーナー兼、宝飾ギルドマスタージュエラー兼、公爵令嬢に褒め称えられたおかげで。
貴族達の行き交う道を堂々と胸を張って歩ける!
しかし――
隣のマスターはどうだろうか?
マスタージュエラーから私と比較されて落とされるようなこと言われてたし良い気はしていないだろう。
チラッと見た感じ平静なようだが。
服屋の事務所で一人になった時とかに "町の服屋が良い気になっていられるのも今の内だぞ" とか言って怖い笑いを浮かべるかも!?
我が店が貴族街に出店したら、やっぱり叩き潰す方向になられたらマズイ!
とりあえず、本心を探ってみようか……!
「あの、マスター」
遠慮がちな控えめな声かけとスマイル。
「なんだ?」
いつも通りの穏やかな声かけとスマイルをくれた……
これなら一気に突っ込んで聞いてみるか。
「あの、さっきのマスタージュエラーのお話ですが」
「うん?」
「私ばかり褒めていただいて」
「それは当然だろう、ユルクの仕事の成果についての話だったのだからな。マスタージュエラーに認められて、ますます貴族街進出が見えてきたな」
マスターの嬉しそうかスマイル……
我が店の進出を阻む気はない!?
「はい、嬉しい限りです。ですが、私を褒めていただいた時にマスターが引き合いにだされて……ドレス受け付け中止は貴族のわがままという仕方ない原因があったのにマスターが泣き言を〜とかマスターより私のほうがよっぽど泥臭い根性があるとか比較されて……不愉快な気分になったのでは?」
またチラッと顔色を伺ってみるが。
マスターは変わりないスマイルを浮かべたままだ。
「不愉快になどなっていないから安心しろ」
安心できる断言だ。
とりあえずホッとしよう。
マスターは穏やかなまま私を見ている。
「ユルクは行動力があるが浮かれたまま突き進まず、俺のような同業の心理を気にする慎重さもあるか。良いだろう、俺の気持ちを全部教えよう」
「お願いします」
「ドレス受け付け中止は確かに貴族のわがまま対策に必要な処置だった。結果的にドレス作りを安心して行うための新たな制約もできて、あの決断はよかったと思っている。しかし、あの性急な受け付け中止はマスタージュエラーの言う通り "泣き言" でもあったと思う。後々思い出して少し恥ずかしくなるだろうな」
マスターは恥ずかし紛れか小さく笑ってみせた。
そんな、マスターに、寝る前に思い出してはベッドの上をゴロゴロ身悶えて枕に突っ伏すような恥ずかしい過去ができてしまうとは……
「こんなことは初めてではない。引き合いにだされて相手が褒められ、俺の良くない行いを指摘されるようなことはな。しかし、その度に不愉快に思わず、行いを正し、次は上手くやり褒められるようにやってきた」
さすがですとスマイルを捧げよう。
マスターは自分より褒められた相手に復讐するために闇堕ちする怖い人ではなかった、よかった!
「相手と比べられても卑屈にならず、やる気に変えてやってきた。それでここまで来れたとも思う……ユルクのような相手は切磋琢磨できる貴重な学び相手だ」
「マスターの学び相手、光栄です」
私達はまた屈託ないスマイルを交わせた。
「私もマスターの "卑屈にならず、やる気に変えるやり方" 見習います。これからも色々学ばせてください」
「もちろんだ。そう言ってもらえて俺も光栄だ。ユルクは自分だけ褒められて俺を見下さず気にしてもくれた。良い仲間でもあるな」
優しいスマイルもくれた。
温かい気持ちになれる。
さっきまでのざわついた心理状態が嘘のように晴れた。
「マスターは大切な仲間です」
照れくさい熱いセリフもサラッと出てしまった。
「ありがとう」
マスターの嬉しそうな声と表情が嬉しい。
私達は仲間の有り難さを共有できた。
そのまま服屋に辿り着く前に――次は靴屋が見えてきた。
製靴ギルドマスター達にも世話になったな。
「製靴ギルドにも挨拶していくか」
マスターも同じ考えだったか。
「はい、行きましょう」
店内にお邪魔しよう。
「ようこそ! あら、マスターグランツとユルク•ドレスアップ!」
製靴マスターがとびきりのスマイルで出迎えてくれた。
サブマスターが肩に乗っている。
「ようこそ! 服飾マスター、ユルク!」
「ごきげんよう、製靴マスター、サブマスター」
「ごきげんよう、二人共」
四人で親しみを込めたスマイルを交わす。
「ブルタニア侯爵家とリリズ伯爵家の結婚式が無事行われましたので、仕事の無事完遂の挨拶に来ました。素晴らしい靴をありがとうございました」
「あらあら、こちらこそ、ありがとうございました! 素晴らしいドレスとスーツでガラスの靴と革靴にぴったりでしたね! 感動しちゃいましたわ〜」
製靴マスターは心のままにステップするように跳ねた。
サブマスターは慣れているのか落ちずに上手く座っている。
バランス感覚がいいな、その両手は何か持って塞がっているのに……
「サブマスター、そのクッキーはブルタニア侯爵家とリリズ伯爵家のお礼の品ですか?」
「うん! ユルク達も食べたか?」
「はい、さっき頂いてきました」
「美味しいよな!」
子供のようなスマイルを交わす。
もう一枚食べたくなってきた!
しかし、製靴マスターは少し怒った顔になっている。
「店内で食べちゃいけないって言ってるのに、聞かないんです」
それは確かにと、うなずいておこう。
店内での飲食は困るな。
店員がするなどクビになる問題行為のはずだが。
サブマスターは気にした風もなくスマイルのままクッキーをモグモグしている。
「良いじゃないか。俺達、小人族は特別だ! お客も許してくれてるしクレームもないだろ」
「そうなんですよね、クレームや注意されるどころか、もっと食べさせてあげてと差し入れを頂く始末」
製靴マスターは諦めたように表情を緩めた。
小人族は良いな……
店のマスコットでもあるようで、靴職人としての顔より知られているのかもしれない。
我が店にもマスコットが欲しいなー。
私の分身が何人いても "また同じ店員!?" と驚かれはするけど集客に繋がっているかというと疑問だし。
製靴マスターとサブマスターのような可愛らしさと親しみやすさが欲しいものだ。
製靴マスターとサブマスター
仲良しな二人の服装をチェック。
製靴マスターから。
フリルネックのブラウスに。
意識的にだろうか、無意識に選んだのだろうか。
最近、流行りだしているのかもしれない。
サブマスターの髪色と同じ色の上着だ。
リボンタイ、ブローチまでグリーンオンリーの鮮烈さ。
このような服装はワントーンコーディネート、モノクロマティックなどという。
ジャケットはスカートのように裾が長くドレスのようになっているジャケットドレス。
ズボンスタイルなのでドレスというよりスーツの印象も強いな。
説明を省いた簡単な名前はドレススーツだ。
製靴マスターの足元
靴もグリーン。ジャケットのラペルやトリム (縁飾り)やズボンのサイドラインにもある金のアラベスク (蔓草模様)が靴の全面を飾っていて一番豪華で美しい。同じ色や装飾でもやはり靴屋は靴がメインになるようなコーディネートだ。
足の甲を隠すようなデザインの靴はオペラパンプスまたはオペラシューズ。
オペラ鑑賞に履いていくはもちろん、ファッションとしてもオシャレな靴だ。
サブマスターはクッキーに隠れて見えにくいが。
いつもの作業着だ。
「こうして、みんなで喜びを分かち合えて幸せですわ。ね、サブマスター」
「そうだな! みんなでまた仕事しよう!」
「はい!」
喜びと気合いのスマイルを返そう。
「今度は俺も仲間に入れてくれ。ドレス受け付け中止も解除となって、また制作を始めることになったのでね」
マスターも気合いの入ったスマイルをみせた。
「あら、よかったですわ〜!」
製靴マスターはまたぴょんと跳ねた。
「みんな元通り、ハッピーですね! クツクツクツ」
「クツツツ!」
製靴マスターとサブマスターは靴屋らしく笑った。
「フクフクフクッ」
「フックックックック」
私とマスターもつられて服屋の笑いを。
そうして商人の顔で笑いあっている姿――
お客さんに見られて驚いたような顔をされた。
どうやら、ちょっと怖がらせてもしまったらしい。
靴屋というよりは魔窟に来たような気持ちにさせてしまっただろうか。
安心させるために接客スマイルをみせよう。
「ようこそ!」
製靴マスターとサブマスターの声かけも加わり。
お客さんは安心したようで商品選びに戻っていった。
「お客の邪魔になるな。そろそろ行こうか」
「はい」
「またいつでも来てくださいね」
「今度は一緒に、お菓子も食べような!」
私達四人は、お茶の約束とスマイルを交わした。
補足です。
製靴マスターの服装は以前紹介した服装とほぼ同じなので今回は色に焦点を当てて紹介しました。
モノクロマティックは一色で濃淡をつけたりする色調のことでもあります。
一色コーディネートというのはファンタジーでは結構見ますね。
サブマスターの作業着は以前紹介したので割愛しました。
同じ服装でも注目する部分を変えて紹介したり、簡易紹介する閑話回を挟んだりと色々していこうと思います。




