232.目論見を破壊するアナウンスとアース米のあれこれ
《ソーイチ様がプレイヤーで初めて特別試練を達成いたしました》
アース米の種が入っている袋を振り上げ叫んだ直後、久方振りのワールドアナウンスがMJO中に鳴り響く。
(うぉっ!?これワールドアナウンス案件やったんか!?ポイントは嬉しいけど、少しマズいな……)
いつのなら喜ぶべきアナウンスなのだが、今回に限っては少し問題がある。
(俺の知名度考えたら、農業ギルドに居るってバレバレやし、試練が農業関連ってのもバレバレ。って事はアース米の情報隠蔽が少し大変になるって事やん)
独占栽培を目論んでいた俺にとって、致命傷になるかもしれないアナウンスにぐぬぬと顔を歪ませる。
だが、そんな事情を知る由もないアレンは、急激な顔色の変化に疑問を抱いたようだ。
「あ、あのソーイチ?叫んだと思えば、急に苦しそうな顔付きに変わりましたが、何か問題ありましたか?」
「あ、ああ。ごめんごめん。アース米の種ゲットと同じタイミング、クランからバッドニュースのコールが入ってな。感情の整理がつかんかったんや」
「ああ、なるほど。せっかく喜んでいたタイミングで、悲しいニュースが飛び込むとか念話持ちも大変なんですね」
「ああ、コール送る側はこっちの都合とかわからんからな〜」
世界観を考えて、プレイヤー事情を住民達に知らせない為に嘘混じりで誤魔化した所、彼女はアッサリ納得した上で深くは追求して来なかった。今までの付き合いから考えて、何かを隠してる所まではバレているかもしれない。
「では、まず契約の話をしましょうか。アース米を受け取った際の約束事は覚えてますか?」
「えっと、確か種を受け取ってから1週間以内に、30粒の種を納品する必要があるんやんな?」
「ええ。アースの町が封印されてる今、種の在庫はカツカツですからね。こういう条件でも付けないとあっという間に無くなっちゃいますよ」
「ああ〜。確かにウチのメンバーも試練クリア張り切ってるし、みんなが種を求めたらそうなるか」
今もスキルのレベリングに励んでいるメンバー達の姿を思い出し、条件をつけた事情に納得する。
その後も注意事項は続き、メモ用紙の半分くらいが埋まっていった。
「……以上です。何か質問はありますか?」
「いや、わかりやすい説明ありがとう。それより、お堅い話はこれくらいにして、アース米を育てるにあたって何かやるべき事はあるん?一応簡単な育て方は図書館で【アース米栽培マニュアル】読んだ限りやと、普通の育て方でも大丈夫っぽいけど」
「ええ、他の種と同じで大丈夫です。でも、流石は司書だけあって事前勉強はバッチリですね!【苗化】と【脱穀】スキルについても、把握済みと考えて良いですかね?」
「ああ。【苗化】は水耕栽培で使うし、【脱穀】はアース米を別アイテムに変質させるって感じかな?」
「そうですね。ただ、正確には水耕施設は使用しますが、アース米のもう一つの育て方は水耕栽培ではないんですけどね」
「うん?違いがよくわからんのやけど?」
「そうですね。詳しい説明は省略しますが、水耕栽培というのは土を使わずに水と肥料だけで栽培する方法なんですよ」
「あっ、マジで水だけなんや!?」
今まで農業関連の物語を書いた事が無かったので、田んぼの風景を想像し、勝手にアレが水耕栽培なのだと思い違いをしていたが、全然別物のようだ。
「じゃあ、水耕施設は何に使うん?」
「良い質問ですね!水耕施設は水を生み出す魔道具でもあるのですが、それを利用して畑に水を流し込み、農地を泥状に仕上げる為に使うんですよ」
「はぇ〜、それ専用の魔道具じゃなくて、既にあるやつ応用して使うんやな」
「ええ。というか現時点ではアース米はそれほど人気のある作物ではないので、専用魔道具が作られてないだけなんですけどね」
「確かにマイナー作物に労力は掛けれんか。でも渡り人内で大流行したら……」
「新しい魔道具が生み出されるかもしれないですね」
「おお〜。それ聞いたら魔道具開発の為にも頑張らなあかん!って気持ちになるな」
プレイヤーの行動次第でアイテムが増えるというのは、色々と興味深い。アース米以外にも何かに応用できるかもしれないと、俺は心のメモに刻み込んだ。
「さて、ここまで水耕関連のお話をしてきたのですが、土壌の関係でアースの町以外で行う事は出来ないんですよ」
「マジか……。今は無理でも早めにチャレンジしてみたかったんやけどなぁ」
「そこは諦めて貰うしかないですね。ただ【脱穀】はアース米収穫後なら自力で覚えられるでしょうし、【苗化】も近い内に覚える事が出来るかもですよ」
「マジで?【脱穀】は手作業でやったら自然に覚えそうやけど、【苗化】は【種化】と同じで自然には無理やろ?……って、そうか。【種化】のレベリング励んだらええんか」
「もう!察しが良過ぎて話す事がなくなっちゃったじゃないですか!」
話の流れからピンと来たアイデアを話すと、解説を横取りされたアレンはプク〜と頰を膨らませた。
「ごめんごめん。でも、そのリアクション的に大当たりやな」
「ええ、【種化】を上限まで育てた方は、【苗化】のスキル講習が受講可能になります。だから張り切ってスキルを上げちゃって下さいね」
「おう!アース米以外にも【苗化】は果樹園系で活躍しそうやし、頑張ってレベリングするわ」
出来る事が増えるのはゲーム内とはいえ嬉しいものだ。俺はアレンの発破にニヤリ顔でスキルのレベリングを宣言したのだった。
コメント欄にて米=水耕じゃないとのご指摘ありがとうございました!いい感じに応用して作品に使わせて頂きました!
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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今後とも本作をよろしくお願いします。




