227.魔物食とクロード達
ズズッズズッ
出店での買い込みも終わり、今はメンバー勢揃いで戦利品をモグモグと食べる俺達。そんな中、食いしん坊クイーンのモチョは麺類的な何かを、感心しながら啜っていた。
「なぁ、モチョ。随分美味そうに食ってるけど、それ何?麺が透き通ってるんやけど」
「ズズッ、プハ〜。これですか?これはスライム麺です」
「スライム麺?この麺がスライムで出来てんの?」
「ええ。スライムの被膜を麺状に刻んだものを、スープで煮た料理だそうです」
「ほほう。スープで煮るって事は、めっちゃ出汁吸いそうやな」
「ええ。スープを吸ってプルプルになった麺が、春雨みたいで本当に美味しいんですよ」
「おお、マジか。ズズッ……ホンマや。確かに美味しいな」
モチョの熱弁に興味を惹かれた俺は、小さな器に入れられたスライム麺を一啜り。牛っぽいスープと共に食べるそれは、春雨というよりベトナム料理のフォーを思い出す。
「お〜い、こっち食べてみろよ」
「うん?ウインナーの盛り合わせか?」
「ああ、この大陸で狩ることが出来る全ての魔物肉のウインナー盛りだ。1〜3種類の挽肉で作られてて、更に種類毎に味付けも変えてるらしいぞ」
「へぇ〜。そりゃこんな大皿にもなるわな。……うん、白色のやつはアッサリしてて食べやすいし、真っ黒のやつは香辛料と肉汁で酒がめちゃくちゃ進むな!」
取り皿に対照的な2種類を取り分け味見をすると、その味のバリエーションに蒸留酒を飲む手が止まらない。
「それにしても、どの料理にもたっぷり魔物系のドロップが使われてるけど、これがこの世界の文化ってやつなんかな?」
「どうでしょう?私も普段から食べ歩きしてますが、ここまで魔物食を押し出す料理は初めてかもです」
「似てる料理はあっても魔物なんてリアルに居ないもんな。ラクレスが全部仕切ったかはわからんけど、俺達に文化を知って貰うってなったら、ファンタジーチックな魔物食は大正解やな」
「そうだな。そして文化交流なんだから、次に俺達がやるべき事はわかってるか?」
「もちろん!近い内にリアル世界の料理を住民の皆さんへ振る舞わないと、ですよね」
「その通り。だからソーイチ、あの件は頼んだぞ」
「ああ、任せといて!」
言外にアース米の早期確保を念押しされた俺は、改めて試練クリアの為に全力を尽くす事を心に決めた。
「さて、お堅い話はこれくらいにしよう。ぼ〜としてたらモチョ達に食い尽くされそうだからな」
「あ!?ホンマや!?」
「バ、バレちゃいましたか……」
「ははは、早い者勝ちっすよ!」
「ぐぬぬ。確かにここは弱肉強食か……。俺達もその流れに任せるとするか!」
「いや、足りなくなったら買い足せば良いだけだぞ……」
黙々と食べるモチョと軽い挑発をするセキライ。俺は呆れるユサタクの視線を無視して食卓に並ぶ料理に挑むのであった。
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食事を始めてから数十分たったある時、俺達の元へ2人の見慣れた冒険者がこちらへ歩いてきた。
「よっ、ソーイチ。祭り楽しんでるか?」
「おお、クロードにヨナ!こっちは色んな魔物グルメ楽しませて貰ってるわ。それより、そっちこそラクレスの話に野次飛ばしまくって楽しそうやったな」
「ははは、聞いてたか」
「あんなデッカい声で野次飛ばしたら、そら聞こえるって」
「そりゃそうか。でも場を和ませる為に良い感じに茶々を入れるのは、有力クランのリーダーである俺の役目だからな」
「何馬鹿言ってるんですか。あの時は恥ずかしすぎて周りに居る仲間達全員が顔真っ赤だったんですからね!反省して下さい!」
「痛っ。あ、謝るから耳を引っ張らないでくれ」
「あはは、相変わらずやな〜」
まるで古いラブコメのようなやり取りを見せる2人に、ある種実家のような安心感を感じる。
「ところで話は変わるが、一緒に食べてる子達はソーイチの仲間か?」
「ああ。俺が所属するクラン【ユーザータクティクス】の仲間達や」
「初めまして、クロードさん。俺はこのクランのリーダーのユサタクです。皆さんの活躍はソーイチから耳にタコが出来るくらい聞いてます」
「そんなに俺達の活躍を広めてたのか!うんうん、殊勝な後輩冒険者だぞ、ソーイチ」
「はは、俺は真実を伝えただけや。ところでウチらのとこに遊びに来たのって例の件についてか?」
「ああ。少しだけ進展があってな。それで良かったらなんだが、この後ソーイチ達の溜まり場にお邪魔して良いか?」
「お、おう。あっちに呼んでも大丈夫やんな?」
「ああ。俺達から頼んだ件ですし、喜んでご案内しますよ」
先程までお酒で赤らめていた顔付きが俺の一言で素面に戻る。俺はその変わり身に驚きながらユサタクに確認。その結果クロード達をホームまで招待する事が決定したのだった。
tips
スライム麺
スライム系に対して塩系アイテムや【乾燥】のアーツで撃破した際に手に入るドロップアイテム【スライムの被膜】を細長く麺状に刻んだ食材。水分がすっかり抜けて乾燥しているので、スープの旨みを存分に吸い込み、食べるスープと呼ばれている。
ちなみに、【乾燥】で倒した場合は食材そのものの味、ソルトボール等の塩系アイテムで倒した場合仄かに塩味がつく。
次回は明日か明後日の午前6時に更新予定です。
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