トンボめがねの超絶美少女④
「…あっ、ああっ! そういうことなら全然構わないよ…ほら…どうぞ…」
慌ててポケットからスマホを取り出し暗証番号を解除し、袖でスマホのタッチパネルを入念に拭くと、竹岡咲留に渡した。
竹岡咲留はそれを少し会釈しながら受け取ると3人の男子学生には背を向けて早速スマホの画面を眺めた。
ものすごい勢いでタッチパネルを操作する爪の音がしばらくの間カツカツと響いた。
「…あの~竹岡さん…一体…何の機能を? 言ってくれたら教えてあげられるかもしれませんよ…♥」
「…ちょっとしたことなんで大丈夫です…。…それより私の名前…何で知ってるんですか…? 初対面ですよね…?」
スマホの画面に素早く目を移動させ操作しながらも鋭く投げかけられてきた質問に、男子学生たちは何も言い返せず、しどろもどろになりよくわからない言い訳を繰り返している。
竹岡咲留はスマホの電話帳をさっと出し「渡村篤郎」で検索をかけていた。
しかし、「渡村篤郎」は出てこなかった。
竹岡咲留は少し落胆した表情をし、ため息をついた。すぐに画面を元に戻し、もう一度、ふーっとため息をついた後、男子学生たちをまた眺め回した。
「…ありがとうございます…。…よく分かりました。あの、渡村さん…渡村篤郎さんという人が3年にいると思うんですが…。…まさか先輩たち…知りませんよね…?」
「…渡村…渡村っ…! …あぁ…あいつか、知っている…。あいつは一体何者なんだ…? …ついさっきまでここで俺たちと話してたよ…。
君とここで会ったのもどうやらあいつのおかげらしいな…。もしかして…竹岡さんも渡村の誕生会に行くのか?」
「…えっ? …お誕生会…ですか? …いえ、呼ばれてないというか…。知り合いでもないです…。…今日渡村さん…お誕生会なんですか…?」
竹岡咲留は渡村篤郎の思わぬ情報に触れて興味をそそられているようだった。クールな表情をしていた竹岡咲留だったが、この瞬間ほんの少しだけ笑ったように見えた。
「…渡村を知らない? …竹岡さんは、じゃあ何で渡村のことを俺たちに聞いたんだ?」
男子学生は竹岡咲留が微かに笑顔を見せたような気がしてまじまじと見つめたが、もうクールな表情に戻っていた。あまりにも学内中、学外にまで評判が広まっているような女子学生たちと関わりがあるように思えて悔しそうにしていた。
「…実は学部の先輩から、どうしても忙しくて自分で行けなくて、急を要するから、3年の渡村篤郎という人に渡してきて欲しいと頼まれたものがあるんです…。…だから知り合いではまったくないです…」
男子学生たちの心をこれ以上、搔き乱してはと思ったのか、竹岡咲留は知り合いではないと強調した。




