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【書籍発売中!】我が家と異世界がつながり、獣耳幼女たちのお世話をすることになった件   作者: 木ノ花 
第三章

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111/111

第111話 サクタローは、サンタさん?

「サクタロー! リリ、フェアリープリンセスみたい!」


「んっ! ルルちゃんも!」


 サンタさんへのお礼の絵を描き終わったところで、リリとルルが尻尾を振りながら飛びついてきた。大好きなアニメが見たいそうだ。エマも賛成のようで、パッと笑みを浮かべて犬耳をピコピコ動かしている。愛らしくてこっちの頬まで緩む。


「それはいいな。私もちょうど見たかったところだ!」


「ええ、いい頃合いですね。私も、この前の続きが気になっていたんです」


 サリアさんとフィーナさんも笑顔で頷いており、満場一致。テレビをつけ、みんなでのんびりフェアリープリンセスを鑑賞する。


 相変わらず戦闘シーンに入ると声援が飛び交い、エンディング曲が流れ出すと獣耳幼女たちが謎の踊りを披露してくれる。当然、動画にしっかり収めてある。SNSに投稿したら、大バズり確定の可愛らしさだ。


 しばらくしたら、お昼の時間が近づいてくる。

 今日は、焼きそばで軽く済ます。夜はごちそうだからね。とはいえ、うちの子たちは揃って健啖家。全員分を作り上げたとき、俺の額には汗が滲んでいた。


 湯気を立てるお皿と食器類をコタツの上に並べたら、手を合わせて『いただきます』を唱える。異世界にはない風習だが、我が家ではもうすっかり定着している。


「すっごくおいしい! わたし、やきそばすきっ!」


「リリもすき! サクタロー、マヨネーズもっとちょうだい!」


 何度か昼に焼きそばを出しているので、みんなもう食べ慣れている。それでも、エマが自分のキッズフォーク片手に絶賛してくれた。


 リリにも、気に入ってもらえて嬉しい。ただし、マヨネーズは控えめにね。お好みで味変してもらって構わないんだけど、かけすぎは体に良くないから。


 ルルはまだフォークをうまく使えないので、最初から俺の膝の上でもぐもぐと焼きそばを頬張っている。口が空になると腕を叩き、次を運ぶよう催促してくる。美味しかったらしく、ニンマリご機嫌だ。


 サリアさんは、まるで飲み物のように三人前の麺を口に流し込んでいる。

 フィーナさんも結構な勢いで食べ進めている。品のある所作こそ崩さないものの、フォークを動かす腕が止まらない。


「サクタロー! リリにもやって!」


「あ、わたしも……ルル、おひざこうたい!」


 お皿から麺が半分ほどなくなったあたりで、エマとリリが『たべさせて!』とこちらへやってくる。


 もちろん大歓迎だ。甘えてくる獣耳幼女たちに、俺はせっせと焼きそばを食べさせていく。いつも通り、我が家の食卓は忙しない。


 残念ながら、自分の手が空く頃には料理も冷めてしまっている。けれど、お世話が楽しいから問題ない。しかも三人がお腹いっぱいになると、今度は俺に食べさせようとしてくれるのだ。間違いなく天使である。


 食後は、それぞれお茶やジュースを飲んでまったり。

 次第に獣耳幼女たちがうつらうつらし始め、お昼寝タイム……というのが、少し前までのお決まりパターン。しかしこの頃は、本当に元気いっぱいで。


「サクタローさん! わたし、おにわであそびたい!」


「あ、リリも! なわとびする!」


「んっ! ルルちゃんもおそと!」


 揃ってコタツから飛び出し、俺の体をグイグイ揺らしてのおねだりだ。

 それじゃあお着替えしないとね、と笑顔で頷く。


 昼間にしっかり運動しておかないと、三人とも夜になってもなかなか寝付いてくれない。体力が有り余っている証拠だ。何より、晩ごはんまでにお腹を空かせておいてもらわねば。ごちそうをたくさん作るつもりだからね。


 そうと決まれば、さっそく獣耳幼女たちを着替えさせる。サリアさんとフィーナさんも一緒に外で遊ぶそうで、自分の服を持って洗面所へ移動した。


 今日は擬態薬の服用はナシだ。我が家は東京といえども山間の田舎に立地するため、庭であればあまり周囲に気を使う必要はない。厚着すれば獣耳も尻尾も目立たないし、もし何かあってもコスプレと言い張れれば問題ない。


 バランスストーンや縄跳びなど、お馴染みのおもちゃを用意したら準備万端。

 みんなのワクワクした声を聞きながら、俺は居間の掃き出し窓を開け放つ。澄んだ冷たい空気が吹き込み、小さく身震いする。


「わっ、さむ~い!」


「ほんとだ! はやくいこっ!」


「んっ! おくつはくの!」


 エマがまっさきに顔を出し、鼻をくんくんさせて外の様子を確かめる。リリとルルもその背にぴったりくっつき、楽しげに尻尾を揺らしている。

 そして俺が、順番に靴を履かせてあげると……。


『ぎょわあぁぁああああああ――!』


 小さな怪獣の咆哮、ではなく大はしゃぎする獣耳幼女の声が響き渡った。

 澄んだ冬の青空のもと、三人は弾かれたように庭を駆け出していき……あ、ルルがコテンと転んでしまった。


 泣いちゃわないかな、と俺は靴を履いて近づこうとした。が、その前にエマとリリが戻ってきて重なるように寝転がり、きゃっきゃと笑い合う。


 そんな心和む光景を眺めたら、俺はやや広めの間隔を取ってバランスストーンを設置していく。難易度は、普通の子どもにとっては高め。それでも興味を惹かれて駆け寄ってきたうちの獣耳幼女たちは、楽しそうにぴょんぴょんストーンを渡っていく。


 獣人は身体能力が高い傾向にあるらしいけど、三人の跳躍を見れば納得だ。

 そこへサリアさんとフィーナさんが合流し、今度は全員で縄跳びを始める。寒さを吹き飛ばすような明るい声が、我が家の庭に飛び交う。


 この調子なら、少し離れても大丈夫そうかな。というのも、晩ごはんの下拵えを済ませてしまいたいのだ。夕方前にはクリスマスケーキの受け取りもある。隣市のケーキ屋さんまで、車で赴かねば。


 そんなわけで、この場はサリアさんとフィーナさんにお任せする。庭の外に出ない、危険な遊びはしない、などしっかり言い含めておいた。獣耳幼女たちは寂しがっていたけど、頭を撫でながら「ごちそうをたっぷり作るからね」と説得した。


 いったん台所へ引っ込んだら、俺は今晩のメニューを頭の中でざっと整理する。

 ローストチキン、ローストビーフ、グラタン、ビーフシチュー、以上の四品を作る予定だ。


 ローストチキン用のもも肉は、冷蔵の品をネットショップの人気店で取り寄せた。骨付きの大ぶりで、照り焼き味を各自二つずつ。ローストビーフも、同じ店で一キロの塊を購入してある。グラタンとビーフシチューのレシピもバッチリ。


 今日ばかりは、栄養バランスなんて気にしない。美味しいものをお腹いっぱい食べてほしい。


 では、下拵えを始めよう。必要な器具などを棚から取り出し、俺はさっそく調理に取りかかる。


 無心で手を動かすこと約二〇分。背後の廊下の方から、トテトテと足音が聞こえてきた。このどこか調子外れのリズムは……俺はあえて確認しないまま、誰がやってきたのか当ててみせる。


「この足音は、ルルかな?」


「んっ!」


 振り返ってみれば、満面の笑みを浮かべたルルがこちらへ駆け寄ってくるところだった。


 大正解。この子は何かとマイペースなせいか、足音だけでなく鼻歌なども個性的だからとてもわかりやすい。


 続いて俺は、いつものように中腰になって両手を広げた。すると我が家きっての甘えん坊さんは、そのまま懐へ飛び込んでくる。優しく受け止めれば、「ふにゃっ」と妙な声をこぼす。なんとも楽しそう。


 見たところ一人のようだけど、何をしに台所へ?

 喉でも乾いちゃったのかな、と俺は抱き上げながら尋ねる。


「どうしたの、ルル。りんごジュース飲みにきた?」


「んぅ、ちがう!」


 腕の中で、ふるふると顔を左右に動かすルル。

 違うらしい。じゃあ、おなかでもすいちゃったのかな。かなりしっかりお昼を食べたはずなんだけど……と、その顔を覗き込む。


 ところが、逆に。

 俺の頬を指で突っつきながら、ルルは不思議そうに問いかけてくる。 


「サクタローは、サンタさん?」


「えっ!? ……違うよ。急にどうしたのかな?」


 ギクリとしながらも、どうにか平静を装って返事する。

 いったいどうやって、『サンタの正体は親』というクリスマスの真相へたどり着いたのだろう……いや、そう考えるのは早計だ。


 子どもは、既存の知識や常識になんて縛られない。それゆえ、物事を独特な連想で結びつける。特にルルは、その傾向が強い。

 俺は動揺を抑え、腕の中のルルに改めて問い返す。


「ルルは、どうして俺がサンタさんだと思ったの?」


「んっ、プレゼントたくさんでしょ! ごはんもいっぱい! サンタさんといっしょ!」


 ああ、なるほど。俺はこれまで、ルルたちに様々な物をプレゼントしてきた。それをサンタと重ね合わせているわけか。

 腑に落ちると同時に、俺は確信を抱く。世界一可愛らしい思考回路だ。


 とはいえ、ここで真実を告げることはできない。クリスマスの魔法が解けてしまう。そもそも、前提が間違っている。俺のプレゼントは、いい子のご褒美なんかじゃないのだから。


「ルルは、いい子だからプレゼントを貰えると思ったんだね。でも、それは違うよ。俺がルルにプレゼントをする理由は、他にあるんだよ。わかるかな?」


「むぅ? サンタさんじゃない? なんで?」


 左右へ交互に首を傾げながら、ふんふんと鼻を鳴らすルル。

 どこか困惑するようなこの仕草も、世界で一番可愛らしい。ずっと見ていられる……けれど、これ以上悩ませるのも可哀想だ。


 その頭を獣耳ごと撫でてから、俺は答えを告げる。


「俺がたくさんプレゼントをする理由はね、それは……ルルが、大好きだからだよ! もちろん、エマとリリもね」


「ルルちゃん、だいすき?」


「そう、俺はルルが大好きなの。だから、たくさんプレゼントしたくなるんだよ。わかったかな?」


「んっ、わかった!」


 ルルの言動は素敵な飛躍が多いから、どこまで理解できているかは不明だ。それでもパッと笑みを浮かべ、ぎゅっと首にしがみついてくる。

 そして俺の耳元に口を寄せ、大きな声でお返事してくれた。


「ルルちゃんも、サクタローだいすきっ!」


 元気いっぱいでいいね……でも鼓膜が破れたら困るから、耳元ではもう少し控えめにお願いね。


 ともあれ、一足先に最高のクリスマスプレゼントをもらってしまった。

 堪らなく嬉しくなり、俺もぎゅっと抱きしめ返す。そのままグイグイと腕を左右に揺すれば、ルルの楽しげな声が温かな台所に響き渡った。

本作の書籍が発売されました。詳しくは活動報告をご確認くださいませ。ぜひお手にとっていただけますと幸いです。

おもしろい、続きが気になる、と少しでも思っていただけた方は『★評価・ブックマーク・レビュー・感想』などを是非お願いします。作者が泣いて喜びます。


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