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おやすみを取ろう

前回のあらすじ

手紙を読み終わった


部屋を見回すと、妙に広く感じられた。というか、実際広い。二階建ての一軒家は一人暮らしには広すぎるのだ。僕が来るまで、ゴミ屋敷なってしまうのも仕方がなかったのかもしれない。これだけ広い家を全部汚すのはある意味びっくりだけれど。


時計を見ると、もうすぐ正午になろうとしていた。いつもだったら朝食を食べ終わった後に洗濯、軽い掃除をしてから昼食の準備をしているところだけれど、今日は何もしていない。というか、何もやる気が起きない。


僕は元々一人暮らしをしていたし、その時も家事は完璧にこなしていた。しかし、いつの間にかアポロとの二人暮らしに慣れ切っていたようだ。彼女の不器用な家事を眺めたい。美味しいものを食べた時の笑顔が見たい。そんなことばかり考えてしまう。


家事が趣味な男なのに、家事が嫌になってしまったら、僕のアイデンティティが無くなってしまうじゃないか。いや、いくら趣味だからといって、ずっと続けていたら嫌になることもあるか。そういうことにしておこう。うん、きっと少し疲れているだけだ。自分にそう言い聞かせた。


ということで、今日はおやすみをとろう。専業主夫は休業だ。少し休息を入れることも、趣味を続けるためには必要なのだ。明日からまたしっかり家事をするから。アポロが帰ってくる頃にはピカピカの家で温かいご飯を用意するから、許してほしい。


そう決めたら、やることは一つだった。とりあえずもう一回眠る。カーテンを閉め切り、昼間なのに二度寝をしてしまう。最高の贅沢だ。眠気は無かったから眠れるかどうか不安だったが、いつの間にか夢の中に入っていた。どうやら、思った以上に疲れが溜まっていたらしい。ただ、夢の中で、弾けるような笑顔を見てしまい、少しだけ落ち込んでしまった。それに、眠りすぎて頭が痛い。体力を回復するために眠ったはずなのに、逆に疲れてしまった。


カーテンを開けると、もう夕暮れだった。今日だけで15時間くらい眠っていたようだ。それは頭も痛くなる。そして、時間がわかった途端にお腹が鳴り出した。今日はまだ何も食べていないし、当然だ。しかし、何も作りたくない。今日はお休みの日だから。だけど、買い物に行くのも面倒くさい。日本だったら宅配という手段があったけれど、この世界だとそんなシステムはないし。どうしたものか。こういう時に、日本の便利さを思い知る。家電とか、サービスとかって当たり前のように存在していたけれど、当たり前じゃ無かったんだな。


でもお腹は空いているので、階段を降りてキッチンへ向かう。食料庫を見るが、ほとんど何もない。そういえば昨日のご飯で食材を使いまくったんだった。仕方ない、面倒だけど買い物に行こう。


着替えて外へ出ると、庭の前にカゴが置かれていた。中を見ると、新鮮な野菜と卵、それに牛乳が入っていた。そして手紙も入っていた。


『今日取れた野菜と卵です。どうやら家の中に誰もいないようなので、ここに置いておきます。また近いうちに遊びにきてくださいね。


ps.プルートウは体力もないし根性もありませんが、とりあえず働いています。娘が常に監視しているから、休むに休めないようですよ。この卵はプルートウが回収したものです。またプルートウの仕事ぶりを笑いに来てください。


トール』


眠っている間にトールさんがきてくれたようだ。申し訳ない。psの方が長い。きっとプルートウについて話したいことが沢山あったんだろう。僕もアポロについて話さないといけないことが沢山あるし、また遊びに行かないと。


それにしても、わざわざ食材を届けてくれるなんて、何てありがたいんだろう。アポロのこれまでの努力は、ちゃんと村のみんなに届いている。アポロがいなくなったことを知ったら、皆悲しむだろうな。どうやって伝えたら良いのか。


それはそれとして、買い物に行かなくてすんだ。村の人との繋がりは、日本では決して無かったものだ。こんな繋がりが当たり前でないことは、僕は知っている。有り難く、卵を使った簡単料理を頂くとしよう。


カゴを持ってキッチンへ戻り、ご飯を炊く。他には何もしない。ご飯が炊けるまでぼーっとする。外の景色を眺めていると。夕焼けが落ちていく様子が見えた。とても綺麗だ。


15分経ち、米が炊ける時のいい香りがリビング一杯に広がった。火を止めて、じっくり蒸らす。そして、その間も外をぼーっと眺める。外はすっかり暗くなった。アポロと眺めた星空を見に行ってみようかと思ったけれど、思わず泣いてしまいそうになったのでやめた。


蒸らしが終わったら土鍋の蓋を開けて、ピカピカのご飯をお茶碗によそう。そして、箸で真ん中に穴を開けて、卵を落とす。ぐるぐるとかき混ぜて醤油をタラタラとかける。卵かけご飯の完成!!!


口を茶碗に近づけて、箸で思い切りかき込む。うまい!!!新鮮な卵だからか、卵の風味が強くご飯に絡みついている。これなら醤油がなくても美味しく食べられたんじゃないだろうか。それくらい美味しい。口いっぱいに頬張りながら、こんなに簡単なのにこんなに美味しい卵かけご飯の偉大さに感服した。たまにはこんなご飯も悪くない。トールさんと、そしてアポロに感謝して食事を終えた。


風呂に入り、体を拭いた。その後、着替えようとしたが、何となく着替えるのをやめた。日本にいる時、僕は風呂上がりはしばらく裸で過ごして火照りを冷ますタイプだったのだ。ここではアポロがあるからすぐに着替えていたけれど、今ならできる!それに聖地と呼ばれる神聖な場所を裸でウロウロするなんて、少し面白いじゃないか。


段々と、一人暮らしの感覚が戻ってきた。うん、一人暮らしも悪くないじゃないか。寂しいけれど、アポロが帰ってくるまでは一人暮らしを楽しもう。この自由な生活を!!!


僕は裸のまま、水で冷やしたミルクを飲もうとリビングへ向かった。しかし、机の上に置いてあったミルクは無くなっていた。


リビングで、金髪の女性がミルクを一気飲みしていたからだ。そして彼女は飲んでいたミルクを思い切り吹き出し、僕は風呂上がりの綺麗な体に思い切りミルクを浴びてしまった。僕たちはしばらく黙ってお互いを見つめあい、その後大きく息を吸った。


「何で帰ってきてるんだ、アポロ!!!!!」


「何で裸なのよ!!!!!変態!!!!!」


勇者は早々に帰宅していた。そして、専業主夫のおやすみは終わった。


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