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手紙を読もう(前編)

前回のあらすじ

『今までありがとう、タカキ』


僕は手紙を机の上に置き、一度深呼吸をした。一度では足りなかったため、何度も深呼吸をした。それでも、手の震えは収まらなかった。僕は震える手で、手紙の続きを読んだ。


『手紙なんて書いたことがないから、緊張しているよ。こういう時、何て書いたらいいんだろう。でも、やっぱり、ありがとうしかでてこないや。


タカキと初めて会った時、私はびっくりしたんだ。何て無気力な人なんだろうって。この人生きていて楽しいんだろうかって』


「おい!!!」


ありがとうと言っておきながら、突然の罵倒が来たから驚いてしまった。もう一度深呼吸して、再び手紙を開いた。


『でも、君が女神様からのお告げの人だってことがわかったから、家に連れてきたの。そうしたら、またびっくりしちゃった。何て失礼な人なんだろうって。勇者に対する敬意が全くないなって。この人こんな性格でよく生きてこれたなって』


「いや、口悪すぎるだろ!!!」


あいつ、手紙を書くのが初めてにしては随分と筆が進んでいるようじゃ無いか。というか、アポロって裏で色々考えているんだな。いかにも天真爛漫ですって顔してるのに。


『そこから掃除をして、一緒に料理をして、ご飯を食べて。あなたと過ごす毎日は、これまでとは全く、本当に全く違うものでした。私はまた驚いたんです。この人は何て、生活に熱心で、生活を楽しむ人なんだろうって。


そして私もつられて、生活が好きになっていきました。勇者として魔物と戦う時も、終わった後のご飯とか、お風呂とか、綺麗な部屋で綺麗なベッドで眠る時間が楽しみになりました。初めて食べたカプレーゼ、昨日食べた唐揚げ、これまであなたが作ってくれた全てが私の宝物です。タカキとの日々が、私の宝物です。こんなことを書くことは恥ずかしいんだけど。でも、タカキはもっと恥ずかしいことをみんなの前で言ったから、おあいこだよね』


「あいつ、また思い出させやがって」


僕はあの日の記憶がフラッシュバックし、赤面してしまった。いつのまにか、手の震えは収まっていた。


『あの日、私はとても嬉しかったんだ。あなたも、私との生活を大切にしてくれていたんだって。あなたが私を支えてくれるって宣言してくれた時、そうしたいんだと言ってくれた時、私、涙をこらえるのに必死だったんだよ。タカキと出会ってから、私はずっと支えてくれてた。でもそれが、迷惑になってるんじゃないかって。タカキは一人で暮らした方が幸せなんじゃないかって。ずっと悩んでた。それでも、あなたとの日々があまりにも楽しいから、言い出せなかった。タカキと、ずっと一緒にいたかったから。タカキと二人で、楽しい生活を送りたかったから』


「…アポロの方がよっぽど恥ずかしいことを書いているじゃないか」


顔が熱い。さっきとは別の意味で。顔を冷ますために、一度お茶を飲む。うまい。もう一口飲みながら、手紙の次の文章に目を通した。そして、僕は盛大にお茶を吹き出した。


『だからね、二人の生活を守るために、私は、この土地を離れることにしました』


アポロはもう、この村にはいない。

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