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とりあえず かなえとく  作者: 深川 七草
夏の雨の章
39/52

39*リカ実家へ*

 連休前の土作りが終わる。

 落花生のせいで苦土石灰がなくなったが、トマトが育てられればどうでもいいことだ。

 それより、使い道のないリトマス試験紙を持ってきた瑠奈も、日焼け対策だと言って大谷おおたに吉継よしつぐのような頭巾をかぶっていた雅もバテバテで、今考えると小袖のやつは去年も頑張っていたんだなと思う。


 連休に入ると、予約しておいたベートとの接見をするために元の世界に戻った。

「リカ、まだまだとは言え、勤めを果たそうとしているようですね」

 ベートの態度は前と違い穏やかだ。

「はい、ベート様。分からないことだらけですが、これからも頑張ります」

 私が調子を合わせているからか、それともソラと話をしたことに感付いているからか、厳しいことを言ってこない。

 どちらにしてもこのままじゃ帰れない。どこにって? 実家へだ。

「ベート様、写し世に行って一年が過ぎました。今後について話がしたいのですが……」


 ベートとの話が終わり、実家へ帰る。

 冬休みに寄ったときは、家族とはほとんど口を聞かなかった。それは一日しかいなかったからではなく、たぶん何もしてないから話をしたくなかったんだ。

 夜、お父さんとお母さん、そして弟と食卓を囲む。

「そういえばこの前、エマちゃんとばったり会ったのよ。なんでもまた、アビーちゃんとも同じ学校になったんですって」

 卒業してから連絡すら取ってないけど、あの二人が一緒なのは不思議じゃないかな。

「ふーん。そんなことよりお母さん、ドレッシング取ってよ」

 れんこんとたまねぎのサラダに、マヨネーズベースのドレッシングをかける。ハム少ねえな……。

「リカも一緒だったらよかったのにね」

「いや、こっちに残ったところで、あの二人とは違うから無理。それより、レンの方はどうなんだよ?」

 私はうざいお母さんの話が嫌になり、三歳下の弟、レンに話を振った。

「俺? 俺は友達から野球部に誘われてるんだけど、今から始めても受験とかですぐ活動できなくなりそうだし、やめた方がいいかなって思いつつも迷ってるって感じ」

「あん? それなら野球じゃなくて、クリケットにしとけよ」

 受験のことなんて知ったこっちゃないが、もう野球はお腹いっぱいだ。

「クリケット? それって、どんなの?」

「いや、知らないけどさ」

 弟は箸を動かし、おかずを食べてから答える。

「道具揃えないといけないし、やっぱりやめとくかな」

「我が弟ながら謙虚で、お姉ちゃん泣きそうだよ」

「まあね。うちは貧乏だからね」

 泣きそうなのは、お父さんであった。

「それはそうと今日、ベート様との話でね……」

 今後のことについて話しておく。

 そして連休が終わる前に、写し世へと戻るのであった。


 ベートとのやり取りを真空先輩に話そうとメールで呼び出す。

 連休でも真空先輩は出かける予定はないらしく、翌日にはマンションの部屋まで来てくれた。

「それで、変わった話でもあった?」

 リビングでソファーに座ると真空先輩はすぐに聞いてくる。

「変わったってことでもないんだけど、夏休みが終わる前に向こうへ戻るよ。ベートと話して、二年の二学期からの編入ってことで約束をしてきた。つまり、内定をもらったってこと」

「そう。おめでとう」

「まあ、ありがとうだよな」

 前に話したように、実地組からの編入で戻った者の評価は高い。

 それでも、素直に喜べない私の気持ちを感じているからか、真空先輩の表情は変わらない。

「真空先輩と話したのを知って認めたのか、推測通りで信仰を集めることを元々期待していなかったから関係なく認めたのかは分からないけど、ベートとの交渉ができたのは間違いなく真空先輩のおかげだから話しておきたかったんだよ。だからなんだ、感謝してるってこと」

 あー、言ってて恥ずかしい。

「感謝されるようなことは何もしてないわ。それよりも小袖とのことが気になる」

「それは天使として“お約束”になっちゃうけど、転校って言うしかないかな。このタイミングだと留学だな」

「そうね。手伝えることがあったら言ってね」

「ああ、ちゃんと自分の口から言うから見ていてくれ」

 連休は終わり、明日からまた学校だ。

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