0話 剣を握る者
漆黒の体に緑の鈍い色をした鋭利なクリスタルを体中に張り巡らされている異形の存在、ミクレスによる脅威に人類は脅かされていた。
そんな中、一振りの剣により世界は大きく変わって行くことになる。
◇◇◇
ここは西の国ダルカンに位置している、荒野の中にあるカタストロスという街だ。また、この街はミクレスが押し寄せる前線にある場所でもある。
中央にある鐘塔は街で一番高い建物で街のシンボルでもある。そんな場所に片膝を立てて座る謎の男がいた。その男は、ボロボロのフード付きのマントを羽織っており、服はとても着古されていて、まるで流浪者のような風貌をしている。
「ん?騒がしいな。向こうでなにかあったのか?」
男はそう言うと、軽い身のこなしで鐘塔を降り、屋根伝いに騒ぎが起きている方へ向かった。
◇◇◇
「クソッ、数が多すぎる!」
「ストーンバレット!ストーンバレット!処理しきれんッ...!誰か応援を呼んでこい!」
高さ6mほどの防壁の上から、複数の魔法士たちが押し寄せる大量のミクレスめがけて魔法を放っている。
カタストロスでは、ミクレスが日常的に押し寄せるため、防壁が築かれ、魔法士が日夜監視し防衛をしている。
だが、今は通常より4、5倍のミクレスが押し寄せている。この異常事態に魔法士は対応できず、もうすでに何人かの魔法士が殺されている。
そして倒しきれないミクレスが防壁を越え、どんどんと街へ侵入していく。
「住民を守れ!被害をこれ以上広げてはならん!!」
指揮官らしき魔法士がそう叫ぶ。
だが、ほとんどの魔法士は防壁外から押し寄せるミクレスで手一杯だった。
もうこの街はミクレスによって滅ぼされる。魔法士も住民も誰もがそう思った。
そのとき、謎の男が屋根から飛び降りざまに一体のミクレスの体を縦にきれいに切断した。そのまま流れるように二体、三体と立て続けに斬り伏せていった。だが驚くべきことに、その男が使った武器は杖ではなく、たった一本の剣であった。
「こっちは俺に任せて、あんたらは防壁外に集中しろ!」
男がそう叫ぶと魔法士たちは、一瞬困惑したがすぐに状況を理解したのか、外のミクレスに集中し始める。
そして、男はミクレスをどんどんと切り続ける。男の動きは更に速く鋭くなっていく。まるで舞でも踊っているかのように、その体捌きは美しく、剣の軌跡には一切のぶれががない。一連の動きが芸術のように洗練されていて、優美であった。
数分後、男が最後のミクレスを切断するとほぼ同時刻に、魔法士たちもミクレスの軍勢を鎮圧することに成功した。
そうすると指揮官らしき魔法士が、防壁から降りてきて男に話しかける。
「まずは、協力感謝する。だがお前はなぜ魔法を使わずしてミクレスに対抗できる?一体何者なんだ?」
男は、振り向くと同時にフードを外す。フードから現れたのは黒髪の憂いを帯びた面持ちの青年だった。
「俺...のことか?俺はただ大切なものも守ることができないただの無力な......失意の剣士だ」




