第20話「わ……わたしが……やりました……」
小佐はもちろん、言い争う松竹梅もびくっとした。みんなの注目が集まる・雑談が静まる。
「萌~々~奈!」
なにを言うのと止めに行く。引っぱって連れ戻そうとする巡条さんを振り払い、モモが聞く。
「松本。パスワード、誕生日とかにしてた?」
「え? してた……誕生日」
「やっぱね。そりゃ乗っ取られるわ」
1月1日~12月31日までぜんぶ試したらゼッタイ当たんじゃん。小林のほうを見て言う。
「な、なんでそんなことするんですか? する意味ありますか?」
メガネじゃないほう、ぽっちゃり佐藤が震えながら擁護する。動機が・目的が解せないと。
「イミだったらあるじゃん、あったじゃん。今コイツらケンカになったってこと」
仲を裂くのが目的で、動機なんて知るか。そういうふうに答えて松竹梅に尋ねる。
「アンタらコイツらに恨まれるようなことはー?」
「いや……ないよね?」
「ない」「ない」
松本が言って竹田・梅原が同調する。恨まれるようなこと以前に関わりがないのは傍目にも。
「だってさ。まーでもデブ、アンタも怪しいから。アタシはこっちって思うけどー」
小林の机をパーでばんばん叩く。巡条さんがやめてって腕つかんだ。
「決めつけないの~! 小林さんも佐藤さんもなにもしてませ~ん! 私がやりました~!」
「バーカ、ムリあるから。カレンはわかってるわけじゃん? もうさー、はっきりさせろって」
「証拠もないのにはっきりしないわ~! 萌々奈のやりかた、怖~い刑事さんの取り調べ~!」
冤罪を生むだけと。それにデブとかメガネなんて言っちゃダメ~ってつかんでる腕振った。
「そ、そうです、証拠はあるんですか?」
佐藤が食い下がる。小林はずっとうつむいて反論も反応もない。得体が・心境が知れない。
「メガネがやったって証拠はない。ないからコイツの――リョーシン? にかかってるから」
「どうしてよ~! ご両親は関係ないじゃな~い!」
今はボケてる場合じゃな~い……文脈からして良心です。黒川も小佐も一瞬ぽかんとした。
「カレンは自分がイジめられてまでさー、アンタだかアンタらをかばったわけ。どう思う?」
ふたりの顔をぬっと・じっと見る。間を置いてやっぱり恫喝刑事みたいに大声で命令した。
「悪いって思うならジハクしろ! なんでテメーらの代わりにカレンが痛い目見んだゴルァ!」
「ごるあ~!」
見るからに弱いけどモモの頭はたいた。……ごるあ~って。真似は・発音はできないよね。
小林・佐藤はもとより教室の全員が雷に打たれる。昨日泣いてたのは誰なのか・夢なのか。
サンダー黒川がごるあ~レンちゃんと小競り合いするなか、とうとう開かずの口が開いた。
「わ……わたしが……やりました……」
「小林さん……!?」
髪を・額をつかまれながら驚く。……モモ、放してやれ。佐藤も驚いて得も言われぬ表情に。
「松本さんたちに……恨みは……あります……。体育で……ソフトボールで……下手で……」
打てよとか捕れよとか聞こえるように言われるのが嫌だった――嫌味で腹が立ったという。
「だ、だから……そうですよ……仲を裂いてやろうって……! お、思っ、たんです……!」
ぼそぼそ小さい声を強めて負けまいと白状する。正義は・道義は自分の側にこそあるのだと。
「ツイックーは……黄島さんたちつながりで……把握してたから……乗っ取りましたよ……」
「お、ま、え……!」
松本がムカっと・ガタっと席を立つ。けど黒川が片手で制した。ジハクをぜんぶ聞けって。
「なにを言ってるの!? 小林さ――」
「カレンも聞けっての! ――黄島らのアカ知ってんなら、アイツらのも知ってんだろ?」
赤崎・青山・後藤のほうを指し示す。黄緑は当然、奴らともSNSでつながってるわけだ。
小林は知ってると認めた。さらに白状する。
「赤崎さんたちにも……恨みが……あります……。ディベートの……あとで……食堂で……」
背中に『調子乗んな』って張り紙を貼られたと。それについては僕らも見てる・知ってる。
「だから……仲を……裂いたんですよ……! あなたとの画像を……印刷・投下して……!」
赤崎も席を立って松本の横に迫った。前田たちは昨日の件で巡条さんが怖いのか今いない。
「あんなに上手く……いくなんて……思いませんでしたけど……。み、見事に……別れて……」
口にも腹にも手を当てて不気味に笑う。赤は顔を真っ赤にかんかんに怒った。
「あんたねぇ……! ゆるさなぁい……!」
「引っ込め、恨み買うからだろうが。こういうメガネが怒らせたら一番やばいってわかれよ」
「そんな言いかたしないの~! ――小林さん、どうして……」
「巡条さんに……悪いって……思ったから……自白したんです……」
席を立って殊勝にも頭を下げた。でも松赤にはそうしない。いよいよふたりは殺気立った。
「待てゴラ!」「やめて~!」
モモとレンちゃんが抑える。肩で息してて怖い……。キレ川で見慣れても女子が怒るのは。
「あ、石田が二千円ないとか騒いだのもさー、アンタのシワザー?」
答えなかった。仕業じゃないのか? なんにせよ小林が巡条さんがかばった真犯人だった。
「松本さん・赤崎さん、気持ちはわかるけれど~……どうか小林さんを恨まないでほしいの~」
代わりに頭を深々と下げた。松赤の溜飲は下がらない。はっきりしたけどすっきりせず……。
◎
「は~い、小林さんを守ろう会~! ぱちぱちぱちぱち~!」




