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第99話 魔獣のステーキ

 着替えを終えると、肉の焼けるいい匂いが漂ってきた。

 オオネズミは、脂の焼ける匂いの方が強かった。

 魔獣はそんなにしないな。

 脂身が少ないようだ。


「あ、マスター。もう焼けてるよー」


 タイムの姿が見えないと思ったら、料理の手伝いをしているのか。

 そういえば、タイムの手料理は食べたことがない。

 食卓で右往左往している姿しか、見ていない。

 ホットサンドを焼いてくれることはあるが、手料理というには苦しい。

 あのサイズでキッチンには立てないだろうし、仕方ないか。


「さ、こっちで待ってて。今持ってくるから」


 靴を脱いで、レジャーシートの上に座る。

 これもタイムが用意したものだろう。

 この世界に、ビニールシートは存在しないからな。

 こうやっていると、まるでピクニック気分だ。

 確か小学生のときに、行った記憶が残っている。

 バスで誰と隣り合って座ったとか、お弁当を誰と食べたとか、そういった思い出は残っていない。

 でもバスから見た景色や、おにぎりの具のシャケや、交換こして手に入れた肉団子は覚えている。

 いっそのこと、そういった記憶も綺麗さっぱり無くなっていれば、モヤモヤせずに済んだかも知れない。

 俺の転生を望んでくれた人は、そのバスに乗っていたのだろうか。

 アニカも靴を脱いで、レジャーシートの上に座った。


「アニカさん、どうぞ」

「ありがとうございます」


 タイムが肉の載った皿を両手で掲げながら持ってきて、アニカに渡した。

 レイモンドさんにはその光景が珍しいのか、興味深げに見ていた。

 やはりこの世界の人には、皿を手で持って運ぶことがないのか。


「俺のは?」

「今時子が持ってくるよ」


 時子の持ってきた皿の片方には、これでもかという量の肉が乗っていた。

 最近全然食べられなかったから、嬉しい量だ。

 これだけの量を時子は焼いてくれた。

 もしかして、機嫌が直った?

 ……あれ、食事制限しても問題ないかの実験は?

 まいっか。

 ダイエットは明日からだ。


「……ん」


 半ば皿を押しつけられるような感じで渡された。

 むむ、まだ機嫌が悪いのか。

 意外と根が深そうだ。


「ありがとう」


 時子も靴を脱ぎ、レジャーシートに上がった。

 そして俺の隣に背中を向けて座ると、左手を差し出してきた。

 つまり、手を握れということか。


「ふっ、時子は優しいな」


 手を握りながら、そっとつぶやく。

 肉の方も優しさが込められている。

 食べやすいように、サイコロ状に切られていた。

 これなら切る必要はないし、フォークで刺すだけで食べられる。


「時子、アニカ、タイムも、ありがとう」

「……ふんっ」


 っはは……

 どうにもやりにくいな。


「ボクは最初にちょっとしかしてないから、いいのに」

「タイムも、塩コショウを振っただけだよ」

「そうなのか?」

「時子が1人で黙々と焼いてたのよ」

「そっか。ありがとうな、時子」

「トキコさん、ありがとうございます」

「……冷めるよ」

「あ、そうだな。ごめん。いただきます」

「「いただきます」」


 エイルとレイモンドさんには悪いけど、先に食べさせてもらおう。

 ……と思ったら、2人して干し肉のようなものを(かじ)っているぞ。

 アレで済ませる気か?

 ま、それはいい。

 問題はこの魔獣の肉がどうなのか、だ。

 フォークで刺すと、結構肉の弾力を感じる。

 刺したところから、肉汁がにじみ出てきた。

 よし、まずは一口。

 覚悟を決めて、口に放り込む。


「あ、結構美味しい」


 脂身が少ない分、さっぱりしていていい。


「んー、ボクはもうちょっと脂身が欲しいな」


 コッテリが好きだと、物足りなく感じるようだ。

 噛むとしっかりとした肉の弾力を感じられる。

 肉汁は少なめだけど、肉の匂いが鼻に抜けてくる。

 ……ちょっと青臭さが残っているな。

 あれだ。

 葉っぱで肉を巻いたものみたいな感じ。

 でも、食感は肉だけという。

 ああ、米が食いたい。

 おにぎりにしてもいいな。

 でもやっぱり本命は、どんぶりかな。

 甘辛ダレと肉汁が、白いご飯に絡まっていたら、いい感じだぞ。


「ご飯……」


 ははっ、時子も白飯が恋しいみたいだ。

 それで、アニカはどうなんだ?

 ふむ、今のところ特に異常もなく、食べている。

 突然牙が生えてくる、とかは無いようだ。

 そもそも人間が毒素に冒されると、どういった変化が起こるんだ?


「アニカ、身体に異常は無いか?」

「うん、美味しいね。エイルさんも、どう?」

「待て待て、まだ安全だと判断するのは早いだろ」

「そうだね。戻って検査を受けるまでは、様子を見ようか」

「ああ、それがいい」

「モナカくん、もう食べ終わったの?」

「腹が減ってたからな。ほら、こっちに来てからは、ろくに食べてなかったし」

「ボクのも食べるかい?」

「いいよ。アニカが食べな」


 久しぶりだから、がっついて食べてしまった。

 もう少し味わって食べればよかったかな。

オオネズミはカルビで、魔獣(オオカミ)は赤身といった感じでしょうか

ま、部位によって違いはあるけれど……これはグルメ小説ではないので割愛w

次回はステーキの焼き方です

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