第69話 剣戟アクション
2022/04/17
第68話は非公開になりました
身分証の登録が終わるまで、自由行動だ。
外には出られないので、結局は軟禁状態だ。
自由とはいったい……
時間は昼を回ったくらいなので、まだ日も高いだろう。
タイムとエイルはやることがあるからと、隣の部屋に引き籠もってしまった。
なので俺はタイムが用意した対戦格闘ゲームを、時子と一緒に遊んでいる。
「タイム、こんなものも作ってたのか?」
「いずれ必要になると思ってね時子の方は、まだコントローラーが必要なんだけどさ。じゃ、タイムもエイルさんのところに行くね」
「あ、ああ」
見ていてはくれないのか……
幻燈機でゲームのキャラクターが、現実に投映されている。
そして俺はというと、そのキャラクターになっている。
右手を動かせば、ゲームのキャラクターの右手が動く。
左手を動かせば左手が動く。
ジャンプすればジャンプして、走れば走る。
ただし、俺の肉体はピクリとも動かない。
そういった脳の命令を遮断し、その命令を元にゲームのキャラクターが動くそうだ。
勿論、ゲームのキャラクターが受けた刺激は、俺の脳にフィードバックされている。
だからゲームのキャラクターの視界が、今の俺の視界だ。
俺の身体は、安全の為にベッドで寝ている。
これも身体が携帯と融合しているからできる芸当だ。
フルダイブシステムといえば、分かり易いだろう。
しかし時子はコントローラーを使って、キャラを動かすしかない。
ただ、タイムが〝まだ〟と言っていたのが気になる。
いずれは俺と同じように、時子もフルダイブできるようになるのか?
なので、時子操るキャラクターと戦っている。
模擬戦と違うのは、俺自身の身体を使わないから、身体的成長はない、という点だ。
主にPSを磨くことになる。
時子相手じゃ遊びにすらならないのでは?
そう思っていた時期もありました。
「やったー! また時子の勝ちだ!」
なんでこんなにくっそ強えんだよっ!
初めこそ、キャラの操作に戸惑っていた時子だが、慣れてくると流れるような連続技や、見事なフェイント、完璧なまでの先読みで手も足も出なかった。
確かに舐めていたというのもある。
だがそれも最初だけ。
今じゃ全力でやっても敵わない。
かすり傷さえ付けられず、完勝されることすらある。
「まさか、ここまで強いとは……」
「あはは、この格ゲーなら先輩と飽きるほどやったからね。よゆーよゆー」
なるほど。
先輩とやりこんで、この結果か。
「って、〝この格ゲー〟?」
「うん。遊び方とか、コマンドとかが同じだよ。剣を振るモーションとか、連続技のタイミングとか、音声とかも一緒かな」
それが本当だとしたら、タイムはどうやってそれを再現したんだ?
ただの偶然?
知っていた……ということか?
いや、音声が一緒なことが説明できないぞ。
「選択できるキャラも同じかも。時子はござるしかやったことないけど」
「ござる?」
「あはは、時子が勝手にそう呼んでるだけだよ。本当のキャラ名は……忘れちゃった。喋り方が〝なんとかでござる〟なんだよ。だからござる」
「へー。そうなのでござるか」
「そそ、そんな感じー。でもまさかモナカくんが参戦してくるとは思ってなかったな。動きや技がどのキャラとも違うんだもん。なんか人間っぽいの」
「当たり前だっ。俺は人間だぞ」
そもそもその格闘ゲームのキャラクターに、俺は居ない。
「あ、そっか。あはは」
「〝あはは〟じゃねーよ。全く。でもそれだけやり込んでた割に、最初素人っぽい動きだったな」
「だって、ゲーム機の画面でしか遊んだことないもん。こんな風に立体的なのは初めてだから。それに相手がモナカくんだし……」
「俺だし?」
「斬ったら、痛そう?」
と言いつつ、バサバサ斬りまくってるのは、何処のどいつだっ。
「あー心配してくれたのかーありがとーっはは。大丈夫だよ。そこまで痛くない」
「え、やっぱり斬られたら痛いの?」
「まぁな。でもそれは模擬戦でもそうだし。タイムが言うには、痛みがないと成長しないからって」
「うわー、お姉ちゃんスパルタだね」
「スパルタも良いとこだよ」
いつも〝もう無理〟っていうところから、1歩踏み込まされるんだよ。
そして満面の笑みで、〝ほらなんとかなった〟って言うんだ。
「じゃあ、遠慮なく斬り倒していいんだね」
「む、勝つ前提で言ってくれるじゃないか」
「ふふ。モナカくんが時子に勝とうなんて、10年早いかな」
「いやいや、そんな訳あるかい!」
「だってモナカくん、動きが読みやすいんだもん」
「だからって、先読みハマりすぎだろっ」
「攻撃を置いておけば、モナカくんが飛び込んでくる感じ?」
「どんだけ俺のこと知り尽くしているんだよ」
「そんなんじゃないよ。いつもの動きに、補助じゃなくて攻撃を反射的に合わせてるだけだもの」
「いつもの動き?」
「あ……ほ、ほら、オオネズミとか模擬戦とか……ぐ、偶然だよ偶然。そう、偶然なんだよ」
「偶然で済まされてもなー」
「だから、違うんだよ」
呟くように、ポツリと言った。
心なしか、表情も暗い。
「なにが違うの?」
「なんでもないよ。だから偶然だって。先輩とか、そんなんじゃないから」
先輩?
俺と遊ぶことで、先輩と遊んでたときのことが思い出されたのか。
本当に時子と何かすると、先輩の影が無いことって無いな。
「分かった分かった。偶然だ、偶然」
先輩の影がチラつくのも、ただの偶然なんだろう。
結局、その偶然が続きまくって、なにもできずに負け続ける。
奇襲が奇襲にならない。
「あはは、見え見えー!」
「くっそー」
扉がノックされ、誰かと思ったら、夕飯を持ってきてくれたようだ。
もうそんな時間なのか。
夕飯もお昼と大差がない。
丸パン1つにスープ。
ソーセージが1本に、ほうれん草っぽい葉っぱのおひたし?
味気ないが、文句も言えない。
食後、フブキの散歩に行きたいとレイモンドさんに連絡を取ったが、断られてしまった。
ならばせめてフブキと遊びたいと言ったのだが、今日は我慢してくれと言われてしまった。
フブキ成分が足りない……
仕方がないので、ゲームで鬱憤を……
「だー! もう疲れたっ」
逆にストレス溜まるっての!
「結局モナカくんが時子に勝てたのは、最初だけだったね」
「言うなー分かってるーマジ凹むわー」
「あはは」
「偶然重なりすぎだろっ」
「そ、そうだね……時子もビックリ! なんて、はは……」
「あー、もう寝るっ! アニカ、シャワー浴びようぜ」
「あ、うん。みんな、おやすみなさい」
「ぐるるるっ」
〝おやすみ〟
「ふん、勝手にしなさい」
「オヤスミ」
アニカと戯れていた精霊たちも、思い思いに精霊界へと帰っていった。
「じゃあ、時子もあっちに行くね。おやすみ」
「ああ、おやすみ。寂しくなったら、いつでも来いよ」
「い・き・ま・せ・ん! べーだっ、ふふっ。ご主人様、お願いね」
「あ、そうだね。分かった」
時子はエイルの居る部屋へ行く為に、アニカと供に部屋を出て行った。
フルダイブ技術は、いつ頃かな
でも脳みそに端子とか挿すのは、勘弁して欲しい
次は倫理問題です
勿論、あっちの世界での、です




