第48話 間が悪いことは続くもの
はぁー。
どうしてこうなった。
最初はエイルとシャワーを浴び、次はアニカとシャワーを浴び、そしてとうとうトレイシーさんとまでシャワーを浴びることになった。
なったというか、今一緒に浴びている。
とはいえ、考えようによっては、最も安全なシャワーともいえる。
エイルのように、身体中を調べられるようなことはない。
アニカのように、身体を必要以上に触られることもない。
今も特になんということもなく、俺の身体を洗っている。
ごくごく普通に洗ってくれている。
これが大人の余裕というものだろうか。
それもそうか。
親が子供の身体を洗うのに、自分の欲望を子供にぶつけたりはしない。
俺はエイルのいっこ上だ。
だからトレイシーさんにとって、俺は子供みたいなものなのだろう。
だからなのか、俺も素直にトレイシーさんに身を委ねられるというものだ。
もしかしたら、トレイシーさんとシャワーを浴びるのが、一番平和なのではなかろうか。
「マスター、その……やっぱりタイムも明日一緒に――」
などと思っていた時もありました。
「あらタイムちゃん。お帰りなさい」
「ただいま……え、トレイシーさん? え? マスター、なにしてるの?」
「やあタイム君、お帰り。なにをしているのかって? はっはっはっ、見て分からないのかい。シャワーを浴びているのだよ」
手を広げ、ここがシャワー室だとアピールする。
勿論、笑顔は忘れない。
白い歯が、キラリと光る。
「マスター?」
「あー、いい湯だなー」
シャワーの温水は熱くなく、且つ温くもない。
非常に気持ちの良い温度で、全身に降り注いでくる。
身体の汚れを洗い流し、続いて頭を洗ってもらう。
その為に、俺はいつもの椅子に座った。
トレイシーさんはシャンプーを泡立て、俺の頭をこしこしと洗い始めた。
どうして頭を人に洗ってもらうのって、こんなにも気持ちが良いのだろうか。
「あートレイシーさん、そこちょっと痒いです」
「はい、ここですねー」
「あーそこそこ。んー気持ちいいー。どうだタイム君、君もトレイシーさんに洗ってもらうといい」
「そうね、タイムちゃんも洗ってあげますよ」
「え? なに? 今どういう状況??」
タイムは俺とトレイシーさんの現状について行けず、狼狽えているようだ。
いかんぞ、そんなことでは。
常に冷静に状況判断をできなくてはいかんぞー。
「ほら、そんな無粋なものは脱ぎ捨てて、開放的になろうではないか」
TPOを考えるのだ。
そうすれば、自ずと答えは出る。
「な、なに言ってるの?」
「そうですよ。服を着たままでは、身体を洗ってあげられないわ」
トレイシーさんもこう言っているのだ。
なにも間違ってはいない。
「トレイシーさんまでなにを……」
「さあタイム君。もしかして恥ずかしいのかい? 安心したまえ。ここでは誰もが開放的になれる空間。なにも恥ずかしいことなど、ないのだよ」
そう、ここはシャワー室。
全裸で居ることは当たり前なのだ。
タイムのように服を着ていることこそ、異常だと言っても過言ではない。
「なんなら、この俺が脱がせてやっても良いのだぞ」
「あら、モナカさん。そういうのがお好きなんですか?」
「はっはっはっ。嫌いではありませんな。さあタイム君、遠慮するな」
「う……タ、タイムは……」
タイムは身じろぎして、逃げ腰になる。
なにをしている。
さあ、共に開放的になろうではないかっ。
「どうしたタイム君。なにを怯えているのだい? 怖くないよー。ほら、上着を脱がしやすいようにバンザイしようか。バンザーイ」
「さあタイムちゃん、おばさんに身体を洗わせて頂戴」
俺とトレイシーさんは、後ずさるタイムに迫っていった。
後退するタイム。
前進する俺とトレイシーさん。
「あはははは」
「うふふふふ」
「う……」
タイムは迫り来る俺とトレイシーさんから逃げようとしたが、とうとうシャワー室の隅にまで追い立てられてしまった。
逃げ場を失ったタイム。
尚も追い詰める俺とトレイシーさん。
「どうしたタイム君。もう後がないぞ。大人しく、服を脱がせなさい」
「タイムちゃん。おばさんがキレイキレイしてあげるわよ」
「タ、タイムは、時子と待ってますっ!」
そう言い残して、タイムはその場から消えてしまった。
ふっ、恥ずかしがり屋さんめっ。
トレイシーさんとのムフフなシーンを期待した人、ごめんなさい
次回は時子の日課が明らかになる




