第101話 新しい武器
拠点を片付け終え、出発の時を迎える。
この魔獣の肉を持ち帰ったら、保安部との一悶着は避けられないだろう。
それでも、食料となるなら、持ち帰るべきとは思う。
憂鬱だ。
「なにを言っているのだよ、僕たちはまだ帰らないのだよ」
レイモンドさんから、衝撃の事実を告げられてしまった。
目的の魔獣は倒したというのに、まだなにかあるというのか。
「魔獣を殲滅に来たのだよ。1匹で満足してもらっては困る」
つまりあれだけ激しかった戦いも、ただの前哨戦に過ぎない。
準備運動だというのだ。
本番はこれから。
となると、消耗したバッテリーの充電をしっかりしたいところだ。
朝の食事と時子に抱きついたことで、それなりに回復はしていると思う。
いや、回復が目的で、抱きついたんじゃないからな。
……って、誰に言い訳しているんだか。
連戦となると、バッテリー管理が難しいぞ。
タイムの攻撃や防御は強力だけど、多用はできそうにない。
アプリの使用も控えないと。
戦いながら充電できれば、楽なんだけどな。
でも時子を危険にさらすような方法は、進んでやりたくない。
「マスター、これ使って」
そう言ってタイムが渡してきたのは、一振りの刀だった。
「これは?」
受け取って、軽く振るってみる。
今までのものより、少し重い。
でもバランスはよくなっている気がする。
重くなっているのに、振りやすい。
「野太刀の改良版だよ。切れ味が上がってると思う」
おお、新しい刀を打っていたのか。
……まさか鎧まで完成していないだろうな。
「でも熟練度も初期値だろ。試し切りしてからの方が、よくないか?」
いきなり新品を実戦投入するのは、不安が残る。
切れ味だって、初めのうちは使い慣れたものの方が上だ。
熟練度がある程度上がらないと、最初はキツい。
とはいえ、通用しなければ直ぐ切り替えられるのが、幻燈機の強みだ。
「大丈夫だよ。最初だけだから」
「最初だけ……」
確かにその通りなんだけど。
その最初を魔獣で乗り越えられるかが不安だ。
「だって今の野太刀、熟練度が200くらいで上がったり下がったりを繰り返してるじゃない」
「それは……俺の腕が悪いから」
きっちり刀を当てないと熟練度が上がらない。
しかも上がれば上がるほど、上がりにくくなる。
今朝の魔獣戦で尻尾を切り落としたとき、熟練度が結構下がった。
上がりにくく、下がりやすい。
それ故200の壁が越えられず、未だカンストしていないのだ。
「ううん、あれが野太刀の限界だよ。バランス悪いし、切れ味もよくない」
「そんなことないぞ。幅広の剣に比べたら――」
「ヒノキの棒と比べられても、嬉しくないよっ」
「ヒノキの棒って……」
確かに初期装備という意味では、同格なのかも知れない。
それでも、幅広の剣がヒノキの棒と比べられたら可愛そうだ。
刀匠タイムとしては、そのくらいのできだと言いたいのだろう。
「分かった。頼りにしているぞ」
「うん、まだまだ改良の余地はあるからね。目指せ、天叢雲剣だよ」
「ははっ。なら、こいつはなんていうんだ?」
「あー、考えてなかったよ」
「〝正宗〟とか〝村正〟は刀匠の名前だったよな。ならこの刀は〝タイム〟とか?」
「そんなの、恥ずかしすぎるよっ!」
「なら、また無名か?」
「んー、黒埜とかどうかな」
「黒埜?」
その名前はどっから出てきたんだ?
そんな名前の名刀が、あるのかな。
ま、タイムがいいなら、いいか。
「うん、いいんじゃないか。名刀黒埜、これからよろしくな」
「名刀じゃないよぅ!」
「ははっ、いいじゃないか。鬼を殺したことがなくても、〝鬼殺し〟なんて刀もあるんだから」
ドラゴンキラーとか、オーガキラーとか、ゴブリンスレイヤーにドラゴンスレイヤー。
……ドラゴン多いな。
他にもあるが、そんな名前の武器が店先で売っている。
売っているのはゲームの中の町だけど。
「そうだけど……それとは違うと思う」
「気にするな。名に恥じない働きをしてもらうさ。次は名刀じゃなくて、宝剣とか、神剣とか、打ってくれよ」
「むぅー要求が高いよぅ」
「でも、打つつもりなんだろ」
「言われなくても打つつもりだったけどさー」
「ならいいだろ」
「思ってるのと、言葉にして出すのは、違うんだよ」
確かに、思っているだけと、それを言葉として出すのは、全然違う。
思うのは簡単。
それを口にするのは、とてもエネルギーを必要とする。
「頑張れるって?」
「違うよぅ。タイムごときがーみたいな感じで、恥ずかしいのっ」
でもさっき〝目指せ、天叢雲剣〟とか言ってなかったか?
それはいいのか。
「自分で〝ごとき〟とか言うな。大きくなれないぞ」
「あはは。そうだね」
一休み的なお話しでした
次回は信用していないのは○○である




