93 変化。
兄が出来た。
友人が出来た。
そして逆止弁が出来た。
《吸い上げ易い》
「あぁ、ですよね」
ドM変態職業聖職者こと、スーちゃんのお陰で、身に肉が付く様な状態にはなりましたが。
溢れない様にとも魔力を吸い上げて頂いていたルーイ氏には、秒で分かられました。
《大丈夫だった?》
「痛みを引き受けて頂ける方に、肩代わりして頂きました」
《そこまで》
「ご存知でしたか、引き受け人」
《ウチの周辺では贖い人、だね》
「何で言わなかった?」
《個性なのに、気にする者が多いって聞いてたから。僕が吸い上げていれば困らないし、流すのが適切かなと思って》
「誰しもムチムチで、ココで何とか馴染める程度、別に拘りが無いので寧ろ少しは気にしろと思っていたんですが」
《だってネネはネネだし、ごめんね?》
「何でも良いんですか?」
《ネネなら何でも良い》
「少しは拘って頂けます?」
《スライムの僕を受け入れないネネは違うと思う》
「あ、寿命、どうなるんですか」
《どうしたの急に》
「他のスライム種にお会いしました、産むとコチラの寿命に沿うか人種として固定されるか、若しくは子が成人する前迄の寿命となるそうですが」
だからこそ、スーちゃんは子の事で渋っていた。
そりゃそうですよ、未だ見ぬ子より大事な人を優先する。
《うん》
「うんじゃないが」
《出来るならネネと同じ寿命が良いけど、そこはどうにもならないから》
「悪魔との契約は、難しいですか」
《悲しまれるのも、良いなと思って》
「ド変態」
《先に死んだら悲しんでくれるって違いが有るし、レオンハルトが居るし》
死生観。
「長生きこそ美徳の世だったので、死生観の若干の違いに未だに戸惑っています」
《でも、向こうでも出産の危険性は有るよね?》
「確かにそうですが、確かに、命が軽い」
確率は多少は減っただろうとは思う。
妊娠は病気では無いとも。
けれど、時と事情によるだろう、と。
出産、出産後の死亡率は0では無い。
そして悪阻と言うものが有る。
なのに母体の低体重を良しとしている。
本当に愛しているなら、適正体重で無理をして欲しくない筈。
が、不健康な理想体重を押し付け、叶えないとなると皮肉るか誹謗中傷か離別をちらつかせるか。
いや、私に起きた事では無いですよ。
ウチの家系は太りにくい方の体質で、実際に姉はモデル。
処世術として多少は努力しています、と姉はしていたが、低カロリー食品と散歩が好きなだけの人間。
寧ろ増量に苦心していた程。
そこにもう、ワラワラと低体重フェチが来るもんだから、姉ブチ切れ。
サッサと産んでサッサと死ねとでも?と、その愚痴を漏れ聞いてしまっただけで。
いや、コレか、脇が甘いぞ家族よ。
いやでも、そこまで隠す必要も無い事だし。
《ネネが居ない世界で長く生きるのは、地獄だよ?》
「不死では無い方が良いとは思いますが、まだ、慣れませんで」
ココには様々な寿命が有る。
その事に順応出来ていない。
向こうなら動植物には様々な寿命が有るとは知っている、けれどココには人の形をしたモノも、そうなっている。
産んで直ぐに亡くなる種。
子が成人直前に亡くなる種。
相手の寿命に沿う種。
《ネネは、ずっと産む側だと思ってたもんね》
ココでは思ったよりも簡単に性別が変えられる、そして産める。
「向こうには確かに早過ぎる選択肢です」
選択肢が多い程、悩みも増える。
産む一辺倒だったのが、種付けする側。
しかもイケメン2人に種付け。
頭が可笑しくなる。
何だよ、イケメンに種付けて。
《結婚したら考えよう?》
「まぁ、そうですね」
はい、再びお勉強の時間です。
『ではネネ様お待ちかねの、五行です』
「はい、宜しくお願いします」
向こうの五行は良く知らないままなので、比較検討は出来無いけれど、少なくとも向こうと同じらしく。
教本は東の国の物を使いながら、お勉強。
乳は土、棗と山葵と牛、それと米に対応しており。
つまりは山葵醤油ステーキ丼、デザートに棗。
ただ、結局はバランス。
前後の火・土・金も考慮しなくては滞ってしまうので、満遍なく食べる事が良しとされており。
下手に偏ると、寧ろ冷え性やのぼせにつながる、と。
はい、つまりは。
バランス良く食え。
《どうどう》
「はぁあああ、もう、魔法に頼るしか無いですか」
《何故、そうまで変えたいのでしょう?》
向こうの常識だったから。
コンプレックスだったから。
で、それを変えて本当に良いのか、と。
コレも姉からの話です。
醜形恐怖症になる位なら、裏の世界で生きてた方がマシだ、と。
瘦せている事には、健康面で気にはしていたけれど。
それこそ顔は個性だ、と。
それは恵まれているからだと言う事は百も承知だが。
目的は何なのか、何処なのか、と。
際限が無くなる様な事に時間と金を費やしたくない、好きな相手の子を産んで散歩しまくる方が良い、と。
何だかんだ言って、姉は容姿に恵まれているからだろう、と思っていたし。
今でも思っている。
ただ、目的は何か、何処が終着点となるのか。
そう考えると。
恥ずかしくない程度に欲しい、ただそれだけ。
だが、それだと周囲の環境によって基準点が変わる。
しかも、周囲の反応次第では、更に更にと。
なりそうだな、と。
「恥ずかしくない程度に、欲しいと思ってました」
《ですが、人其々、無い事は恥では無いと理解してらっしゃいますよね?》
玉響ちゃんも、そこまでは無い。
けれど不満は無いし、不満が無い事を問題とも思わない。
なのに、何故か、自分には問題が有る様に思えている。
コレは悪い意味でダブスタ。
ある意味で二律背反だ。
アイツのせいだ、コレは差別と同じ。
気にしないけど、もう少し有った方が良いよね、だとか。
有るには越した事無いだとか、気にしないのは女らしさに欠ける、だとか。
無意味な評価を常識と捉え鵜呑みにしていた。
義姉ともう1人の姉と妹は、豊満。
妹は邪魔だの一言、義姉に至っては捥ぎ取りたいとか言ってた。
持つ者の悩み、持たざる者の悩みが有るのは承知しているのに。
「好いた相手に言われた事が、何処までもヒビを入れています」
以前なら、気にするのか、そうか。
程度だった。
けど気にしないといけないのか、好かれるなら気にしないと、そうして思考が歪んだ。
あまり他人のせいにするのは良くないが、少なくともお前が悪い。
気にさせといて気にし過ぎだ、は、ぶん殴られても良いでしょうが。
クソが、コレが差別製造の構造か。
《今から誰か、殴りに行きましょうか》
「はい」
ネネ様、意外と体術がお好きらしく。
熱心に打撃を打ってらっしゃる。
『上手ですよネネ様ー』
ネネ様には集中力が有る。
真面目で誠実で集中力が有る。
なのに、たかが胸が無い程度の事を、かなり気にしてらっしゃる。
《ノーク、聞こえていたか賭けようか》
『殿下はネネ様が小さい事を気にしている事も、気に入ってらっしゃいますかね』
《うん、そうだね》
どちらの意味で。
いや、両方ですかね。




