94 黄の虚栄国。
筋肉痛の中。
黄の虚栄国に入った。
筋肉痛は魔法で治せるらしいが、筋肉だか細胞の増える感触が非常に気持ち悪いらしく、止めた。
「スズランです、宜しくお願い致します」
「あぁ、お立ち下さい来訪者様。未だに来訪者様に満足して頂けるかどうか分かりませんが、どうぞ、心行くまでご滞在下さい」
「はい、ありがとうございます」
中年と言えば中年男性ですが、好々爺程、警戒してしまう。
だって元老院がアレですよ。
幸いにも赤の憤怒国では何も無かったですけど。
いや、ノーク君の事は有りましたけども。
全く、気が抜けない。
「いや、ウチは常に統治で手一杯だと言うのに、元はアナタ達のせいですよ」
『すまない』
《いや面目無い》
「だがね」
「だがね、じゃありませんよ、我が国は観光資源を主としている。アナタ達の様に資源が豊富な方々は良いですよ、ですがね、我が国の資源は観光。限られた資源で最高のおもてなしを提供し、対価として金銭を授与、そうして国を保っているんです」
「いや分かってはいるのだがね」
「先代なのですから勿論お分かりでしょう、なら、何故あそこまで警戒されてしまっているのですか。もう、ヒシヒシと伝わってきて、私は悲しい」
『すまない』
《面目無い》
「意外とだね」
「舐めていたからでは」
『尤もだ』
《仰る通りで》
「確かに若さに」
「見慣れてらっしゃるでしょう、東の者は若く見える、ですが成熟度は外見からは推し量れない。はぁ、分かりますよ、帝国領では久しく訪れた来訪者様。憤怒国には年相応のアジアの者、そして強欲国には同じく外見共に年相応の者が現れ、あの様な者は稀有だった。ですがね」
《お父様、そろそろ》
「後進の者の事も、もう少しお考え下さい。それにです、善き者を過度に試す事は、結局は愚か者だと精霊に鼻で笑われてしまうのですから」
『あぁ、肝に銘じる』
《面目無い》
「すまんかった」
《お父様、さ、行きましょう》
「では、半ば八つ当たりとなってしまいましたが、どうぞコレからも宜しくお願い致しますね」
お父様は、とても楽しみにしてらっしゃった。
だからこそ、警戒され悲しんでらっしゃる。
《確かに人の良さに漬け込み、ご協力頂く事が難しくなってしまったのは分かりますが。試さねば出なかった答え、お父様もいずれは元老院に入られるお立場》
「分かってはいる、けれどもだ、アレを目の当たりにするとだ。娘に嫌われた様で、酷く胸が痛む」
《誤解さえ解ければ》
「それが難しい事なのだよ、酷く」
《私も居りますよ?》
「あぁ、そうだな。だが警戒を解かぬ来訪者様を責めてはならないよ、決して」
《はい、勿論》
ですが、確かにお父様が懸念なさっていた通り。
私は、全く受け入れては頂けませんでした。
「ありがとうございました、失礼致します」
《あの、お食事をご一緒に》
「いえ、ありがとうございます、どうかお気遣い無く」
勘では、悪い方では無いとは思う。
けれど、正直、どうでも良い。
私的に関わる理由が見当たらない。
言葉が通じるので不自由は無いし、出掛ける時はカイル氏とこの国の兵だけと言う、少数精鋭が楽だし。
向こうだって仕事だろうし。
玉響ちゃんに侍女ズ、カイル氏にノーク君、スーちゃんにユエちゃん。
控えにはケント氏も居る。
コレか、このせいで友人が居なかったのか。
いや、居るは居たが、偶に会って話す。
それで十分で。
それで十分じゃダメなのか?
いや、それは流石に無いにしても。
《ネネ、どうしたの?》
「黄の姫と仲良くする必要は有りますか」
《んー、無いんじゃない?》
なら、何故関わろうとするのだろうか。
いや、知ると責任が増えるし、突っ込まないでおこう。
「じゃあ鵜呑みにします」
では、ココで得た知識のおさらいをしよう。
虚栄国は砂漠地帯に存在しており、山々で2つの区画に分かれている。
東側は更にモンゴル等の3つに地区分けがなされ、西側は上はアルタイ、下はペルシャとよばれている。
帝国領の北以上に、超多民族国家。
けれど諍いは無いらしい。
その理由の1つは砂漠地帯。
物資の資源が乏しく、各国からの輸入に幾ばくか依存しており、観光資源を要としている。
それでも僅かに物資的資源は存在する、それが羊や馬、西側にはヤクや山羊も居るらしい。
放牧し繁殖を行い、食糧は勿論、観光資源としても活用している。
乗馬や毛刈り、搾乳や屠殺まで、上流はココで体験学習をさせるのが常となっており。
東側はクソデカいキャンプ場と牧場が合体している、まさに親にとっての理想的な知育体験場。
ただ、大人も楽しめる場所も有る。
西側にはベリーダンスや蛇使いが居り、工芸品も豊富に有るらしく。
追々、そこで存分に楽しむつもり。
母も行った事が無い地域。
正直、とても楽しみです。
《あの、少し宜しいでしょうか》
ネネ様がダメなら、僕、ですか。
確かに王子として紹介はされていませんけど、少し舐められている気がしますね。
ですけど、何を探ろうとしているのかは知るべきで。
『はい、何でしょう』
《言葉が通じるんですね、助かります》
『共用語ですから、何か問題でしょうか』
《いえ、試練を終えられた事は存じているのですが、何かスズランの方の》
『お答えして良いかどうか、改めて尋ねておきますね』
《その、警戒なさってらっしゃる事は重々承知なのですが、せめて何か好みをお教え頂くワケには参りませんでしょうか》
どうして、こんなにも必死なのだろうか。
『いっそ、ハッキリと目的を仰って頂けると助かるのですが』
《損益無しに、ただただ、親交を深めたいだけなのです》
『何故ですか?』
《何故、とは》
『情報はソチラにいずれ齎される筈です。他に親交を深める理由や、そもそも交流をなさって、スズランの方に益が有るのでしょうか』
《そこまで》
『大変申し訳御座いませんが、こうした事も含め相談させて頂きますので、どうかご理解下さい』
《はい》
戦は無いけれど、ココは超多民族国家。
万が一にも内乱に巻き込まれては困りますし、先ずは魔獣に警戒させるべきですかね。
「ありがとうございました、では」
《あの、もう行かれるのですか?》
「はい、歴史を学べばキリが無いですし、やはりココは現地での実地調査を優先すべきかと」
《私も》
「いえ、お忙しいでしょうし、付き添いの兵には十分に良くして頂いておりますので。どうかお気遣い無く、では、失礼致します」
ぶっちゃけ、兵の方はマジで様々な民族の方々を集めて下さったので、超有益なんですよね。
しかも気さく、マジ気さく。
もう、親戚の伯父ズ。
アレは食べたか、アレはしたか、〇〇は良いぞと。
なので、この国は十分に機能しているんだな、と。
もう王族と関わる理由が本気で見出だせないので、さっさと実地調査、と言う名の観光をガチでするつもりです。
紫禁城はちょっと緊張したし、殆ど王宮内だけの観光だったんですよね。
いや、広いので凄い楽しめましたけども、ココは更に馬鹿広いのでゆっくりマイペースに楽しみたいんです。
ヤク鍋ですよヤク鍋、ラムは元々好きな方だったのが大好きになりましたし、ヤギ乳の酒とかも飲んでみたい。
そう、娯楽が無いと結局は食い道楽になるんですよ。
確かに民族楽器には多少は興味が湧きますけど、プロの練習時間って本当にヤバいので、なら遊園地に関わりたい。
そうか、ココ用の遊園地を考えた方が良いのか。
自分としては、かの有名な牧場も遊園地の範囲内に入れているし。
目指せ、お子様も楽しめるほのぼの遊園地。
クソ、無理してでも海外の遊園地に行けば良かった。




