30 当たり前。
当たり前なんだけど、新しい事実が次々に出てきた。
魔女と呼ばれた来訪者と大罪の話の、ある意味で違う側面から見た物語だったり。
ネネちゃんがオアシスで庭園だったり、食物連鎖の頂点は人種じゃなかったり。
違う世界なんだから、当たり前と言えば当たり前なんだけど。
コレ、最初の方に。
「こうした事を説明する機会は、非常に繊細で時と事情を選んだかとは思いますが」
《折を見て、うーん、確かに今まで言う機会は無かったかも?》
「ですが、いつ言うつもりだったんでしょうか」
うん、そこだよね。
『人種の領域以外に行こうとした場合や、逃げ出そうとした場合だ』
「あ、逃げ出そうとはしなかったんすね」
「そりゃ未知の領域ですから、ただ逃げ出すかどうかは考えましたよ、好みでも無い男に親し気に接近されて見極められてるかも知れない。と思っていたので」
『本当にすまなかった』
「ですけど慣れ、ですかね、さして不快で無くなってしまって非常に困っています」
「ダメっすよ、限られた中で選ぶとか、俺の娘がされたら俺はキレます」
《ですよねぇ》
「ですが、大きなお皿いっぱいに並べられても、きっと困ったかとは思います」
《魔獣選び大変だったもんねぇ》
「あー」
「もう、運かと、一種の流れが有るのだろう事は受け入れるつもりです」
《ですが?》
「もっと豊富に出会わせろ」
『あぁ、本当にすまなかった』
《ケントさんも、来訪者様は赤ちゃんって立場?》
「あー、そう言われると確かにそうっすけど、今までは俺の娘だったらって感じでしたね」
「お父さん」
「ただこう育ってくれたら、結構安心っすけどね、こうしておちゃらけられるんすから」
《パパとお呼びしても?》
「いやー、せめて産まれてからにして貰えますかね?」
「あ、ご出産はいつでらっしゃいますか?」
「まだまだ、半年は掛るんすけど」
「じゃあ半年を目途に宜しくお願いします」
《うんうん、産後こそ地獄だけど、絶対に経験すべきだしね》
「やっぱそうっすかねぇ、産後半年一緒に居たヤツと居なかったヤツだと、家の中でも外でもかなり違うって聞いてるんすけど」
《うん、だって1番大変なのが生後半年までだから、家族もその期間だけは必ず皆良い子だったんだ》
「ユノちゃん大家族の子なんですよ」
「おぉ、どうだったんすか?何か困った事は?」
《ウチ、お父さんが年の半分は全く居ない状況で、でもお母さんは家政婦のプロだったって後から知って。お金とかでも、実はそんなに困らなかったんだよね》
「それはユノちゃんが居たからだと思う」
《ありがとう。でも、ウチって他の大家族と違うから、見本になるかどうか》
「やっぱそうした繋がりが有るんすか」
《ううん、あー、えっと》
「世の大概の事を映す魔道具が有ったんですよ、娯楽を垂れ流し続ける堕落の魔道具」
《そうそう、そこに良く色んな大家族が映ってたんだけど、ずっと大袈裟に演出してるだけかと思ってたんだよね。ウチは少し田舎の方だから家が広くて、それなりに部屋も有ったし、離れとかも有って。稼ぎに行くにも、遊び半分の出稼ぎに出てた、って感じなんだよね》
「あー、コッチは田舎程危険なんすけど」
「コッチは逆ですね、相当の田舎に行かない限りは」
《だね。ご近所さんが色々と手伝ってくれたり、それこそお裾分けも多くて、お礼に料理の相談に乗ってたりして。本当、田舎で大家族になれば良いのにって、だからちょっと兄弟姉妹が多いだけの感覚なんだよね》
「私としては、近所付き合いが大変そうだなと思うんですが」
《そこは口の堅いのを使って、今日は忙しいだとか人払いしてたから、そこは上手な人じゃないと難しいと思う》
「あー、何処にも居るんすね、お節介だとかって」
《うん、でも親戚の叔母さんが居る土地だったから、コツを教えて貰ってたんだと思う。だから皆がウチを知ってて、皆が知り合いで、全然大変じゃ無かったんだよねぇ》
「悪さをさせないには、多少は相互監視は必要ですからね」
《でも知られ過ぎてると大変なのも分かるよ、取材が来て定期的に追い払ってたから》
「来るんだ」
《やっぱり自分達でも見てたから、見たい人は居るんだろうなって思ったけど、やっぱり嫌だよね》
「分かる、昔は私抜きでって頼んだし」
《あー、やっぱりネネちゃんもだよね》
「そんなんで小銭は要らんって皆が断ってくれてたんだけど、そう断るの私のせいかなって思うと、いたたまれなくて荒れそうになった」
《でも荒れない》
「兄弟姉妹のガス抜きが上手くて、何か有ると遊園地とかプールに連れてかれてて、忘れてた」
「遊園地?」
「何で無いですか、それらしきモノが有っても良いじゃないですか」
『あ、いや、何の事だか』
《大人も子供も楽しめる遊び場ですよ、有料ですけどね》
「何それ凄く楽しそうじゃないっすか、何で無いんすか」
『調べさせてくれないか』
「コチラでも調べますんで」
「いや、その前に休憩しましょうよ、そろそろ昼飯の時間なんすから」
《賛成ー、ちょっと落ち着こう》
ケントパパが居てくれて良かった。
立場の違いをネネちゃんは理解してくれるから、こうした人には強く出ないんだよね。
「で」
《どうどう》
『概要は分かった、だが問題が有ったからこそ』
「要塞を築く技術に転用出来てしまう、ですか」
『あぁ』
《えっ?何で?》
「木製のコースター」
《あぁ、成程》
『ソチラは、何か出なかったのか』
「はい、ユノちゃんに阻止されてました」
《赤ちゃんだからお昼寝させただけだし?》
「遊園地が無いのは悲劇です」
《ほら、こう興奮状態だったので》
今までに無くネネは目を輝かせ、嬉々としている。
『あぁ、だが一つ良いだろうか、ネネはどうして』
「誰でも楽しめるからです」
《特定の遊園地が好き?》
「いえ、遊園地と言う存在がもう、好き」
《まさかの遊園地オタク》
「いや、そこまででは、外国のは行った事が無いし」
《オタクの謙遜だ、国内は全部行ってるでしょ》
「うん」
《はいオタク》
「でも、マジモンは」
《はいはい、コレ凄く有益だと思うよ?安全な娯楽で、しかも誰もが楽しめる筈なんだから、何で言わなかったの?》
「てっきり、それらしき何かが有るのかと」
《好き過ぎて盲点化してたんだ》
「多分」
『ネネが好きな事は叶えたいんだが』
「かなりの弊害が、いえ、そもそも知識が薄いかと」
『あぁ、情報は僅かだった』
《夢が無いなぁ》
「あぁ、多分、食物連鎖の頂点に拘る方が多かったのでしょう。より人種を盤石なモノにと、私も先ずは衣食住、それから教育と考えましたから」
《でも娯楽が少ないよねぇ》
「だからこそ、子孫繁栄が叶ったとも言えるかと」
《あぁ、成程》
「規制しましょう、短命種の利用制限をします」
《作る気満々だ》
「無い方が害悪です」
《ふふふ、ネネちゃん、今までで1番生き生きしてるかも》
「確かに、したい事が出来て楽しい事で、最高です」
《ほら、情報の立ち会いをお願いしますね》
『あぁ、分かった』
そして黒の強欲に事情を話し、図書を取り寄せさせ、合同情報開示となったが。
ココも同様、情報は少なく。
『良い情報なのだけれど、ね』
「人種の進歩に不要だと思った方が殆どなのでしょう、必死過ぎてキモい」
《確かに、コレだけで判断するのは間違ってると思うけど、情報が偏ってる気がする》
『ふふふ、アナタ達の信奉する神は、どなたかしら?』
「あぁ、私は神道仏教をそれなりに信仰していますが」
《うん、私もそんな感じです、特定の神様を信仰してるとかは無いですけど》
『多神教者の数をご存知かしら?』
《あぁ、成程、母数が違うもんねぇ》
「そして理が同じでは無い場所で、同じ理にしようとした、成程」
《うん?》
「多分、7英雄と崇めたのも、大罪と地に貶めたのも来訪者」
《あー》
『ふふふ、スズランの根は太く、深く根付いているのね』
「全ては兄弟姉妹のお陰です、色々と教えてくれましたから」
『それが養分となり、しっかりアナタの花になっている』
「ですが知識は時に凶器にもなります、偏見、差別を生み出す事も出来てしまう」
『それは知恵を授ける時期、段階を間違えれば起こる事、私達は既に理解の段階は終えているわ』
「ですが、先程の私の発言は偏見も」
『何を偏った見方、と言うのかしらね。外側からどう見られているのかを知らず、偏見だ、と謗る者は単なる無知な愚か者。それとも、アナタはアナタの見たモノに、どう偏りが有ると言うのかしら』
「今は、気付かないだけで」
『気付こうとしていないのなら、アナタの家族が指摘しなかったのなら、私は無いと思うわ。それに、稚拙な偏りに私が気付かない、とでも侮られているのかしらね?』
「いえ」
『謙虚な国民性だと聞いているわ、だからこそ災害でも乱れる事が無いとも。もしアナタ方の様な者が7英雄の時代にいらっしゃれば、人種が減る事は少なかっただろう、そう先王も仰っているわ』
「私は余所を詳しくは知りません」
《では、そこは私ですかね》
『そう、ではお願いね』
異世界で異国の事が役に立つって、不思議。
《正直、理路整然としてるなと思いますね、それに仕事についても褒められる理由が良く分かりました。うん、当たり前が違うんです、その当たり前の基準値が違う。サービス精神旺盛なんです、それこそ外部からのお客様だと分かれば丁重にもてなしますし、家に入れ同じ種として扱う》
同じ言葉を話して、同じ礼儀作法を行う。
そうすれば何処の国でも親し気に接して貰えるけれど、どうしても違いが問題になってしまうし、似た種類の事で言い掛かりを付けられしまう事も有る。
「それは何処でも起こる事だと思いますし、そもそも数が」
『コチラでは、単一民族だ、とされているけれど』
《そこも議論が有るんですけど、まぁ、見た目は似てますね》
「まぁ、外見の差異より、寧ろ言語の壁は有りますね」
《確かに。あ、コレ、非公式か何かって事でお願い出来ます?私達は国を代表しての事までは言い切れませんし、責任は持てませんから》
『そうね、一国民としての意見をお伺い出来るかしら?』
《はい、喜んで》
家族がそこまで大袈裟に言っている、とは思わなかったけれど。
本当に。
「ウチの国なら、有り得ない」
《だよね本当、マジで自分の国って大当たりだと思ったもん》
『そう思って頂ける様に国を整える事こそ、国の最高位としては目指すべき所なのだけれど、諸外国は何を考えているのかしらね』
《そこは本当、しがらみだと思います。スズランが教えてくれたんですけど、決まりや規制が多過ぎてもう、逆に不自由になっちゃってるんですよ》
『あぁ、例のアレね』
「ですが、だからと言って必ず目指すべき国だとは思いません、人種しか居らず未だに問題は存在していますから」
《それこそ、ココはココで目指すべき位置が有りそうですしね》
『そう言って下さる来訪者様は、稀だそうよ』
「それは」
『魔獣、悪魔など使役するとは言語道断、人種こそ頂点であらねばならない』
『私達はそうは思っていないわ、それに頂点など、それすらも通過点に過ぎないと言うのに。ふふふ、処分された来訪者様の数を、お知りでは無い様ね』
《へっ》
「殿下」
『嫌だわもう、損な役回りをしたくないのは分かるのだけれど、ココはアナタ方が教えるべき事』
『想像する数を、遥かに超えるだろう』
覚悟はしていた、けれどあくまでも覚悟だけ。
実際に、具体的な数字は想像すらしていなかった。
ただ、レオンハルト氏が言う通りなら。
「4桁を、越えますか」
『あぁ』
本当に、殺処分が行われていた。
悪しき者、愚か者はそうしたモノに渡され、喰われてしまう。
ただ、いつ、どう喰われるのかは分からない。
そしてそれは本当に救いとなる場合も、有るかも知れない。
ココですら治す事が難しい病だったなら、とても不自由だったなら。
《残念ですが、私達が居た国には安楽死とかは無いので、少し整理させて貰えませんか?》
「あぁ、お願いします」
『では、遊園地について教えて貰えるかしら?』
『陛下、今は』
「いえ、大丈夫です。コレはそうした方々も、全ての方が楽しめる様に考えられた場所、娯楽が詰まった良き所なのですから」
『ふふふ、楽しみだわ』




