99話 料理の難しさ
翌朝。
私は調理場にいた。
調理場にいるのは自分で食べたい物を作りたくなったから。決して料理長の料理が嫌な訳じゃない。むしろ美味しいので食べたいぐらい。つまり、今してるのは私の我が儘である。
なのだが‥‥。
「あの、シリウス、リゲル、レグルス、ベネトさん。暇なんですか?」
「まあ暇ではあるな。」
「ああ。」
「まあ正直に言うと、マリンが料理してる姿を見たいから来たんだけどな。」
「殿下はなんでそういうことサラッと言えるんだろうな。」
「全くですね。」
「事実だからな。シリウスとリゲルも本当はそうだろ?」
「「まあな。」」
「私が料理してる姿見て楽しい?」
「「「ああ。」」」
「何が楽しいんだろ?‥‥‥まあ、邪魔はしてないからいいか。」
「それでいいのか‥‥」
「まあ実際、昨日の内に用意は出来てるのであとは焼くだけですし。」
ベネトさんにそう答えたあと、「‥‥あ。お昼、肉だけだと物足りないからスープでも作るかな‥‥」と呟き、料理長に「とうもろこしと玉ねぎありますか?」と尋ねると‥‥
「えっと‥‥ああ、ありますよ。」
「じゃあとうもろこしでスープ作ります。」
そして私はフレンチトーストを焼きながら黙々とコーンスープを作り始めた。
この世界にはミキサーやコンソメという便利なものはないのでわりと大変だ。
せめてコンソメがあればなぁ‥‥。オニオンスープとか作りやすくなるのに‥‥固形がないだけかな‥‥?
‥‥‥‥‥作れないかな?コンソメ。
‥‥でもなぁ、材料知らないしな‥‥あぁ~携帯があれば調べるのに~!
転生して日本の便利さを痛感するのはこういう時だよね‥‥
とか考えながら玉ねぎを刻んで、とうもろこしを芯から削ぎ落としていた。
そして刻んだ玉ねぎとバターを鍋に入れて炒め始めた。
「すみません。どなたか手伝ってもらえますか?」
「私が。何をしますか?」
「え?料理長自らですか?‥‥えっとではこれ炒めてくれますか?ちょこちょこ様子は見ますので。」
「はい。畏まりました。」
「さて、とりあえず4人分出来たから先に陛下達に持って行くかな‥‥」
「私達で持って行こうか?」
「いいの?」
「ああ。特にやることも手伝えることもないからな。」
「じゃあ陛下達3人とベネトさんかレグルス。どちらか先に食べててください。残りもすぐ出来ると思いますので。」
「え?なんで俺達?」
「シリウスとリゲルだと、陛下達皇族の中に1人紛れるのは気まずいかなって思いましたので。」
「ああ、なるほどな。じゃあ俺が先に食べてていいか?殿下。」
「ええ。では一緒に持って行きましょうか。」
「じゃあレグルス、ベネトさん。お願いします。」
「「ああ。」」
「さて、次だな。」
そして私達の分のフレンチトーストを焼きながら料理長が代わりに炒めてくれていた玉ねぎに削いだとうもろこしを入れて更に炒めてもらう。
ある程度炒め終わったところで魔法で水を入れて芯も一緒に煮込む。
と、ここで私達のフレンチトーストが出来あがってきた。
「料理長。私達はフレンチトーストを食べてきます。煮込んでるスープは後で戻ってきて仕上げをしますので、20分ぐらい煮込んだら火から上げてくれますか?」
「ええ。いいですよ。」
「ありがとうございます。料理長に任せてしまって申し訳ありません。」
「いえいえ。構いませんよ。」
「では、行ってきますね。‥‥‥シリウス、リゲル。持って行くの手伝って。」
「「ああ。」」
そして先に食べていた陛下達に合流して私達も朝食を食べ始め、みんなで黙々と食べ進めた。
全員が食べ終わった頃。
「あの‥‥‥味とか大丈夫でした?」
『美味しかった!』
「!‥‥ほ、本当ですか!?」
「いや、マリン。俺達は初めて食べるんじゃないから分かるだろ。」
「あ、はい。ベネトさんとレグルスは分かりますが、陛下やシリウス達も大丈夫だったかなって気になりまして。」
「大丈夫どころか、本当に美味かったぞ?」
「俺も美味かったと思ったぞ?」
「ああ。俺もマリンにはご飯食を作ってもらったことはあるが、パンも美味かったよ。」
「良かった~!‥‥みんな黙々と食べるから駄目だったのかと‥‥」
「美味しくて言葉が出て来なかったのよ。」
「ええ。また食べたいぐらいだわ。」
「! まさか全員にそう言って頂けるとは思いませんでした‥‥」
「でも父上達はまた来年にならないと食べれませんね。」
「「「あ!」」」
「マリン、料理長に教えといてくれ!」
「え!?は、はい。」
「父上、私達は王国に行ってもマリンに直接頼めます。いいでしょう~?」
「ぐっ!」
「親子で何張り合ってるのよ‥‥?」
「‥‥‥それはそうと、マリン。」
「はい?」
「王国に戻ったら国王陛下にも全属性とかの話をするんだよな?」
「はい。そのつもりです。‥‥‥まあその後に私が本気で怒った話をして差し上げますが。」
「‥‥ならゲートを見せる時、ついでに俺の執務室にも繋げてくれないか?」
「え?‥‥陛下同士で会談するんですか?」
「ああ。」
「‥‥分かりました。国王陛下にその旨もお伝えします。」
「ああ。頼む。」
「では、今お借りしてる部屋に一旦来てから陛下の執務室へ向かいますね。」
「ああ。そうしてくれると助かる。」
「分かりました。‥‥‥サラッととんでもない事頼みますよね、陛下。」
「そうか?」
「国王2人を会わせるんですよ?どっちに何があっても大問題です。」
「だからこそのマリンだろ?大々的に国家間を移動するならまだしも、マリンのゲートでこっそり会談できるんだ。何も起きやしないよ。」
「まあ‥‥そうなんですけどね。」
そして、そのまま解散になった。
私はコーンスープの続きをするのもあるので食べ終わった食器を持って調理場へ向かった。
「マリン様!食器まで。申し訳ありません。」
「いえいえ。こちらでまだすることがありますので、ついでに持ってきただけです。むしろ調理場を貸して頂いてるのでこれぐらい当然です。」
「ありがとうございます。」
「では続きをやりますね。」と答えたあと、意見を聞くべく料理長に再び声を掛けた。
「とうもろこし‥‥粒を残すか、粒を無くしてサラサラにするか、どっちがいいと思いますか?」
「食感の為に程よく残すのは?」
「おお!第3の答え。いいですね。そうしましょう。どれぐらい残しますか?半分ぐらいでしょうか?」
「う~ん。そうですね‥‥それぐらいでいいのではないかと。」
「あとは‥‥半分の粒をどうやって無くすか‥‥裏ごしとか出来るやつあります?網目の細かいのです。」
「‥‥網目と言うことは網ですよね‥‥すみません。細かいのはないですね‥‥」
「そうですか‥‥う~ん。もう魔法でやっちゃうかな。」
「え?」
要はミキサーをイメージして使えばいいんだから‥‥
入れるのは‥‥シールドを変形させたらいいか。
そして、鍋から芯をどかしてとうもろこしの粒を半分ぐらいを取り出しスープの一部も出して、シールドを変形させた中に入れて密閉してから中で小さな風刃を使ってある程度サラサラになるまで刻んだ。
「‥‥‥‥これぐらいかな?」
「‥‥‥‥器用ですね‥‥マリン様。」
「そうですか?‥‥‥なんかよく器用だねって言われるんですよね‥‥」
「でしょうね。」
魔法で作ったなんちゃってミキサーから中身を鍋に戻し、ミルクを入れて更に煮る。
ガチャ
「マリン。」
「ん?‥‥陛下?‥‥あ、ワイバーンの解体ですか?」
「ああ。」
「すみません。もう少し待って下さい。‥‥‥味、もう少し何か足したいかな‥‥」
と考え、そして味を整えるならとうもろこしで甘いだろうから塩コショウでしょう!とスープに加える。
そして、味見してとりあえず出来あがったので火から離す。
「後は冷ますだけなので、一旦放置でいいですね。‥‥料理長もワイバーンの解体に行きましょうか。」
「そうですね。」
ようやくスープ作りが終わった私達はワイバーンの解体へと向かった。
‥‥‥‥ミキサーとコンソメ欲しいなぁ‥‥‥
カボチャ→カボチョ と微妙に食材の名前を変えましたが、他の食材は名前を変えるのを諦めました。
‥‥‥忘れそうで‥‥。
牛乳→ミルクはせめてもの抵抗です。




