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双星の勇者

 アポストルは指し示しように、俺に手を向け、皆の注目が再び集中する。


「さあ皆さんお待ちかねです。双星の勇者とはそもそも何なのか? 役割、存在、宿命、全部語り尽くそうではありませんか」


 手を叩き始まりの合図のように、この場に活気があふれる。


「なら僕から行かせて貰おうかな? 双星に問いたい、その眼どうして片方だけなんだ? しかも蒼色……随分と濃くて聖の力が強いようだが、隣のかわい子ちゃんと関係ありか?」


 シスイが俺に問いかける。両手をL字にし、それを重ね合わせて枠を作る。そこを左目で覗き、不適に笑う。


 砕けた態度なのは変わらない。あくまで笑みは絶やさず、表情は柔らかいまま、その瞳には何が映るのか……引かれた弓のように俺を狙いすまし、逃がそうとしない狩人のようだ。


「どうだろうな……関係は無いと思う。俺もよく分からない」


 半分本当で、半分嘘と言ったところか? 確証は無いものの、違う所に原因があるように思える。

 

 それが面白くなかったのか、火焔(かえん)帝国皇帝が嫌気が差すような顔をする。


「素直に話す気がないと言ったらどうだ? 新参者の貴殿に信用など無い、ならば誠意を見せるのが常識だと思うが?」


 人を見下すような態度で、鼻で笑うように一蹴……それにアースラが反応し、ピクッと眉を動かす。


「どうやら皇帝殿は物忘れが激しいようだ。貴殿が父にした事……それを棚に上げて信用を語る日が来るとは、滑稽(こっけい)だな?」


「それは貴殿の解釈の違いであろう? あの男が私の研究を横取りしたとは考えなかったのか?」


 論点がズレた方向に白熱し始めた。コレにはアポストルも困ったようで、即座に止めにかかる。


「お二方……浅からぬ因縁が有るのは重々承知しております。しかしここはその場ではありません」


 その一言でお互いに視線を外すと、距離を取るように二人は口を閉じた。これをチャンスと見たか、他が口を開き始める。


「正の力が特に強いエルフ族の勇者でも、そこまで濃くなった例はない……長年生きる私としても、気になることだよね」


 聖王オベロンは手を机の上で絡め、不思議そうに俺の目を見つめる。


「私もシスイ殿の意見にお概ね同意……と言うよりも確信めいたものがある。戦禍(せんか)が激しさを増すこの時代……何かが起ころうとしていることは明白だ。そこに双星の勇者が現れれば、答えは自ずと見えて来る」

 

 ーー俺はジッとその瞳を見つめる。


 コレは逃げられない……逃げ遂せるなど思ってもいなかったが、余りにも早い展開。俺は答えに迷う、そんな時だった。


 隣から伸びてきた手が、俺の膝にそっと乗せられた。今顔を見ることはできない……俺はそこに手を重ね、優しく握る事で安心させるように意思表示をする。


 ーーあの夜から何度もこの小さな手に助けられて来た。


 ーー俺がどんな無様を晒そうと諦めずに側にいてくれた。


 神力も無くなり、人とほぼ変わらないだろうに……無茶を重ね、俺を導いた手、俺はその掌同士を合わせ、指を絡める。一瞬だけピクッと震えると、ルナも抵抗せず握る力を強くする。

 

 ……そこから伝わる体温はとても心地よく、奮い立たせるに十二分なもの、俺の覚悟は定まった。


「ルナは、正の女神ネメシス……俺はその力で、勇者になった」


 俺の発言に対して、大きく動揺する者は居なかった。静かに各々が算段をし、各自でその対応を見極める。


「初めまして皆様方……私は此度の戦乱により、天界から派遣されて来ました。皆様にお願いする事は一つ……どうか双星に力をお貸ししていただけ無いでしょうか?」


 ルナは思いを語る。周りの視線は一気に集まり、好ましく無い視線にさらされることになる。


「ヒハハハハッハ、中々面白い話ですけど……ソレをどう証明してくれるんですか?」


 プルートが意地の悪い笑みを浮かべる。ルナは神力を失っていて、その力で証明は不可能。ルナが神である照明はできない、方法は限られる。


「簡単だ……俺が神前試合で、導きの双星足る力を証明する」


 ヴィーナスが口元を緩ませ、熱を帯びた視線をこちらに向ける。ソレは同時に冷たく、背支持を這い回る毒蛇の様……そこに甘い空気など微塵も無い。


(わたくし)もそこまで熱烈に挑発(ラブコール)されてしまっては……答えぬ訳にも行きませんわ」


 上機嫌に左手の人差し指を机に這わす。指を跳ね上げると、その掌を俺に差し向ける。


「あーあ、何だよ……お前らそんな約束してたの? 僕がやりたかったなぁ」


 シスイが気の抜けたため息を吐く、ソレに釣られる様に他の者たちも各々の意見を述べる。


「カイト様……どう思われます?」


「俺に言える事はない、神前試合の結果次第だ」


「やれやれだね……私としては、もっと穏便に済ませて欲しくあるんだけどね」


「ひい叔……聖王様は考え過ぎですよ」


 周りの勝手な意見などどうでも良いが、魔王勢の殆どが口を開かないのが気になる。特にウラノスはルナを追っていたはず……しかし、意見する様子が無い。フードで表情を伺えず、一層不気味に写る。


「ふむ、信じ難い事だが……見てからでも遅く無いか」


 皇帝もあっさり? 納得して、勇者国側に目立った問題は見受けられ無い。


「そんな訳さ、問題もない様だし次に話を進めたまえよアポストルくん?」


 アースラが指を弾き、話の終了を催促する。ソレによりこの話は終了すると踏んでいた。


「ーー待ちたまえ」


 低く反響する様に響き渡る声……ソレは漆黒のフルプレートに身を包んだ黒土の魔王サタンによるものだった。


「どうした黒土? 今日は珍しく喋るじゃ無いか、どう言う風の吹き回しだい?」


 アースラが割り込む様に言葉を遮ろうとする。


「ソナタに意見は求めてい無い。女神よ……危機が訪れたと言うなら、その正体我らに語ってみよ」


「ですが、私も全てを把握しているわけではありません」


 ルナの話に対し、黒土は首を横に振る。


「構わぬ……話してもらいたい」


 少し考え込むような仕草を見せ、決心をしたように口を開く。


「彼方より世界の異物現る……天への門堅く閉ざされ、渡る事叶わず。八つの星(よすが)に輝けど闇なお深し、(まれ)なる者二つの星を宿す。星々を束ね導き、闇を払う」


 その言葉を皆が黙って聞き入る。己の情報と掛け合わせ、整合性を確かめる。


「稀なるものは導きの双星……八つの星とは、勇者と魔王の正と負の英雄たちのことを指します」


 これまでに集めた情報と掛け合わせて語られる世界の現状……全てを聴き終わった時、どんな答えに辿り着くのか? 俺たちは知る由もない。

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