第9幕 この先とっても不安だけどどうにでもなーれ☆
そんなこんなで、私達は藍ちゃんの屋敷へとやってきました。豪邸に似つかわしい大きな門が私達を待ち構えており、それだけで花子さんを震えあがらせるには十分だったみたい。
「お、おぅふ……」
「気持ちは分かるわ」
「やっぱり帰っていい?」
「ダメ」
「ですよねー」
もう何回繰り返したか分からない似たようなやり取りをしつつ、私は藍ちゃんへ中へ入れて貰おうと閉じてる門扉に手を掛ける。
すると、私が開ける前に勝手に門扉がギギギっと、木と鉄の古臭く重たい音を立てて、少しだけ開いた。
そして、私の顔見知りの少女が顔だけひょっこりと小さく門扉から出して、私達を覗き込んだ。
「……」
「…………」
「…… はろー、藍ちゃん」
「………… はろー、心優ちゃん」
私が挨拶を返すと、腰まである透き通った真水のような薄水色の長髪と桃のような薄赤い色の瞳が特徴的な白装束の少女、『風花藍』ちゃんが恐る恐ると門扉を開いて私の前へと現れる。
「……」
彼女は私を見て、それからじっと警戒するかのように未来ちゃんと花子さんを見て、それからもう一度私の方へと視線を戻した。ちなみにこの時、何故かジト目に変わっております。
「…… また、未来ちゃんと一緒に居る……」
「いきなり嫉妬ですかぁぁぁぁ!!?」
藍ちゃんはまるで呪い殺すぞと言わんばかりに低い声でそう呟き、未来ちゃんを震えあがらせると、私に来い来いっと手招きする。頭に三角頭巾あれば幽霊そのもの。正直、私は行きたくありません。私はまだ死にたくない。
「…… みんな、入らないの?」
「え? えぇ、勿論入るわよ!」
どうやら、私だけじゃなくて他も一緒に誘ってたみたい。未来ちゃんと花子さんは「私達もですかー」っと少し嫌そうだったけど、未来ちゃんは良いとして…… 花子さんは当人なのだから当たり前だわ!
「…… ねぇ、心優ちゃん」
「ん? 何かしら藍ちゃ…… わっ!」
ユキちゃんから声を掛けられて、私が彼女の方へ顔を向けようとした時。彼女はぐいっと私の手を引いて、そのまま私を庭にある大きな松の木の木陰へ連れて行く。そして、私を幹に追いやって逃げられないように彼女は手を背中にある幹に当てて、無表情で私の顔を見上げた。小さくて可愛い女の子からの疑似壁ドンに、私はドキドキしてしまう(己の命的な意味で)
「…… あの話は本当よね?」
「私が嘘を言う事があった?」
「…… ううん、なら良いの。とっても楽しみ…… 」
藍ちゃんは頬を染めて、まるで恋人みたいに言うように囁くと、そっと私を離してくれる。でも、雪女特徴のひんやりした彼女の手が私の腕を掴んでるので、実質離したように見せかけて捕縛されました。ていうか、相変わらずだけどこの子、ネット(RAIL)と本当性格違うわね……
「…… じゃあ、あの二人を部屋に案内するね」
彼女はそう言い、私の手を引きながら一緒に二人の下へと戻るのだった。