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月夜に夢で……

「真斗くんも人魚伝説知っているでしょ。あれはわたしの母が元になってるの」

「人魚のお母さん?」

「そう、少し長くなるけれど」そう言って人魚は話はじめた。」

最初は口調がきになって気がつかなかったけど、人魚の声はおばあちゃんの家の軒先の風鈴みたいにすずやかで心地がいい。


人魚の昔話ははるか遠くの物語からはじまった。


「母はね遠く西の海の魔女だった。でもある時王の怒りをかって魚の姿に変えられ

追放されてしまったの。

母は一人海をさまよって東の海で人間の漁師に捕まってしまった。でもね、虹色に輝く美しい魚をみた漁師は、近くのお城のお殿様に捧げものとして献上した。お殿様は母を自分の可愛い姫への贈り物とした。

水槽は海にくらべだいぶ窮屈だったけど姫は、母をとても大切にしてくれた。やがて姫は遠く離れた山の城に嫁ぐことになり母も海から離れたこの水月の地へ一緒に連れられてきた。」


「奥方様の綺麗な魚。大きくなり過ぎたって言う?」おばあちゃんの話を思い出す。本当の話だったんだ。

「そう魔法はね、かけた術者が亡くなると少しずつ効力をなくしたり術者のいた地へ戻っていくの。

母にかけられた魔法がこの水月の地で解けはじめたのね。それで、母は水月村の月夜池にはなされた。

やがて魔法は完全にとけ、母は元の人魚の姿に戻ったの。」

「ここまでは、伝説で聞いたのとほとんど同じだよ。でもお母さんって?」

どういうことだろう?さっぱり分からない。


「真斗くんは知らない?魚には性転換する種類も多いって。」

「知らない。」

ちょっとびっくりだ。

「たとえば、ブダイは生まれた時はメスで大きくなってからオスに変化する。カクレクマノミは集団の一番大きな子がメスに二番目に大きい子がオスになる。メスがいなくなってしまうと、オスがメスに変って次に大きかった子がオスになるのよ」

カクレクマノミって確か映画で見た……。とにかくびっくりだ。


フフ、人魚は笑って続ける。

「広い海で生き残るためなのかな。人魚はね性別が変わるわけではないけれど一人になってしまっても一度だけ子供が産めるの。けれども産むためには精力がたくさん必要になる。人間は特に人魚に力をあたえてくれる。」

「えっ」オレの頭に、本で読んだセイレーンやローレライの話がよぎる。

「人を捕まえるの」

「ちがうわ、少し分けてもらうだけでいい。その生命力を。さっき私が真斗くんの血をもらったように」

「血……」

左足の傷を見る。もう血はでていない。

「ウフフ、真斗くんの血のおかげで少し強い魔力もつかえる。ちゃんと森の出口まで移動させてあげられるから心配しないで」

「えっ、もうお別れなの?」

寂しいよ。

「まだよ、まだもう少し」

そう言って人魚は話を続ける。

「でも、人魚がいつまでも美しいのは人から生命力を分けてもらいやすくするためなのは確かね。

私の母もとてもきれいだった。母の髪は金色だったけれど。」

金の髪の人魚を想像する。でもオレは亜麻色のほうがいい。


「ありがと。」

人魚のウインクにオレの心臓がトクンとはねた。


「母は私を産むために、村の男たちに生命力を分けてもらった。子供を産むにはそれはたくさんの精力が必要だから。でも女たちはそれを快く思わなかった。嫉妬したのよ母の美しさに。そして、月夜池の周りに木を植えて森を作り、人魚に会ったら捕まって帰れなくなるって噂を流したの。」

「それじゃあお母さんは?」

でも人魚はここにいる。

「私を産んでくれた。産んでしばらくして死んでしまったけれど」

人魚は悲しそうな顔になる。

そうだよ、オレだってお母さんがいなくなるなんて考えられない。それにたった一人のお母さんが死んでしまったら人魚は一人ぼっちじゃないか。いったいどれだけ長く人魚はこの湖で一人ぼっちで過ごしてきたのだろう。なんだか悲しくなってくる。


「真斗くんはやっぱりやさしいのね。でもねわたし真斗くんのこと少し前から知っていたのよ」

「知ってたってどういうこと?」

オレは、今日はじめて人魚に会ったのに。

「そうね、会ったのははじめて。でも私は真斗くんの涙石を通して何度か真斗を見ていたの。」

「涙石?」

あのキラキラした透明の水晶玉みたいな石を通してって?


「涙石は、私を産んだ時母が流した一粒の涙からできているの。フフ、だから涙石は私の双子石のようなもの。満月の光を当てると私とつながるの。たった一人で森をぬけて母に会いに来てくれた奥方様のお付の者の子孫、その方のおかげで私を産むことができた。だから石はその方にあげてしまったと、母は言っていたわ。」


「でも涙石は……」

手の中の涙石だったものは半分の大きさになってルビー色に染まっている。

もうこれは涙石ではなくなってしまったのだろうか?悲しくなってくる。


「もう、話はちゃんと最後まで聞かなくちゃ。」

人魚はとびきりの笑顔をみせる。

「じゃあこれは?」

まだ人魚とつながっているの?

「ウフ、もちろん人間の真斗の血と人魚の私の血がそそがれた涙石はもっと力をもって二つにわかれた」

「もっと力を?」

手の中の石が光る。人魚の持っている石も。

「そうよ。だから忘れてしまっても大丈夫。この石が私と真斗くんをつないでくれる。満月の夜あなたの魂をこの湖に連れて来てくれるわ。」

「満月の夜だけ?それじゃあ寂しいよ。また人魚は一人ぼっちじゃないか。」

一人は悲しい。

「大丈夫。私がどれほど長い年月を超えあなたを待っていたと思っているの?たった一月なんてあっという間よ。さあそろそろ血が巡る。真斗くん眠くなってきたでしょう?さあ目を閉じておやすみ真斗くん。満月の夜にまたね……」


「まって、人魚。名前、名前を教えて」

「真斗くんがつけて、母は私をかわいいあなたと呼んでいたわ。だから私にはまだ名前がないの。いつかまたもう一度、夢ではなく本当にあなたが森をぬけ私に会いに来てくれる時に。待っているわ……」



***** *****


気がついたのは隣町の病院のベットの上だった。真っ白な天井が目にはいった。


「真斗、よかった気がついた」

お母さんなんでここに?

「真斗、心配かけるんじゃない」

お父さんまで。

「真斗……」

おばあちゃん?

「あれ?オレ月夜もりで岩から落ちて……」

「森の入り口で倒れているところを、健太くんたちが見つけてくれたんだよ」

「健太たちが?」

どおして?

「夜になっても帰ってこないから健太くんの家に聞きに行ったら、今日は一緒に遊んでないって。

でももしかしたらって、隆くん、涼くんと森まで探しに行くって言うから、みんなで行ってみたら真斗が倒れていたんだよ」

「真斗一人で森に入るなんて、もう二度としないでくれ」

「お父さん、ごめんなさい」

「まったく……理由は健太くんたちに聞いたわ。三人とも泣いてごめんなさいって。もう二度とからかったりしないって。」

「ごめんなさい、お母さん」

「もう、いいよ。無事でよかった二日も熱で起きなかったからみんな心配したんだよ」

「おばあちゃんも、ごめんなさい」



オレは次の日には退院できて、おばあちゃんの家へ帰った。お母さんたちは数日で仕事に戻って行った。

健太たちもあやまりにきて、オレらは仲直りをした。

オレは、森でのことはほとんど覚えていない。人魚をさがしに行ったはずだけど、どうやって森の入り口まで戻ったのかさっぱりわからなかった。



退院後数日しておばあちゃんから小さな長い紐のついた巾着袋を渡された。

「はい、真斗これ。なにか大切なものなんだろう?真斗が見つかった時しっかりと手ににぎりしめていたんだよ。なくすといけないから袋をつくっておいたからね」

「ありがとう」

真紅の布に金の唐草模様の小さな袋の中身をとりだして見る。


それは、ビー玉くらいの丸いルビー色の石だった。中には金銀の渦巻く粒子。

「涙石?いや……双子石」

ふと、心に浮かぶ石の呼び名。

気づくと頬を一筋の涙がつたっていた。

「あれ?なんで……」

『大丈夫よ』えっ、声?……風鈴?空耳だったのだろうか?


石を大切に袋に戻し、首からさげた。

ちょうどオレの心臓の上あたりにきたそれを袋ごとギュっと握りしめて目を閉じる。

ほんの一瞬、ウインクをする綺麗な女の人が見えた気がした。オレの心臓がトクンとはねる。

これは、オレの大切な宝物。この石をこれからずっと肌身離さず持っていようと心に誓った。



***** *****




『満月の夜に夢であいましょ。待っているわ……』



                                   


やったぁ、はじめての小説完成です。短編ですが。

でも、書いてみてこれってジャンル違ったのかな?もしかして童話?って

いまいちジャンルわけが分からないのです。



真斗の満月の夢での逢瀬や大人の真斗が森をぬけ人魚に会いに行くところ書くかどうするか迷い中(・・?

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