終章
カタ
最後の一文字を打ち終えた僕は長らく同じ姿勢でいたせいか肩が固まりおもいっきり伸びをするとボキボキと言った。
あれから10年、15歳だった僕は25歳になり社会人として働いていた。
僕の姉さん、西木音嶺は現在33歳で意外にも一児の母親になっていた。
30歳のある日に「結婚するね」と訳のわからないわけではないことを急に言い出した姉さんに僕だけは唖然としてしまった。
あの無茶苦茶な姉さんが大人しく結婚するなんて!
義兄は優しく温厚で包容力が高い人だったのはよく覚えており思わず「返品不可です」と言ってしまった。
そのあと姉さんにどつかれた。
僕の親友、最上桐こと現在は西木桐と名乗っており、高いスペックを駆使して某有名企業の部長まで上り詰めている。
高校生時代、下から数えた方が早いぐらい頭の悪かった彼だが大学では梢さんに負けず劣らずの順位をキープ。
当たり前だが僕よりも頭がよく、かなり要領もよかった。
皆さんが気になっているかもしれない最上司だが、彼については僕は何も知らない。
あのあと僕の父親の友人の一人の国際警察官とか出来れば一生涯関わりたくない御方に連れていかれたきり全くもって分からないのだ。
結局のところ彼は留衣さんを愛していたのかはわからなかった。
そして最後は梢さん。
彼女は高校でも大学でも主席満点を取り続けたのは言うまでもないが、意外なことに彼女は大学を中退した。
それには僕も関わっており桐には後にも先にもこれほどまでにないぐらい怒られたのは記憶に新しい。
以上がそれぞれの話。
え?僕??
僕は普通に就職して普通に働いているよ。
……片手間に小説も描いているけど。
今だって目の前のパソコンにはあの頃の話がかかれている。
描いたのはいいけどこれを世間に公表する気はないけどね。
おそらく僕の人生の中で一番の分岐点は高校一年。
天才と謳われた姉、万能と謳われた弟に出会ったことで僕の人生は濃すぎるものになったのは言うまでもないかもしれないね。
ガチャ
不意に部屋の扉が開き振り返ると小さな男の子と一人の可憐な女性が入ってきた。
女性は申し訳なさそうに言葉を紡ぐ。
「ごめんね、音夜がどうしても貴方のところに行きたいって……」
「いいよ
おいで、音夜」
そう言って僕が両手を広げると男の子、音夜は満面の笑みを浮かべて僕に抱きつく。
幼児らしい柔らかく暖かな体温に僕は柄にもなくホッとする。
「パパ!」
「音夜、あまりお母さんを困らせるなよ?」
「はーい!!」
元気すぎる返事に僕は苦笑してしまう。
僕は音夜を抱っこして立ち上がり女性のもとによる。
女性は優しげな柔らかい笑みを浮かべてから僕の腕の中にいる音夜の頭を撫でる。
「本当に音樹くんが大好きなのね
妬いちゃう……」
「息子に妬いてどうするんだか、梢さん」
僕がそう言うと女性、梢さんは夜色の瞳を細めて大学を中退した原因を見る。
「普通、お母さんになつかないの?」
「知らないよ
僕だって初めての子育てなんだからさ」
僕は若干名呆れながら言うと梢さんは頬を膨らまし少し拗ねる。
それさえも可愛いと思う僕は重症かもしれない。
何度も諦めかけた。
それでも諦められなかった僕が手にしたのは最愛の女性と幸せの証である子供だった。
終わりました!
年内に終わったよ!
1ヶ月クオリティだよ!
と言うわけで終わりました処女作。
本編は終わりましたが番外編は描いていくつもりです。
ここまでお付きあい頂きありがとうございます。
夜桜




