サバイバル
「それでは本題に入ろう。第二の試練では、君たちはポストアポカリプスの街に転送される。各自に与えられた個別ミッションを達成することが目的だ――」
「個別ミッションって、どういうことだ?」
誰かが独裁者の説明を遮った。
「説明している最中に口を挟むな」
独裁者は真剣な声でそう告げた。
そして、指を鳴らす。
すると突然、プレイヤー全員の視界に小さなウィンドウが現れた。
(なんだこれ?)
ユウリは興味深そうに画面を操作した。
「これが君たちのシステムだ。好きなように呼んでもらって構わない。これを使えば、ステータスを強化したり、その他諸々のことができる。だが、重要なのはそこじゃない」
次の瞬間、システムの画面が切り替わり、一つのミッションが表示された。
「システムはプレイヤーごとに独立している。他のプレイヤーが君のシステムを見ることはできないし、その逆も同じだ。各自、自分の個別ミッションを確認してくれ。試練の間に達成すべきなのは、そのミッションだ。達成できれば勝利。実に簡単だろう?」
(空間魔法の使い手を殺し、ランキング一位になれ? なんだ、この妙なミッションは……)
「さて、全員理解できたようだな。それでは始めよう。最後に一つ、ボーナスとして忠告しておこう。誰も信用するな。君たちのミッションはそれぞれ違う。友情が身を滅ぼす原因になることもある」
「幸運を祈る」
突然、ユウリの視界が暗闇に包まれた。
次に目を開けたとき、彼は一人きりだった。
(転送された……ってことか。よし、まずはラヴとミナを探そう。三人でそれぞれのミッションを達成して、ここから脱出すればいい……そういえば、ラヴの名字って何だっけ? 教えてもらってなかったな……)
ユウリは、どうでもいいことを考えている自分に気づき、すぐに思考を切り替えた。
(集中しろ、ユウリ! 今は生き残ることだけを考えろ。今までだってそうしてきたし、これからもそうするんだ)
ユウリは周囲を見渡した。
そこには、廃墟と化した店や崩れた建物、錆びついた車が並んでいた。
彼は食料やサバイバル用品を探すため、近くの店へと駆け出した。
店に入った瞬間、彼の目に飛び込んできたのは、店内をうろつくゾンビのような化け物たちだった。
(くそっ……やっぱり、こういう化け物もいるのかよ……)
ユウリは気づかれないように身をかがめ、カウンターの下に隠れた。
棚には、食料をはじめとする様々なサバイバル用品が並んでいる。
(どうやって見つからずに食料を手に入れるんだ……?)
打つ手がなくなったユウリは、カウンターの下に座り込み、システムを開いて中を調べ始めた。
まず、メイン画面に目を通す。
(ステータス? 筋力、速度、敏捷性、知覚……それに、罪のエネルギー? 最後のはよく分からないけど、何か重要なものなのかもしれない。ゲームじゃ、こういう妙な名前のステータスほど強かったりするからな)
いくつかのタブを飛ばし、ボーナスと書かれた項目を開く。
そこには、こんな表示があった。
(おめでとうございます! ボーナスを獲得しました!
獲得アイテム:
[グロック]
[バール]
[MP3プレーヤー])
(……は?)
ユウリが状況を理解する間もなく、アイテムがシステムの画面から飛び出してきた。
その直後、ボーナスの項目は跡形もなく消えてしまった。
(ま、まあいいか。こうなったら仕方ない……)
彼はMP3プレーヤーの電源を入れた。すると、音楽が流れ始めた。
(よし、これだ!)
ユウリは嬉しそうに飛び跳ねた。
片手に銃を、もう片方の手にバールを握る。
「さあ来い、化け物ども! こっちは武装済みだぞ!」
ユウリが自分の居場所を明かした途端、ゾンビたちは一斉に彼へと襲いかかってきた。
ユウリは音楽に合わせて、次々とゾンビを倒していく。
あちこちに血が飛び散り、店内はたちまち大混乱となった……。
◆ ◆ ◆
太陽が沈みかけた頃、ユウリは大量の物資を抱えて街を歩いていた。
(とりあえず、これだけあれば食料には困らない。でも、次は安全な場所を探さないとな。夜の間、外を出歩くのはごめんだ)
ユウリは安全に休める場所を探し始め、やがて一軒の小屋を見つけた。
(誰かいるのか……?)
彼はバールを手にしたまま小屋へと入った。周囲を見回したが、人影はない。
ユウリは腰を下ろし、物資の入った袋を開けて食べ物を取り出した。
(これで寝床も食料も武器もある。おまけに音楽まである。これ以上悪くなることなんてないだろ)
そう言った直後、小屋の扉が開いた。
ユウリは素早く扉の方へ視線を向けた。
そして、そこに立っている人物を目にした瞬間、動きが止まった。
長い黒髪に、鮮やかな赤い瞳。
そこに立っていたのは、一人の少女だった。
「こ、こんにちは……」




